ゴマ

ちびっとベロ

Oct.10,2002

朝から好天。昨夜は2時には寝たので、またも6時には目覚める。そして喉が渇いている。冷たい緑茶を飲もうとキッチンに立つと、今まで寝ていたミュウがいそいそと巨体を揺らしながら小走りで来る。ミュウは付き合いが良いので、私が起きるとこの12年ずっと一緒に起きて、先ずは水道の蛇口へと向かうのだ。

まだアインが来たばかりの頃、私が起きるとミュウが先回りして廊下の右手にあった洗面所へと走る。アインも負けじとミュウの先をとっとこ走る。しかしアインの行く先は、もっと先の部屋の猫トイレだった。トイレだったら、私が起きなくても行けるのに、何でもお兄ちゃん(亭主だけど)の真似をした。そして今、マルコが何でもジャムの真似をしている。

早朝から午後2時半までみっちりと働き、午後3時にリエさんと待ち合わせて整体治療に向かった。行った先に駐車場があると聞いていたので、電車ではなく車で行く事にした。電車では、帰り道がしんどいだろう。マッサージや整体の治療を受けて、帰りが平気だったためしはなかった。車で行けないとなれば、多分今回も行かなかったと思う。何しろバスで駅に出て、電車を乗り換えて行くなんて、今の私の足では到底無理だ。渋谷駅の乗り換え途中で行き倒れるのがオチだ。こういう事になると、からっきし根性が無いのだ。

目的地は吉祥寺近く。前夜に地図でしっかりと場所を確認しておいたので、かなり近くまでは迷わず行けるだろう。目印の少ない住宅地の中なので、近くまで行ってからが迷いそうだが、そこは10数年通っているリエさんが一緒だから間違いないだろう。先ずは環8をひたすら走る。工事渋滞もあったし、そうでなくとも何しろ五十日だが、それでも車の流れは止まっていなかったから、かつての朝の鶴見への通勤よりはずっとマシだ。無事目的地に着いたら、所要時間ぴったり1時間半・・・これは読み通りだった。

整体の先生の家は、普通の民家だった。狭い玄関を入り、狭いキッチンを通って奥の茶の間に通される。物凄くたくさんの物が雑然と置いてある。床にもたくさん物が積んである中、何とか座卓の周りに座るが、しばらく座っていると足が痛くなって来た。そこで先ずは食事を戴いた。マツタケと牛肉のしぐれ煮・・・これは先生のお弟子さんの女性が作ったもので、とても上手く出来ていた。しかし味が濃いので、ご飯が欲しくなる。ご飯も出して戴く。次第に色んなものが食卓に並ぶ。刺身やお浸しが数種類ずつ・・・その頃には次々と常連の患者さんたちが集まって来た。

治療は、一人ずつまた別室に呼ばれる。必ずしも来た順番という訳ではない。一人治療が終ると、先生は待合室兼茶の間に戻って、しばしお喋りをする。食生活について、身体の機構について、そして昔話を交えたご自分の事など。私はまだ食べている。いつものように早食いではない。何故か?折り畳んだ足が痛くて、なかなか食べる事に集中出来ない。そして最高では7人もが集う中で、私たちだけがご飯を食べているという居心地の悪さも手伝っていたような気がする。

しかし食べるのも治療のうちらしいから、治療前だというのに兎に角食べる。私は普通の茶碗に2杯、こうちゃんは丼に近い大きさの茶碗で2杯・・・時間をかけただけに、満腹の度合いは凄い。そうしてみると、私たちの胃袋が人よりも大きいという事は決してないような気がする。凄い量を食べるのは、考えてみれば二人だけの時だ。これは何を意味するのだろう?

時間がどんどん過ぎる。リエさんが気を利かせてくれて、私たちがそう遅くまでは居られない事を仄めかしてくれた。それでようやく私たちの治療となる。二人一緒に別室に移り、先に私がして戴き、次にこうちゃんがして戴いた。私に関しては、腎臓が悪い(これは事実だ)、そして胃腸は別段悪くなく(うん、悪くないだろうなあ・・・)、甲状腺が悪く(これは自分では解らない)、顎の関節と目も悪いという事だった。

こうちゃんは、かれこれ8ヶ月以上も左腕が上がらなくて「五十肩」だと思っていたのだが、それだけではなくどこかに悪いところがあって出ている症状だと言われる。私と同様、甲状腺も腎臓も悪く、身体の歪みが酷いと言う。普段我慢強い人だけに、痛みを身体の中に抑え込んでいるようだ。私の目から見ても、姿勢が悪い。猫背で前肩である。運動不足は私と同レベルだ。どうやら、先生の見立てでは私以上にこうちゃんが「悪い状態」のようだ。それは少なからずショックだった。

日頃、私を労わるばかりで自分の事は一切気遣わせない人だ。しかし幾ら私が悪い妻でも、こうちゃんは大事な人だ。他人がいないところでは気遣っているのだが、何を言っても「大丈夫」としか言わない。こうちゃんの健康を考えて食生活にも神経を使っているし、マッサージだってして貰う一方ではないのだが、それでも自分の事はいつも後回しにするような人なのは事実だ。申し訳ないと思う。

治療は、いわゆる整体の部分に関して言えば、私には痛くなかった。歪みを矯正する事の痛みなんか、日頃のリウマチ痛・腰痛、関節痛に比べたら屁みたいなものだから。しかし脇の下と甲状腺だという部分を揉まれた時にはあまりの激痛に、失礼とは思うが必死で抵抗した。先生の手を振りほどこうとして両手と爪が出た。引っ掻いた訳ではないのだが、先生の手を放させようとして爪を食い込ませていたのだ。余談だが、男の身体に爪を立てた事などかつて一度もない。そんな風にして我を忘れる事など、あるいは芝居がかった真似を出来る事などとても出来ない。一番苦手な「痛み」から逃れようとする時以外にはあり得ないのだ、私の場合は。

痛いという点では、こうちゃんも相当痛かったらしい。こうちゃんの顔が痛みで歪むのを初めて見たし、「痛い」と言葉にするのも初めて聞いたような気がする。骨と皮みたいな人だから、そりゃダイレクトに痛いだろう。女の私から見ても羨ましいような、白磁のような肌が紅潮している。しかし、こうちゃんの体の歪みは一度では矯正出来なかった。背中の筋肉が、かねてからゴッドハンド・みょーこ姉ちゃんからも言われていたように、カチカチに一枚岩のようになっているのだ。

私に関して言えば、足の甲の浮腫みが久々に消えた。触らなくても骨が見えるし、帰ろうとして靴を履いた時にローファーの甲の部分にゆるみがあった。これには正直驚いた。股関節の矯正とリンパを揉んだせいなのか?足首も回る。正座から立ち上がろうとする時、先ずは腰を浮かせるのに足の指を立てるものだが、今まではそれが出来なかった。もちろん痛みのせいと、関節が固まっていたから。それが出来るのは有り難い。これがいつまで続くだろう?

夜の8時半過ぎ、その秘密のセクトを出て、帰路につく。リエさんはいつもパワフルだが、治療後も変わらず元気だった。人に気を遣わせる人ではないし、いつも前向きで気力がみなぎっている人でもある。しかし車中での私の口は重い。消耗していて口が聞けないのだ。早く家に帰りたい。幸いな事に帰りの道は比較的空いていて、ぐんぐん走り、どんどん家に近づいて行く。気が付けばマルコ橋・・・じゃない丸子橋を渡り終え、日吉駅でリエさんとお別れした。

辛うじてメールチェックだけはしたものの、どうにも疲れて起きていられず10時には就寝する。エサやりは早く起きて行こうと話して、兎に角死んだように眠る。全てはそれからだ・・・。

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