ハナクソ

Nov.24,2002

昨夜は、私の運転で(当然、STiではなくて私のインプレッサで)エサやりに行った。イナガキさんのような運転の上手い人を助手席に乗せていては、いささか緊張しないでもないが、ともあれ無事に真夜中のドライブは済んだ。

エサ場に着くと、雨上がりの地面はまだ濡れていて、誰一人出て来てくれなかった。しかしなかなか諦めきれば、煙草を吸いながら「よりこ〜」「ハナちゃ〜ん」と時々名前を呼んで待つ。懐中電灯で辺りを照らしたり、路地裏を覗き込んだり、それでも人も猫も気配がない。祝日だけに、飲み屋も殆ど休んでいるようだ。いつになく静かな夜中の鶴見だった。

諦めて帰ろうとし、運転席のドアを開けようとしたら、助手席に乗り込もうとしていたイナガキさんの頭越しに塀の上にハナクソの丸い顔が見えた。イナガキさんが持参していたカメラで撮影してくれた。いつもの場所に隠して置いてあるご飯のトレイを、塀の上に乗せてやる。ハナクソはちょこっと口を付けたように見えたが、直ぐに音もなく姿を消した。舐めた程度だったのか、全く食べた形跡がない。今夜も殆どお腹が空いていないのだろう。つまり、会いに出て来てくれたという事だろうと勝手に解釈した。嬉しい。ボディガード・イナガキのお陰で私も怖い思いをしないで済んだし、ハナクソにも会えたし・・・。

ハナクソは小柄ながら、丸々と太っていた。声が聞こえたのかな?匂いがしたのかな?兎に角、私に会う為に出て来てくれたのだ。しかしよりこは昨夜も居なかった。どこでどうしているのか・・・気に入った場所でも見つけて、要領よく生きていてくれると信じたい。姿を見せて欲しい。

こうちゃんは翻訳の第一部を終えつつあり、私たちが戻ると「とりあえず送信しておいてくれ」と言う。エサやりに同行して貰わなかった甲斐があった。頑張ったんだね、こうちゃん。ジャムやマルコの邪魔にも負けず、ゴマの毎日のオシッコ攻撃にも負けず、ミュウとジーコの度重なる「蛇口から直接水が飲みたい」要請にも、アインの「パパ抱っこして」要求にも負けず(いや、実際には負けて水道の蛇口をひねってやったり抱っこしてやったりしているのだが)、カワムラさんからは「原爆頭突き」されながらも適宜遊んでやり、時にはカズエちゃんの足を揉み、決して怒らず、人の悪口を言わず、いつも静かに笑っている・・・そういう人に私もなりたい。

イナガキ氏は朝ご飯を(しかも朝からカレーピラフ!)無理やり食べさせられてから、リエさんの家へと向かった。うちの捕獲器も持たせたが、リエさんの家に預けてある捕獲器も借り、ついでにリエさんの軍事支援もとりつけてあった。何しろ6匹の捕獲だ。どうなっただろう?心配ではあるが、それは親心というものだ。どんな難題もケロリお笑い仮面のリエさんがついているし、イナガキ氏も少しも悲観していない。それどころか、極めて淡々としていた。きっとあの二人の組み合わせであれば、やれる事を手際良くやり、当たり前の事ではあるのだが、やれない事にまでは無理をして手を出す事はないだろうと信じている。頑張れ、ヒゲとチビ。(その後ヒゲからメールが届いて、5匹までは捕獲が出来たという。)

里子に行ったSOS足立のヤマトが、窓を開けて脱走してしまったらしい。元親さんが捕獲器を持って、東京から駆けつけてくれたようだ。トトさんは電話の向こうで泣いていた。謙虚な人なので、私にまで「申し訳ありません」と繰り返している。でも、自分をそんなに責めちゃ駄目だ。必ず近くに身を潜めている。必ず戻るから心配し過ぎては駄目。去勢もしてあるのだし、とても臆病な子なのだから、じーっとどこか狭い場所でうずくまっているはずだ。

ジーコがまだ1歳の時、獣医に連れて行こうとしてマンションを出た途端、プラスチックのキャリーの蓋を力ずくで蹴破って逃げた事があった。マンションの目の前は、環状6号線の車の往来の激しい道だった。車の物音に驚いてパニックを起こしたらしい。そのまま走ってマンションの裏手へと逃げた。必死で追いかけたけれど、姿を見失ってしまった。一日中こうちゃんと二人で捜し、駆けつけてくれた八百屋のお兄ちゃんも探してくれた。その日のうちに高名なお坊様に頼んで、ジーコがどうなるのかを見て戴いたりもした。

その時のお坊様の言葉は「家の中の災厄を持って行ったが、虎の子(猫のこと)は必ず戻る。」という内容のものだった。そう言われてもにわかには信じられず、探し疲れ泣き疲れていた。うちで生まれて、外の世界を一切知らないジーコが野良で生きていけるはずがない・・・いっそ死んで、私の魂がジーコを守ってやれるようにしよう・・・とまで考えたあの頃の私は、猫の事など殆ど知らないに等しかったのだ。

結局、夜になり真っ暗な外に向かって、3階のベランダからあてもなく「ジーコ」「ジーコ」と呼んでいたら、それに応えるかのように「にゃあ」という声が聞こえる。「ジーコ」「にゃあ」「ジーコ」「にゃあ」・・・間違いない、ジーコだ!私が呼び続け、こうちゃんが急いで下に降りてくれた。ジーコは、マンションの裏にある銭湯の薪を積み上げたところに居たらしい。身体も足の裏も、全く汚れていなかった。こうちゃんがしっかりと抱き、ジーコはまた表通りの喧騒に少し暴れたものの、こうちゃんがシャツを破られ胸に酷い引っ掻き傷を負っただけで、無事保護出来た。今から11年半も前の出来事だった。

アインもミュウもキャリーなど不要な位におとなしかったので、私たちも油断があったのだろうと思う。以来、ジーコをキャリーで連れ出す時には、キャリーが余程の力でも分解されないようにと、紐でグルグル巻きにしたものだった。あの時に諦めずに呼び続けて良かった。返事をしてくれて有り難う。

諦めなければ必ず保護出来る。今年だけでも、猫飼いのベテランでも脱走させてしまったケースが身近にもたくさんある。二日目で保護出来たケース、1ヶ月かかったケース・・・色々ではあるが、トトさんだけじゃないのよ。必ず保護出来るから・・・でも暗くなるまでは出て来ないものだから、夜に頑張ってみて欲しい。

そう言う私だって、自分の身に起きたらどれだけパニックになって泣くか解らないけれど、兎に角良い結果を信じていれば大丈夫。後で笑い話にしようね、トトさん。

たぬき君改め幸太くんの里親さんから、先程お電話を戴いた。あと1週間も様子を見て、先生ときちんと相談はするけれど、年内にお渡し出来るような運びとしたい。サプリメントも色々と揃えてあげたいと思う。兎に角、いつまでも病院のケージに置くよりは、落ち着いて新しいお家、優しいお母さん(と言っても私よりぐっと若いのだが)の傍で暮らさせてあげたい。

さて、これからSUNちゃんちの牡蠣を食べるのだ。今年初めての広島の牡蠣。最初だから、粉をはたいてからバターでムニエルにしようと思う。醤油とカボスを絞って食べるのだ。小さいけれど、プリプリの牡蠣・・・
ふふふ・・・わはは。(更新をやり過ぎて、もうとっくにハイになっている)

里親募集は、決まる件数も多くなってきているし、相変わらず募集の依頼も多い。里親決定に関しては、しっかりとした報告をして戴きたいが、兎に角件数を多く投稿している人には難しいようだ。しかし、ひとつ書けばあとは同じ内容で送れば済むはずだから、私としてはきちんとした内容で知らせて欲しい。こちらも完璧にボランティアだが、命を扱う媒体としての自覚も責任も持っているつもりだ。頼みっ放しで、「決まりました、有り難うございました」だけでは、掲載完了のお知らせ(募集依頼してきた人はご存知でしょうが、一部極秘情報も含まれるのでここでは公表致しません)でお願いしている内容に少しも応えてくれていないではないか。

今週もメールに返信が出来なかった方には、心からお詫び申し上げます。常軌を逸するくらい精一杯・目一杯やっているのですが、如何せん時間が足りません。

前日の「猫雑記」へ 翌日の「猫雑記」へ

月別INDEXへ戻る

「猫雑記」INDEXへ戻る

《CAT'S EYES & CAT'S HANDS》INDEXへ戻る
inserted by FC2 system