ゴマ

見張り番

Aug.15,2002

昨夜の捕獲は、予定していた若い三毛が姿を現さず終いだった。しばらくは誰も出て来ないで、ようやく現れたのがブスアカ2号。こいつも多分最近現れた新顔なので去勢されていなと思うが、兎に角メスから先だと意気込んでいたので、ブスアカ2号にはご飯を与えてしまう。その後現れた茶白は、これも新顔で体つきが小柄・・・オスメスの区別はつかないのだが、何となくお腹が大きいようにも見えるし、たるんでいるだけのようでもある。いい加減待ちくたびれていたので、こいつを捕まえる決心をして待つが、用心深くて捕獲器に入らない。揚句の果てに、草を食べたりしてくつろいでいる。終いにどこかに行ってしまった。

風はあるのだが湿気も強く、蒸し暑くて堪らない。座る場所もないので疲れて来る。そろそろ引き上げようかと思ったら、廃棄自転車の陰に光る目が。ライトで照らすと、三毛らしい。よし、こいつは捕まえないといけない。捕獲のエサは生のホタテの貝柱である。人間にはあまり強い匂いに感じないけれど、猫はこの匂いには逆らえないのさ・・・とほくそえみながら仕掛けて待つ事30分・・・やっと掛かった。三毛は賢くて手強い。

急いで広い場所に捕獲器を移して、シーツでくるむ。そのわずかな間にも、暴れてオシッコを洩らしていた。可哀想だが仕方ない。その三毛の入った捕獲器を車に乗せたら何だか希望が復活したので、また別の捕獲器を仕掛けて目的の三毛を待つが、また誰も現れなくなってしまった。そして遂に皆勤賞の「よりこ」が来てしまい、こいつは何度でも捕獲器に入りそうになる能天気サビなので、撤収の時が来たと判断する。現場で3時間粘って三毛1匹か・・・。しかも予定していた三毛ではない。捕獲出来た三毛とは別に、何とまあ三毛があと2匹は確実にいるのだ。とほほ・・・三毛はメスだよ、限りなく100パーセントに近い確率で。

思えば私のエサ場には新顔が凄い勢いで増えている。ショックだ。一体どこから来たのだろう?しかしあちこちでビル建設ラッシュだし、住む場所を追われて流れて来ているに違いない。それも仕方ないな、人間の都合で住処を無くしているのだから。せっせと捕獲して避妊しては、せっせとご飯を運ぼう。どうせ野良ではそう長生き出来ない身の上なのだ。私はエサやり現場を大切にしたい。エサやりが基本だと思うから。そして何はともあれ避妊に励む。みんながご近所の野良猫にそうしてくれたら、万事めでたしめでたしなのだが。

保護して家猫として里子に出せる野良猫は、ほんの一部だけなのだもの。受け皿さえ潤沢にあるならば、捕獲して避妊したらどしどし家猫にしてやりたいが、仔猫ですら里子に出せないで苦労している人たちが多いのだ。野良に置いていても家猫と同様に愛情を注いで生涯をエサやりに賭けているみょーこ姉ちゃんを見ていても、そして数多く野良猫と接していると全てを家猫に出来ない現実を思い知るにつけ、自分の家にはギリギリの数まで受け入れはするものの、あとは避妊とエサやりをし続けるしかないのだと思う。

撤収時にトレイに缶詰とホタテの残りを盛り合わせて、いつもの場所に置いてやる。よりことハナクソ、チャッキーとティム、そしてパティも食べに来てくれると良いなあ・・・と願いつつ。でも多分、よりこが食べたらあのブスアカ2号が来て食べるのだろう。誰でもいいや。みんな仲良くしてね。あんた達のいる鶴見は、アントニオ・猪木の生まれたところだよ。誇りに思いなさいね。

午前9時の診療開始時間を待って即座にデカ三毛を持ち込んだつもりだったが、既に患畜がいた。待合室に入って行くと、誰かが「あっ、川口さん!」と言う。振り向いて見ると、鶴見の別の場所で広域に捕獲・避妊・エサやりを続けているボランティアのA吉さんであった。この病院で紹介されて何度か偶然居合わせたりしていたのだが、鶴見の大手企業の工場敷地内の野良猫の現状などを聞かされていると、道の果てしなさに気が遠くなる思いがした。

A吉さんは私よりも大分年上のようだが、はるかに精力的でしかも明るい。今日は避妊した猫の疥癬治療も終って、引き取りであったらしい。他にも栄養状態の良くない乳飲み子を預けていたが、先生の奥さんとのやりとりを聞いていた限りでは亡くなってしまったらしい。奥さんが涙を拭っていた。毎日ミルクをあげていたのだろうから、奥さんも辛かっただろう。発見された時には、土の上で兄妹が抱き合うようにしてぐったりしていたと言う。1匹は死んでいたけれど、もう1匹は助かれば里親募集して欲しいとも言われていたのだが・・・。

その子は真っ白な全身に、頭のてっぺんにグレーの小さなお帽子を乗せた柄の猫だった。私も、先日ちー坊を預けた時に姿を見たのだ。あまりに小さくて「生まれたてですか?」と訊いたら「いや、2週間以上経っているんですけど、栄養状態が悪かったみたいで・・・」と先生は言っていた。あのまま土の上で干からびてしまったのではなくて、優しい人の手で拾い上げられ、優しい先生と奥さんの手当てを受けられ、そして失われた命に涙して貰えただけでも良かったと思うしかない。

外は今日も旱々照りだった。まだまだ外の猫たちには厳しい暑さだ。明日の手術の予約はいっぱいだったので、今夜の捕獲はせず、デカ三毛を引き取りに行って放したついでにまた捕獲しようという段取りになった。なので今夜はエサやりとパトロールのみ。

歳をとってくると、流石に完徹が堪える。栄養ドリンクなどに手を伸ばしてしまったお陰で、さっさと昼寝するつもりが目が冴えてしまった。こういうもので誤魔化すのは良くないなあ。反省しきり。

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