椋の雛祭り

Mar.3,2001


寒い桃の節句だった。昨夜も遅かったので、少し朝寝坊してから、西村さんのマンションに椋ちゃんを迎えに行く。今日は去勢手術だ。私が部屋に入ると、既にベッドの下に隠れてしまっていた。西村さんが苦労して引きずり出す。可哀想だが、連れて行くのだ。だっこするとしきりにシャーシャーと威嚇してみせたが、なあに、威嚇なんかされたって怖くないぞ。でも必死でまた隠れようとする姿を見たら、臆病でチビだったあのデビル時代を思い出して不憫で堪らなくなった。

椋ちゃんを獣医に預けるついでに、獣医の元に保護されていた仔猫の写真を撮る。カラスに目をつつかれてしまった、とても可愛い茶トラ。先生が「サンちゃん!」と声を掛けると、嬉しくてケージの中のベッドでゴロリとしてみせた。優しい顔の男の子だ。今夜、里親募集のコーナーに載せるので、是非見てやって下さい。

西村さんも乗せて来ていたので、そのまま買い物につき合わせて、荷物持ちにする。こうちゃんと西村さんがいるから、安心して大量に買い出しをする。この時点で、三人とも朝ご飯をろくに食べていなかったので、余計に色んな物を買ってしまった。昼ご飯と晩ご飯の材料だけでなく、クルマにもどるまでに歩きながら食べる為の揚げたてのコロッケまで買ってしまった。学生時代を思い出しながら、歩きながらのコロッケ。少しだけウスターソースが欲しいと思った。指が油になってしまったので、クルマを汚すまいと思って良く舐めてから服で拭いた。大人のする事ではない。へへへ。

昼に天麩羅蕎麦を食べた後で、西村さんは仕事の電話が入り、一旦家に送り届ける。入れ替わりに真紀ちゃんが到着。真紀ちゃんは、自分のチッチに比べても、母猫であるゴマがとても小さく見えるらしい。2ヶ月ぶりで会って「可愛い」を連発していた。良かったね、ゴマちゃん。あんたは人気者だよ。毛も凄く柔らかくて、艶々の良く動く尻尾は「ウナギ」のようだ。久し振りでいっぱい遊んで貰ったね。

晩ご飯は、予告通り「ちらし寿司」を作る。具を煮ているとあまりに良い匂いなので、ついついつまみ食いをしてしまう。人参と蓮根、筍、しいたけ、ゴボウ、油揚げを煮て、錦糸玉子は、卵10個分も焼いた。錦糸玉子が少ないちらし寿司は嫌いなのだ。絹さやも茹でて散らす。具だくさんのちらし寿司。寿司桶いっぱいに作って、4人でせっせと食べた。他にも霜降り厚切りカルビのステーキあり、食前には真紀ちゃんのお土産のワインでクラッカーにクリームチーズを乗せて食べていたし、全員満腹。口数も少なく、ひたすら食べた。西村さんは、大きなラーメン丼に2杯も食べた。お見事!!でも、私の料理は本当に美味しいのだ。こうちゃんの事だって、料理で釣り上げたようなものだからね。釣った魚にエサをやり続ける私。偉いね。

西村と真紀子の二人は、もはや子供のようなもので特に気兼ねもないし、忙しければ会えない事も続くが、だからと言って疎遠になる訳でもない。いつでも又、同じ距離感で逢えるし、気持ち良く過ごせる若い仲間なので嬉しい。先週の大崎さんが来た時には、朝から出掛けていた日曜日だったのと、急な事だったので何も用意がなくて悪かったなあ・・・と余裕が出ると反省する。ごめんね、貴ちゃん。今度は土曜日に来てね。

二人は10時過ぎに帰って行き、一緒に出てこうちゃんは一人でエサやりに行ってくれた。私には、里親募集の掲載処理がまだ3つもあるのだ。今夜も遅くなりそう。

椋ちゃんは、久し振りで心細い思いをしている事だろう。可哀想だが、みんな一度は通る道。明日の朝、おばちゃんがお迎えに行ってあげるからね。西村さんは仕事なので、終わり次第迎えに来る約束なのだ。西村さん以外は受け付けないので、ケージに入れたまま向こうの部屋を暖めて置いておこう。うちの猫たちと顔を合わせたら、きっとパニックに陥るだろうから。

西村さんは私に気を使って「ほら、お母さんだよ」と言って、私にすぐ抱っこさせようとするが、椋ちゃんにとっては怖いおばさんでしかないようだ。捕獲して獣医に連れて行ったり、会えば爪を切ったりワクチンに連れて行ったりと、ろくな想い出しかない相手だしね。損な役回り!こんなに大好きなのに。それにしても、椋ちゃんの顔はハナクソにそっくりだ。輪郭と目が特に似ている。一番母親に似ている。どうですか?ハンサムでしょ?


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