マルコ

バンザ〜イ!

Aug.12,2002

一日中煮込み料理をしていたので、キッチンは地獄の暑さだった。小さな保冷剤を頚動脈にあてて、料理を続ける。煮込みに入れば鍋と火まかせだが、玉葱炒めは火に付きっきりだ。1時間半、よくぞ炒めたり。あまりの重労働に、一旦キッチンを逃げ出して外食したくなる。しかし猫缶幾つ買えるかと思うと、なかなか外食も気が進まない。猫缶代に事欠いているのかという事ではない。ターボ車でエサやりに行くような道楽をしているのだから、ケチケチしなくても良さそうな気もするし、倹約すべきところはきちんと倹約しなくては身上潰すとも思う。ま、その時の気分も大事だ。

つまり、早い話が外食してしまったという事だ。いい加減まわりくどいな。

身体が発する音というのは恥かしい。ゲップ然り、オナラ然り、他にも何か食べる時に発する(人もいる)ペチャペチャという音や、イビキ、痰のからまったような咳、これでもかというようなクシャミ、洟をかむ音・・・色んな音を身体は発することが出来る。別に恥かしくないと言う人もいるだろうが、私は自分の身体が発する音を他人に聞かせるのは恥かしいし、他人の発する音は生理的に嫌悪をもよおす。出来れば聞きたくない。愛するこうちゃんが発する音だったらまだしも(それでもイビキをかかれると「気道確保」してイビキを止めてやる)、赤の他人が発する音を間近で聞きたくない。

しかし今日は、一人の男から発する音をさんざん聞かされた。その男は50代後半位のオヤジで、隣に恐い顔の奥さんを連れていた。どう恐いかと言うと、真っ黒な顔に化粧が脂で崩れ、目の下の太いアイラインが人相を更に悪くしているのだ。どうして目の下にアイラインなど入れるのだろう?舞台のダンサーでもないのに。そして上目遣いで亭主を見ては、「ねえ社長・・・」と仕事の話をしている。見るからに地場の工務店の社長夫婦という感じがしたが、案の定話の内容から推察するに建設業らしい。私たちの真向かいにいた客だった。大テーブルで向かい合わせの席に座ってしまったのだ。私たちの料理はまだ出てこないので、どうしても会話が耳に入って来る。話しているのは専ら女の方で、男はトンカツを食べていた。口に入れると、間髪を入れずピチャピチャと音をたてる。私たちはウンザリして、黙って窓の外を見たり(何も見えないが)、出された麦茶を飲んだりしていた。

やっと私たちの食べ物が運ばれて来た頃、向いの男の食事は終わりつつあった。シーシーと空気を歯の間から吸い込んでいる。爪楊枝をとり、目の前で歯をほじくる。いつまでもペチャペチャと舌を鳴らし、シーシーも止まらない。あまつさえゲップをひとつして見せた。流石にムカッとして睨んでやるが、こっちを見てはいない。早く帰れ!と心の中で念じるが、食べ終わるとアイスコーヒーなど頼んでいる。私はがっくりする。向いの席に客がいてしかも食べているのに、その夫婦は遠慮なく煙草を吸う。煙が流れてくる程度なら仕方ないが、吐き出す煙がこちらに来る。私も煙草飲みだが、人といる時は上を向いて真上にしか煙を吐かないし、かなり遠慮しているつもりだ。

きっとこのオヤジは、自宅ならば食事の席でもオナラくらい平気でするのだろうな・・・と忌々しく思っていた。他人の家庭の事はどうでも良いし、きっと愛嬌のあるオナラもオヤジもいるのだと思うが、話す内容があまりにえげつなかったので、寛大な気持ちになれなかったのだと思う。従業員にボーナスを出した事を夫婦して呪っていたし、給料出しているんだからボーナスなんか出す事ねえんだよ!と口汚く言っている「社長」は、腕には金時計と金の太いチェーンを嵌め、女房はレジでしっかりと領収書を書いて貰っていた。

前回この店に入った時には、バーのマダムらしきオバサンが得意客の集金を兼ねてご接待していた。出された料理(ここはトンカツ屋である)を殆ど食べず、ビールばかり飲んでいる。ご飯は一口も食べず(よく観察しているのだ、私は)カツもあまり手をつけない。だったらご飯セットで頼むな!と言ってやりたい。あのご飯は捨てられるのだ。私たちはご飯のお代わりをするというのに。他人があまりひどい残し方をしたり汚い食べ方をしていると、見ていてストレスになる。見なければ良さそうなものだが、つい見てしまう。

しかし良い事もあった。店のウェイターの若い男の子が、声が大きくハキハキしている。ぼーっと突っ立っておらず、あちこちに目配りをしてよく動く。背が高く、顔も可愛い。こうちゃんと「いい子だね・・・」と笑い合う。ちなみに私たちが食べたのは、ひれカツとエビフライのセット。ご飯2杯。ご飯が硬めでピカピカ光っている。柔らかいご飯は食べたくない。エビフライにはタルタルソースがたっぷり付いて大変美味しかったので、工務店の社長夫婦さえいなかったら満点の外食であった。

帰ると、メールがどっさり届いている。歯医者の帰りの外食だったので、わずか1時間半ほどの留守だというのに、しかもお盆だと言うのにこんなにいっぱい・・・とひとつひとつ開封して見ると、生まれたての仔猫がいて、母猫がその後2日間見当たらないのでどうすれば良いかというのがある。どうして病院に行かないのか?助けたいのか、丸々問題を投げて寄越したいのか真意が計りかねる。本当に助けたい場合、そして自分の手に負えないと感じた場合、どうか獣医に連れて行って欲しい。100キロも200キロも離れた場所に、飛んで行けないじゃないか。

しかし近くても、まるで他力本願の依頼も届く。捕獲をして欲しいというのが殆どだ。捕獲器を借りたいというのではない。捕獲に来てくれというものだ。しかし避妊する気になっているだけでも良しとして、行ける範囲は行ってやろうと思う。そして、どうせやるなら気持ち良くやろう。そうでないとストレスになる。みょーこ姉ちゃんにそう言うと、バカヤロウ!自分の身体をもっと大事にしろと言われた。きっとおニャアニャンにもそう言って怒られるだろう。テレサ・ちんもおブリ様も呆れているに違いない。上手に説得して、自分でやらせるつもりではいるけれど、全く話の通じないオバサンもいるのだ。説得するのに時間ばかり掛かる。私の時間をそんなにも奪われては堪らない。さっさと捕獲に行って、さっさと寝たい。

ゴマはジャムが本当に可愛いようだ。ジャムもゴマのことはお母さんだと思っているようだし、マルコも全員の事を大好きな家族と感じているのがよく判る。多頭飼いの醍醐味ここにあり!だ。幸せ、幸せ。

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