ジャム

生意気娘

May.20,2001

昨日のは里親候補の方との調整を図ったり里親募集の依頼者にメールの返事を書いたりしていて、朝になってから寝るハメになってしまったのでやや辛い起床だった。しかし兎に角午前8時に家を出て、獣医に仔猫を2匹だけ迎えに行く。最下段のケージの扉を開けると、わらわらと4匹が雪崩れ出て来てニャーニャーと元気一杯に鳴く。「ごめんね、今日は2匹だけなんだよ。」「直ぐにまた迎えに来てあげるからね」と声を掛けて、羽田に向って出発。

仔猫は車の中でずーっと鳴いていた。今まで野良猫をたくさん運んだが、野良猫は仔猫でさえも搬送中に声を出さないものだ。例外はあるかも知れないが、家猫の甘ったれが良く鳴く。野良猫は、昨日のシロちゃんだって車の中では鳴かない。じーっと気配を殺すようにしている。それはとても痛々しい。つまり、今回の仔猫は家猫の子ではないかとふと思ったのだ。野良猫を保護したと言って無料で獣医に預け、月内に貰われなければ始末してくれと言う飼い主。そんなところであろうと想像した。そうでなければ、3ヶ月にもなる野良の仔猫が、こんなに人懐こくて甘えん坊なはずがない。初対面の私にも抱っこをせがむし、今日だって泣き止ませようとしてコンテナの隙間から指を入れてやると、スリスリしてゴロゴロ言う。

しかし、そういう無責任な人間に腹をたてていても始まらない。先ずはこの2匹が無事に大阪に到着して、里親さんの手元で安心して暮らせるようにする事だ。この子たちを初めて見たこうちゃんは「綺麗な猫だなあ・・・」と言っていた。そうさ・・・と、自分で産んだ子でもないのに胸を張る。

第一京浜を飛ばし、環八を飛ばす。しかし今日はやけにパトカーが多い。羽田空港のエリアに入ると、すぐ右手に東京湾がキラキラと視線の高さで光っている。道は空いているし、天気は良いし、考えようによっては素晴らしいドライブコースだった。しかも貨物地区は、一番奥である。羽田空港も広いなあ・・・としみじみ感じた。信号のない道をこんなに走れるのだったら、羽田勤務がいいな・・・とふと思う。羽田に何か仕事はないかしらん。

予約してあった日本航空の貨物の受付まで行くのに、ゲートで車のナンバーや名前を記入させられる。そして人数分の通行パスを貰うのだ。随分と厳重なんだなと驚く。休日のせいか貨物地区も空いていた。あるいは時間が早かったせいか。到着してすぐ、昨夜決定した里親さんから電話が入る。

今回は1匹だけを大阪の京極堂さんに送るはずだったのだが、急遽決まった里親さんが京都だったので、2匹を一緒に送って京極堂さんが連れ帰ってくれて、夜にもう一人の里親さんが迎えに行ってくれる運びとなったのだ。もう一人の方というのは、ご自身でもたくさんの猫を里子に出して来た方で、今は犬と猫が1匹ずついる方だ。身元も明らかだし、お会いしなくても何度か交わしたメールと電話のやりとりで、信頼出来る人だと感じた。お会いしていないという点では京極堂さんとて同様だし、彼もまた優しい真面目な大人だという事はHPを拝見しても感じる。

仔猫は、車から降ろすともう鳴かなかった。重さを量り、書類に記入して料金を払う頃には、仔猫は2匹ともに目を見開いて「ここはどこ?」というような表情でじっとしていた。「お別れだよ」と覗き込んだら、大人しい方の長毛の子が私の顔を見て「シャー」と言った。不安なんだね。たった4回会っただけの仔猫なのに、別れはやっぱり悲しい。どうしてなんだろう?

帰り道は渋滞が始まっていた。15号線も環八も国道1号線もみな混んでいる。途中でみきこに電話して、その直後に京極堂さんから電話を戴く。間違いなく空港にお迎えに行きますから・・・という内容だ。安心して、急にお腹が空いた事に気づいた。それで何か食べて帰ろうという事になったのだが、なかなか店がないまま、綱島街道まで来てしまった。

ふと目に入った「あさくま」とやらに入る。店は天井も高く、従業員も何となくスノッブを気取っている。少し厭〜な予感。メニューを見てゲッ!ランチにこんなに払いたくないなあ・・・と思いつつ、サーロイン180cのコースを注文。厭な予感は当たった。コース料理は一度に持って来ないから、何でも出されるそばから瞬時に平らげてしまう私達は、次の料理が来るまでシラけて待つ事になる。パサパサしたちっこいパテをペロリと食べると、次のサラダが来るまでは水を飲み、煙草を吸って待つ。行儀悪いのは承知だが、仕方ないのだ。今更こうちゃんと甘い囁きを交わす必要もないし、暑さにあたってぐったりしていたのだ。

サラダを食べているとコーンポタージュが来るが、これは塩気のない甘いデザートのようなスープだった。しかしどちらも残さず食べる。そしてまた待つのだ。後から入ったカップルには既に肉とライスが出て、すかしたキリギリスのような男は背中を丸めて口を更に近づけるようにして食べている。こうちゃんの肩越しに、その様子を観察して退屈をしのぐ。やっと来た私たちの肉は、やけにこんがりと焦げ色が付いていた。ナイフを入れると厭な予感が現実のものとなった。肉が固い。しかもわざわざ焼き加減を聞いておきながら、ミディァムレアと言った私達にウェルダンより更に良く焼いて持って来たのだ。待たされた事も手伝って、次第に不機嫌になる。こうちゃんの眉が互い違いになっている。これは怒っている証拠だ。ウェイトレスを呼ぼうにも、姿が見えない。しかし「言うだけ言おうね」と話す。

仕方なしに、こうちゃんが立ってウェィトレスを呼ぶ。愛想の良いウェィトレスに「これしミディァムレアとは言いませんよね」と言うと、直ぐにお取り替え致しますと言うが、「時間がないから結構です。お伝えしておこうと思っただけですから」と断る。またさんざん待たされてはかなわない。引き続きゴシゴシと切って固いステーキを食べていると、支配人らしき小柄な男がキリギリスの席に近づいて何やら言っている。キリギリスは首を振っている。だったらこちらだと判りそうなものだが、チビ支配人は引っ込んでしまって、再度確認してから私達の席に来る。その時には2人ともゴシゴシの手を止めて待ち構えていたのだ。恐ろしい顔はしていなかったと思うが。おチビちゃんは「肉の仕入れを変えて冷凍肉ではなくてチルドでどうたら・・・」だとか訳の分からない事を言って、名刺を渡してペコペコ謝っていた。

しかし肉もライスもアイスクリームもコーヒーも、全て残さず食べて、料金を支払って出てくる。つまらないものを食べてしまったと後悔する。こんな事だったら、鶴見経由で帰って、駅ビルの食堂街でサイコロステーキランチ960円を食べるべきだった。これは美味しいのだから。

帰り着くとくたくた。暑気あたりという感じでもあり、寝不足で熱っぽいという感じでもある。エアコンを入れるが、この2階の部屋はそれでもとても暑い。廊下に出るとひんやり感じる程。猫たちもぐったり。ジャムさえ大人しい。半日会わなかったら、また大きくなったような気がするジャム。

直ぐにも布団で寝たいのだが、京極堂さんともう一人の里親さん(大郷さん)に宛ててメールを出し、みきこに連絡を入れ、15匹の元親さんからの電話を受けて、里親募集の依頼を処理していたら、次のお出掛けの時間になってしまった。ああ、田中眞紀子さんが「あちこち飛び回って忙しくて、もうたーいへんなんです」と言っていた気持ちが少し分かるな。へへ・・・。

里親さん候補が、まだあと2人いる。大切にやりとりしているところだ。他にも里子に貰った子がエイズキャリアだと判った方からのご相談を受けたり、今週もプライベートな時間が持てずに休日が終わる。

どうにも身体が熱くて、冷たい料理が食べたくなり、晩ご飯はトマトとバジルの冷製パスタにベビーリーフのサラダだけ。だけ・・・と言ったって、量は凄いのだ。美味しいトマトがあれば、こんなのは簡単。料理とさえ言えない。しかし、味付けは勘所を利かせて。塩・胡椒とバルサミコ酢にオリーブオイル、これだけ。凄く美味しくて、昼間の敵がとれたような気分だった。やっぱり自分で作るべきだった。怠けると後悔する好例である。パスタ、写真だけでも見る?

素材が良ければ、こういうものは美味いのだ。トマト次第ってところですね。


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