ちー坊

Aug.10,2002

ちー坊は、ある男性会社員が自分の手で保護した野良猫だ。保護する直前からサポートして来たのだが、お盆休みに帰省するのを良い機会に去勢手術をする事にして、入院させる為に病院に連れて行った。保護主のワダさんとは、日吉の改札で待ち合わせしていた。

例によって、私たちは待ち合わせよりかなり早く到着してしまったので、こうちゃんは車の中で待機し、私は駅の東急百貨店の入り口で催されている縁日もどきを覗いていた。

獣医さんのお子さんにお土産を買おうかと見繕っていたのだが、ろくなものがない。駄菓子とガラクタおもちゃ、プラスチックのお面(アンパンマンだとかセーラームーンだとか)、ヨーヨー釣り位しかない。諦めて改札の方に行くと、キャリーを下げた男性が既に立っていた。待ち合わせ時間よりも早く到着していた人は、色んな人と待ち合わせしているがワダさんとみょーこ姉ちゃんだけだった。

初めて会うちー坊は、私がキャリーを覗くと「にゃあ」と小さなかすかな声で鳴いた。土曜の午後は、道が混んでいる。しかし病院にも午後の診療開始時間よりずっと早く到着してしまい、車の中で時間を潰す。やっと定刻になり、車の座席の下に隠れてしまっていたちー坊をやっとの事でキャリーに戻し病院に入って行くと、厄介な手術が長引いているらしくて、先生は手が離せなかった。待合室でお喋りしながら、ずっと待っていた。

ちー坊はおとなしい。キャリーから出すと、部屋の隅でじっとしている。途中、一度だけワンコを抱いて女性が入って来たら、その時はびっくりして逃げて来て、ちょっとだけ恐怖の「しゃー」をしてみせた。ワンコはキャリーに入れて病院連れて来る人が殆どいないので、猫は分が悪い。

犬は外を散歩させる動物だけにキャリーに入れる人は極めて少ないのだろうが、色んな動物が来院する動物病院へはコンテナに入れて来るのもエチケットではないかと猫飼いの立場では思ってしまう。犬は猫と違って大きいものもいるので、それもなかなか大変だろうけど、せめて小型犬の場合はそうして欲しい。今日のワンコはプードルであった。キャンキャンと吠えてうるさい。

それを見ていたら、世界中どこへ行っても母国語だけで通用させて恥じない事の多い英米人を思い起こした(全員がそうだとは言っていないのだから、クレームつけて来ても対応しませんよ)。私は、そこの国の言葉を積極的に覚えようとして、郷に入ったら郷に従う外国人たるべきだと考える人間だから、厳しい事を言うのだが。

それでまた思い出した。会社員だった頃、課長席の電話をとったら外国人の女性からだった。課長は出張中です・・・と英語語で答える。英語圏の人ではないようだが、理解したようだった。

しかし何やらプライベートな相手らしい。やたらと滞在先を知りたがる。

しかも「Do you speak French ?」と訊きやがる。私は少しも悪びれずにソーリィもエクスキューズミーもなく、きっぱりと無知丸出しで「No !」と言ってから失礼にも「Do you Speak Spanish ?」と言ってみた。その女は「No !」と言って諦めてくれた。日本に来て、フランス語で通用させようとするその強気。しかし私も強気で通したが。

待合室で、結局2時間近く待った。ちー坊はすっかり眠くなってしまったようだった。やっと診察室に入って、これまでの経緯を話す。食欲がいまひとつ無いようなんですが・・・と言うと、目やにも鼻水も出ているから風邪で食欲が無いのでしょうと言われる。

先生の奥さんが、やさしく目やにをぬぐってくれた。抗生剤とインターフェロン注射をして、1週間ほど入院させて貰い、その後調子がよければ去勢手術を続けてして貰う段取りにした。

ついでに血液検査や検便・駆虫なども全て済ませていただく事になる。ちー坊歯を見られても注射を打たれても始終おとなしくしていたが、流石にインターフェロンの注射は痛かったらしく、その後は私の傍にすり寄って来て小さくなっていた。なんて可愛い、ちー坊。

お山の子たち50匹分の疥癬駆除薬をたっぷりと貰い、としことも面会してから、同じ入院室でさっきのプードルがペットホテル代わりに預けられているものだから(まったく可哀想なものだが)ギャンギャン吠えているのを「お前はうるさいぞ!」と軽く叱って、ワダさんを駅まで送って家に帰って来た。

夜、来週末にでも面会に行く約束をしようとワダさんに電話したら、保護して以来一緒に暮らしていた部屋に一人で戻ったものだから、何とも寂しかったみたいだ。ひとりで暮らしていて動物に死なれた時の事を思うと、今からそれに耐えられるだろうかと言っていた。優しい人だ。みんな同じ思いなのよと言っておく。私だって、こうちゃんがいても辛くて耐えられないだろうと思う。考えただけで悲しい。

ミュウが、昨日からまた咳き込む事が多くなり、今夜はかなり苦しそうにしていた。激しく咳き込んだ後は、ヨロヨロと歩いて行って吐く。見ていて辛い。やはりステロイドを常用しないと駄目なのだろうか?本当は明日、理恵さんの家にお招き戴いていたので出掛ける予定だったのだが、電話して事情を話し順延させて戴いた。ご馳走の準備をして戴いていたみたいで本当に申し訳ないのだが、猫が具合が良くないと長時間家を空ける事はしたくない。

夜中、具合が落ち着いているときに出掛けて、エサやりとエサ場の掃除をして来る。今夜はホースを忘れずに持参して行ったので、あたりを盛大に洗い清めておいた。少しでも人間のオシッコ臭さが洗い流せただろう。

いつも出て来るよりことハナクソはついぞ姿を見せず、長い間姿を見なかったティムが来て、目の前で鳴きながら缶詰をベロリと平らげた。食べ終わって立ち去るのを見届けてから、ゴミを片付けて帰路につく。小一時間外で過ごしたら、蚊には食われるわ、蒸し暑くてベタベタするわで散々だった。今夜も熱帯夜だ。

戻ると、誰も吐いていなかったので一安心。家を留守にするのが年々恐くなる。みんなに元気で長生きして欲しい。

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