アイン

ちょっと寂しい

Mar.22,2003
朝から電話ばかり。

前向きに取り組んでいる方からのちょっとした日常の留意点に関してのご相談に近いものは、内容が明かになった時にホッとする。しかし今年も遂に来た。とんでもない相談が。


2年と少し前、大崎さんがとんでもない飼い主から保護して里子に出した兄弟姉妹たちがいた。家猫を何匹も避妊しないで飼っていて、産まれた仔猫は次々と売り飛ばしてきた飼い主だった。

大崎さんはその年に生まれて売られそうになっていた10匹を保護して、親猫の避妊を全て行い、仔猫たちは里子に出し尽くした。大崎さんと私で、かなり苦労した一件だった。


とんでもない電話とは、その中の2匹の美人姉妹の事だった。

新しい飼い主である家族の愛に恵まれてすっかり落ち着いて暮らしていたのに、何時の間にか状況が変化していたのだ。ペット可の分譲新築マンションに入居したばかりのご家族は、あと2匹くらい飼いたいと言っていたのに、その後マンションの管理規約が変わった。

きっかけは、マンションの犬を飼っている住人のマナーの悪さだった。エントランスや通路、エレベーターの中で排泄させたまま放置しておくような非常識な事態が続いたらしい。そしてペット反対派の声だけが高まった。よく聞くパターンである。

そして、それは昨年の時点で既に知らされていた事だった。


その時点では、途中で変わった規約でもある事だし現在飼っているペットを処分しろとまでは言わないだろうから、せめて今いる一代限りでも飼育が続けられるよう、管理組合の席でペットを飼っている人たちの声も集めて何とか努力して欲しいと話した。

しかし、その努力はなされなかったのだという事が解かった。

あれからアンケートも行われたそうだが、猫を飼っているとは申告しなかったらしい。従って、誰一人としてペットの為に話し合いを持とうとして来なかったという。

信じられない。つまり、手放さずに済む為の努力をする程には、あそこのマンションの犬猫たちは愛されていなかったという事なのか。


途中からお父さんが電話を代わった。

しかしどうにも話が要を得ない。自分がリストラの対象になり経済的にも苦しい、マンションも手放さなければならないかも知れない、朝方猫たちが暴れる、猫には可哀想だけど人間がどうしようもなくなっちゃ仕方ない・・・等と言っているので「では、必ずしも管理組合がどうのという事ではなくて、飼い続けたくないという事でしょうか?」と言ってみた。

それに対しては、ここは涙を呑んで保健所に連れて行くしかないと思うが、その前に川口さんに断っておかなきゃ悪いだろうと言って電話させたんだと言う。

「保健所」などという単語を聞きたくはない。「それは飼い主としての責任と良識の範囲ですべき事ですし聞きたくもありませんでした、しかし聞いてしまった以上は『はい、どうぞ殺して下さい。』とは言えません、そんな事をしないで済むよう頑張ってみましょう。」と言うしか出来ない。


昨年の電話でも「ここは川口さんにどうにかして貰おうと思って・・・」と言っていたお父さんだった。

怒りは覚えたが、怒っても始まらない。何とか頑張って戴けるよう色々と話をしてきたのだが、今日の様子では管理組合と発展的に話を出来るお父さんではないと諦めた。


里親さんを探す努力をしましょう、お手伝いしますから・・・と言っても、いつ里親が決まるか保証はして貰えないでしょうと言うばかりだ。

そんな後ろ向きな事では何も始まらないじゃないですか、頑張ってみましょう・・・と説得するが、結果ははかばかしいものではなかった。むしろお嬢さんは精神的にパニックを起こしてしまっており、もういいです!と一方的に電話を切られてしまった。

こうちゃんが一部始終を聞いていて、解かった、うちで引き取ろうと言う。

こうちゃんが改めて電話をしてくれて、私が引き取りますから5月の連休までは責任をもって飼い続けて下さいと伝える。お嬢さんは泣いていた。私にも何度も謝罪していた。

自分に力がなくて何も出来ない事が悔しいし、本当に可愛がっていたからここそ飼い続けられない事が悲しいのだという事が解かる。猫の事で苦しみながらもこんな結論を出してしまっては、一体彼女の今後の人生はどうなるのだろう?と心配になる。

しかし人間の事は自分で考えて解決して貰えば良い。私はあの時救い出したリンリンとランランの命を失わせたくないだけだ。


5月になれば、階下がもっと自由に使えるようになる。そうしたら下の3匹たちと共に、2部屋を開放して飼おう。

里親募集はしない。私達が突然死なない限りは、11匹だって飼えるさ。構って欲しい甘ったればかりなので、その事が頭数を増やす事の一番のネックとなっているが、時間のやりくりをして猫の世話に使える時間を増やすしかない。

サイトもその時点で閉鎖しよう。手間と時間がかかり過ぎる。私がサイト閉鎖をすれば大喜びするひがみっぽいバカ連中にエサを与えるのも腹立たしいが、そんな事よりも自分の猫たちや家族との時間の方がずっと大切だ。



追記:
リンリンとランランは、あれから色々な経緯があって、今夜から我が家に引き取った。

父親がタクシーで、小さな仔猫用のキャリーに2匹をぎゅうぎゅう詰めにしてつれて来た。


こうちゃんは、何か言っても通じる父親ではないのと、早く2匹をその狭い空間から開放してあげたいので長いやりとりは避けて「お嬢さんは、人にものを頼んできておきながら、一方的に電話を切るような事をするのはどうかと思いますね」と言ったそうだ。

すると父親は「いやぁ・・・アイツは変わっているから・・・」とヘラヘラしている。「だとしても、監督・教育は親にしか出来ないのですから、ちゃんとして下さい」と言ってみたらしい。

再び「アイツはちょつと変わっているんですよ・・・」と笑っていたという。案の定の対応だ。



そうして、今日のうちにリンリンとランランは我が家に捨てに来られたという訳だ。

このまま里親募集はせずにうちの子たちに加えようと考えていたのだが、Nさんが直ぐに電話をくれて「うちに連れて来なよ。里親募集は私がするから」と言う。有り難くて、返す言葉に詰まった。

その気持ちは嬉しいけれど、9匹の猫がいる独り者の彼女に、9匹の猫がいる大人二人の私達がそれをお願いする事は出来ない。

だとしても、Nさんは私がこのまま飼う事もサイトの閉鎖も反対すると言う。みょーこは自分を擦り減らすことの非常に多い事を本気で心配してくれていて、サイトの閉鎖には大賛成、そして猫はこれっきり11匹以上には増やすなと言う。

こうちゃんは、ひたすら私の心身の状態を心配し、無責任な依頼や相談の多い事に怒り狂っている。おニャアニャンからも、森さんからも、そして初めてメールを下さった山田さんからも、猫ばあばからも、深い言葉を戴いた。


里親募集をして、追記を書く気持ちになったのは、そういう人たちへの感謝の心を、どんな精神状態の時にも顔を上げて、絶望だけはしないでいようという決意と共に表したいという意味に他ならない。

リンリンとランランは、里親さんが現れなければ自分で引き受けるつもりでいる。隔離して飼うグループが3組というのは確かにきつい。うちの子にするのであれば、カワムラ家に一緒にさせられるのだが、しばらくは頑張ってみよう。

急いで暖房器具を用意し、1階の姑の寝室だった空き部屋を2匹の部屋にした。



家で仕事しているこうちゃんには、どうしたってまた負担を増やすね。申し訳ない。

さて、そろそろ3匹と2匹の様子を見に行って、3匹の方で眠ろう。

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