物凄い湿気。 しかしこの山の上は、まだマシなのだと解った。 昨夜も深夜のエサやりに行くと、家を出てしばらくは道も乾いていたのに、川を越えるあたりから道に水がかなり溜まっていた。そしてエアコンをつけていてもフロントガラスの曇りが取れず、またこっちに戻って来るに従いそれがサッと乾いた。 鶴見は海に近いせいなのか、それだけ湿気が多いらしい。 そう言えば、職場の非常階段で煙草を吸っていると、時々潮臭かったなあ・・・。 台風6号の接近で、人間気圧計の私は息苦しいわ心臓はドクドク言うわ、ろくなことがない。 しかしこの台風前に、家の土台を工事しておいて良かったとつくづく思う。今夜半から明日の未明にかけて関東地方を直撃するらしいが、多分このボロ家は崩れないだろうと思いながらも、服を着て靴を手元に置いて寝ようかと考えたりしている。 懐中電灯も必要かな? 猫たちは自力で脱出出来るだろうか? 災害時の事を思う度、心配なのは猫の事だけだ。 台風が来れば思い出す。 数年前、念願叶ってベランダに庇を付けた直後に台風が来た。 バタンバタンと物凄い音で明け方目覚めたら、ポリカーボネイトの波板の留め金が飛んで、強風にあおられた波板が音を立てていた。見ている傍から簡単な留め金がふっ飛び、波板は今にも剥がれて飛んで行きそうだ。 枠組みは鉄骨で組んでいたのだが、留め金はJの字のプラスチックのものだった。見る見る止め具がはじき飛ばされて行く。 こうちゃんが押さえて、私が麻縄を波板の穴に通し鉄骨に結わえた。 しかし麻縄では、板が煽られる度に擦られて、あっと言う間もなく擦り切れてしまった。慌てて針金でやり直していたが、そうしている間にも1枚の波板が一瞬でぶっ飛んだ。 とりあえずの処置を終えたものの、まだ針金でも不安があるのでこうちゃんは暴風雨の中で、既に半分に折れ曲がってバタバタ音を立てている板を押さえ続けてている。私はその間に施工業者に電話をした。 まだ朝の5時だから誰も出るはずないとは思いつつもしつこく鳴らし続けたら、偶然事務所に泊まり込んでいた専務という人が出た。一気にまくしたてて、直ぐに来てやり直して欲しいと言う。 工事をしたのはメーカー(富士サッシ)の工事部だったので、直ぐに千葉から材料を運んで来て、やり直してくれるはずだった。直ぐにと言っても、千葉から神奈川までの事・・・9時の始業で手配出来てから2時間はたっぷり待つ。 やっと到着して、部品を見せて貰ったら、留め金がプラスチックから金属に変わっただけのJ字の引っ掛け式金具のままだ。 「これじゃあ駄目なんですよ!」としつこく言うと、若いその職人はムッとして帰ってしまった。 何て奴だ!腹を立てつつ再度電話して請負業者にその事を伝え、兎に角この現状を見て欲しいと言うと、夕方近くやっと材料を揃えて5人程でやって来た。 今度は鉄骨にドリルで穴を開け、ボルトでしっかりと固定して行った。何だよ、最初からそうすれば良かったのに。 波板がフジサッシのものだからフジサッシの職人が取り付けに来たらしいが、ここは傾斜地で下からの風のあおりが強いので、絶対に飛ばされないように出来るならば庇を付けても良いと言って契約したにも拘らず、そういう手抜きとも言える工事をしたのだ、フジサッシは。 もちろんフジサッシにも電話してさんざん文句を言ったのは言うまでもない。 やり直しに来た時の職人さんたちは、私が応急処置をした部分を見て「気の毒な事をしちゃったなあ・・・」とうなだれていた。 5人かがりで真っ暗になってからもライトで照らしながら作業して、立派に出来上がって以来もうビクともしない。 実はこの庇を付けるにあたっては構想以来亡き舅の大反対が続き、やっとの事で説得して付けさせて貰ったのだが、それでも「台風が来たらふっ飛ぶぞ」と意地の悪い事を言われていたのだ。 そして案の定「そら見た事か!」と言われるのが癪で、舅には気付かれないようにしようと、義姉の協力を仰ぎ、急遽軽井沢の家へと連れ出して貰ったのだった。 まったくあの舅のお陰で、みんな余計な苦労をさせられたものだ。 思い出すと腹が立つよ、フジサッシとジイさんには。 雨が強くなって来た。 野良猫たちは、無事に雨宿りしているだろうか? それにしてもジャムは大きいな。もうじきミュウに追いつきそうだ。小さなアインなど、頭から食われてしまいそうだ。でもアインの頭はジャムの頭よりずっと大きいけどね。 『今日のにゃんこ』は、家猫の産んだ仔猫だけれど、飼い主さんと何度もやりとりを繰り返し、素直で謙虚な飼い主さんだったのが幸いして、大切な家族である猫の健康や飼い主の責任という事をきちんと考えるようになってくれたもので、それで敢えて応援したいと思ったのだ。 誰でも最初は我が子を可愛いと思うだけで、おうちのない可哀想な仔猫がいっぱいいる事など思いも及ばないだろう。私だってそうだった。しかし知ってしまってからは、そうはいかない。必要な避妊は飼い主の責任だ。 このケースは飼い主さんがとても素直で優しい性格だったので、期待以上にうまく話が出来たのだと思う。仔猫を里子に出す過程を経験して、またひとつ猫を愛する人間として成長して欲しいと願うのは僭越だろうか・・・。いいよな・・・私だって大人の歳だもんな。
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