アイン

束の間・・・

Jun.16,2001

明美さんからお酒が届く。先日お邪魔した時に頂いたお酒・・・いや正確には雪のお花見の晩に頂いた銘柄のお酒の大吟醸だ。クール便で届いて、直ぐに冷蔵庫に入れた。今夜は飲もう!そう思い立って、何を作ろうかと考えながら出掛ける。

先ずは日吉のかかりつけの獣医にゴマとジャムを連れて行く。ワクチン摂取だ。アメショー軍団は8月がワクチンの予定になっているので、こちらは車での移動が苦手なので往診で打って貰うのだが、そっくり親子(ではないが・・・)を美人の助手に自慢したい気持ちも手伝って連れて行く事にした。ゴマ・・・不安そうに泣いていた。「大丈夫だよ、捨てに行くんじゃないんだよ!」と何度も言い聞かせる。きっとゴマは、車であの駐車場まで捨てに来られたのだろうと勝手に思っている。毎度車の音にもに敏感なゴマ。この2匹を連れ出した後は、さぞやアインが安心して眠れる事だろう。束の間の「鬼の居ぬ間」を享受しなさい。

ゴマは「太ったね」と言われ何と4`。ジャムは泣きもせず、とてもお利口で注射されていた。検便の結果も何も出ず、体重も1.5`まで増えていた。よしよし。3`になったら不妊手術をお願いしますと言って、ついでに鶴見の獣医の事を話してみた。先生は、そういう人はもう放っておけと言う。助けてくれる人がいなければ、自分で手術出来るのだからするでしょう・・・と。それはそうなのだ。そこに至るまでの道のりで犠牲になる仔猫たちの事を考えてしまうから、私は余計な事をしてしまうのかも知れない。

しかしあの獣医の家猫の仔猫には、悉くコクシジウムがいたのだ。母猫にいるのかも知れないし、駆虫などという事はしない奴だし、したとしてもトイレの片づけをきちんとしない人だから、完全に駆虫する事は出来ないだろう。どうしてあんなだらしない人間が獣医になったのだろう?父親も獣医だった。どういう教育をしたのだろう?いや、父親もそうだが、大学ではそういう倫理は教えないのか?反面、アニマルセラピーのボランティアを熱心にしている側面もあるし、怜ちゃんの最後も丁寧に看取ってくれた優しい部分もあるのだ。単にだらしない、都会の獣医には向かない性質だというだけなのかも知れない。さいはての地で、野生動物相手に力量を発揮出来る人なのかも知れない。

いや、人は自分が置かれた立場でどう責務を果たすかが重要なのだ・・・と、厳しい気持ちを復活させる。誰にだって得手不得手はあるさ。だけど、自分のプロフェッションとして選んで金を得ている事には、それなりの倫理観を持って然るべきだろう。幼稚園の子供ではないのだ。お絵描きが苦手でも体操が得意だからといって、それで可能性を伸ばす事の出来る年齢ではないのだ。私はあの獣医と一蓮托生は厭だ。そうであるならば、「先生の避妊していない家猫の仔猫のお世話は出来ません」と言うべきだろう。今回の事が済んだら、次のシーズンは知りませんよと言おう。

そして、日吉の獣医の保護してくれているサンちゃんと会って来た。サンちゃんは大きくなった。とても甘ったれで、抱っこが大好き。決して爪を出さないと言う。先生は目ヤニの出ていた目を綺麗に洗ってあげて、可愛く撮れたかな?とニコニコしていた。サンちゃんはケージの中だが、愛されている。いや、この日吉の獣医の人柄なのだろうと思う。潰れた片目と濁った片目、それにも拘わらずサンちゃんは穏やかで可愛い顔をしていた。センセイが大好きなようだ。抱っこから強引に降ろそうとすると、嫌々をしていた。

今夜、SOSのコーナーで新しい写真を更新したいと思うので、是非見てあげて下さい。サンちゃんの尻尾は綺麗な輪切りで、キャロリーナ・ちえさんのHPの『蛇穴』に応募してあげたいと思った。ちえさん、写真を送るので、どうぞ載せてやって下さい。可愛いヘビでしたよ。

そして急いでゴマとジャムを家に連れ帰り、落ち着かせてから買い物に行く。酒の肴の材料を仕入れなくてはいけないのだ。大吟醸のような生酒は、保存しておいても美味しくなるどころか味が落ちる。どうしても今夜飲もうと心に決めていた。スーパー八百忠で白身の魚を見たが、明日が休みのせいか真鯛と目鯛しかない。迷わず目鯛にする。だって安いんだもん。触ってみた感じでは、身の締まりは良い。大根と地物の小さなプロッコリーも買う。ふと思い立って、はす向かいの店でモツ焼きも買う。ここのおじさんは、猫をたくさん保護している。「おじさん、猫は元気ですか?」と聞くと、嬉しそうな顔をして、店の奥にいる猫を指さして「こういは栄養失調だったけど、やっとここまで元気になったよ」とニコニコしていた。今8匹いるのだと言う。その店の猫は、おじさんの椅子で香箱を作っていた。大きな猫だった。

家に戻るや否や、大根をスライスして塩を振る。しんなりさせて水気を絞り、目鯛の薄切りと共に三杯酢で和える。猫たち、先にカンヅメを開けてあげたのに、見向きもしないで「その鯛をくれ!」と待ち構えていた。人間用と交互に切って、こうちゃんに渡す。いつも出遅れるアインも鳴きながらお代わりを催促している。ゴマも負けずに自分の分を主張する。ミュウは用心深いのに、手まで出して「くれっ、くれっ!」を繰り返す。ジーコは食べる物には卑しいから、勿論人一倍食べていた。大根と刺身の和え物には、仕上げに柚子酢(馬路村のものだ)を振る。

猫たちの次の狙いはモツ焼きである。しかし、これはあげない。塩味がついているからだ。カシラと白モツ、豚レバーと鶏皮、砂肝を2本ずつ。レバーは角が立った新鮮なもので、プリプリだった。久し振りに唸る程に美味しいレバーを食べた。あとはそこそこだったが。

ブロッコリーは、単純に茹でてマヨネーズで食べる。茎がコリコリしていて、これも大変に美味しかった。茹でて水っぽくなったり、グニャリとした歯触りのブロッコリーなどは食べられたものではない。もちろん茹で加減も大切だが、野菜そのものの鮮度もおおいに影響するのだ。ジャムは、まだ湯気の出ているプロッコリーも食べようとする。ベビーリーフを与えておくと、しばらくは遊びながら食べている。

大吟醸「御山杉」は三重県のお酒で、香りはとても甘いのだが、舌には甘ったるくない。むしろ辛口である。世に言う「辛口」の酒が舌を刺すようなものである場合、醸造用アルコールを加えた為の辛さである事が多い。ただ辛ければ良いというものではないのだ。香りの良い酒は、麹の甘さが香る。そして、舌に旨味以外の雑味がない。料理を美味しくしてくれる酒というのは、意外と探すのに難しい。私など安くて美味しい酒を探そうとするから、当たりは少ない。

かつて福島の小さな酒造メーカーで作っていた醸造酒が、とても素晴らしい香りと味だったのだが、ある時味が変った。不思議に思って手紙を出した事がある。企業ポリシーが変ったのですか?などと偉そうな事を書いて。すると、そこの社長から電話が来た。杜氏が死んで、後を引き継ぐものがいなくなり、今試行錯誤の最中だと言うのだ。それからしばらくは、新
酒種の仕込みが済むと、いつも送って下さった。しかし残念ながら、あの味には再び出会えないままだ。懐かしい記憶の中の香り・・・それは泡盛の古酒にも似た甘い香りに、さっぱりとした辛口の味、鼻腔に抜ける香りはどこの大吟醸にも負けないものだった。

大吟醸で思い出すのは、銘酒「菊●」である。バカ高い大吟醸。生まれて初めてこれをご馳走になった時も、こんなに美味しい日本酒があるのか・・・と驚いた。しかし、この酒もすっかり地に堕ちた。馴染みの研究熱心な酒屋(熱心の余り、酒蔵に修行に出ていたほどの旦那だったが)が「お正月用にどうです?」と、限定で取り寄せてくれたのだが、値段に見合うような喜びはなかった。酒は値段ではない。有名になり過ぎた酒蔵は、もう駄目だと言い切る人もいる。しかも日本酒はワイン同様、生き物である。その年の天候や出来、保存の方法、様々な条件で、2度と同じ味に出会えない可能税は高いのだ。

全部食べ尽くし、気持ち良く飲み終えて、みなさんには写真だけでもお見せしてさようなら。酔っぱらいました。むふふ。

むふふ・・・で済んでいたら良かったのだが、ほろ酔いも一遍で醒める事件が勃発。ネコのオシッコどころの話ではない、人間のウンコ事件である。犯人が歩き回って、被害を大きくしてくれたのは毎度の通り。何とか片付けて、あとは洗濯と更なる掃除を繰り返すだけだ。臭い家ですが、どうぞみなさんお遊びにいらして下さい。脱臭王も大活躍(涙)。

今夜はお酒を・・・


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