さよならリンラン

Apr.13,2003
いよいよリンリンとランランのお嫁入りの当日。昨夜はなかなか眠れなかった。

朝はリンランのご飯は抜きだ。移動中に排泄しても吐いてもいけないので、可哀想だが我慢して貰う。その分、昨夜は2度もご飯をあげてしまったのだが・・・。私達は、パンとチョリソと目玉焼きとコーヒーをしっかりと食べる。しかし抜歯後の穴に、食べ物が入らないように片側だけで噛むのは疲れる。そもそも食べるスピードが半減してしまう。素早く食べないと、口の中で食べ物の味が変わってしまうのが嫌なのだ。それには口全体で力強くガシガシと数回噛んで、さっさと飲み込むに限る。それが出来ない辛さ・・・。

出発前に、おもちゃでいっぱい遊んでおいた。積極的なランランだけでなく、リンリンも夢中で遊ぶ。この子達は、まだこの後の予定を知らないのだ・・・と思うと、これからもっと幸せな環境に行くというのに何だか騙して連れ出すような気分になってしまい、早くも涙腺が緩みそうだ。ぐっと堪えて一旦部屋を出る。

里親のユカさんとおニャアニャン夫妻が福岡空港で出迎えてくれる予定になっているので、専用の掲示板で「今から出掛けます」と報告を入れてから、今度はコンテナを持ってリンラン部屋に入室する。ランランはいつものとおり、ドアまで出迎えてくれた。間髪を入れず、抱き抱えてコンテナへと導いてしまう。2匹が余裕で入れる大型コンテナにしたので、リンリンもいっしょに入れるのだが、リンリンはカーテンの裏に隠れてしまった。こうちゃんが抱いて、少し嫌々するりんリンもランランの入っているコンテナへと閉じ込める。この時点で、2匹はブーイングの大合唱を始めていた。この合唱は、空港の貨物受付カウンターまで続いた。

道は空いていたけれど、やけに道中の信号が多く感じる。気が逸るせいなのかとも思う。兎に角、リンランに鳴かれて鳴かれて、落ち着かないのだ。こんなに鳴かれたのは、同じ福岡に行った公太郎を新座から横浜山手まで搬送した時以来だ。いつも消極的なリンリンが、コンテナの扉の格子の隙間から目一杯手を伸ばして、私に触ろうとする。その手を握ってやる。時々私も指を差し入れて、リンリンの顔やランランの頭を撫でる。2匹とも、コンテナの奥に怯えてうずくまるのではなくて、手前にへばり付いて「出せ〜!」「どこに行くの?」と鳴いている。この3週間で、随分と変わってきたものだ。

2匹とも、私の顔をじーっと見つめている。これは辛い。しかし福岡では幸せが待っているんだから・・・と、心を鬼にしてドライに考える努力を続ける。やがて環八から羽田空港の敷地内へと進み、何度も猫を運んだお馴染みの道をひた走る。うす曇りで、東京湾は眩しく霞んでいた。猫を乗せている時は、あまりスピードを上げないで走る。しかし、目的の「西貨物地区」はどんどん近づいてしまう。ゲートで免許証を提示して書類にサインし、通行証を貰う。

JALは一番奥だ。車を停め、重たいコンテナ(2匹で11キロだ!)をこうちゃんが建物の中に運び込む。このあたりで2匹の合唱がピタリと止まった。我が儘を言って鳴き叫ぶ余裕もない位、今度は怯えているようだ。ごめんね。

受付の書類を記入した後、係員の女の子が伝票を打つのに時間がかかり、ちょっと苛々する。みっともないとは思うけれど、もう涙が流れ落ちてくる。鼻水も垂れそうだ。リンランは重量を計る台に乗せられたままだ。こうちゃんが、しゃがんだ姿勢でずっと話し掛けている。やっと精算が終わり、私もしゃがんで「元気でね」と声をかける。それで精一杯。未練を断ち切って「じゃ、もう行こう」と立ち上がり、振り返らずに建物を出る。リンランは私たちを見ているだろうか?パパとママだと思っていたのに、どうして捨てて行くの?と思っていないだろうか?この1週間、何度も反芻した事を改めて思う。

こうちゃんが私の肩を抱き抱えてくれて、車に乗り込んだ。捨てる訳ではない、行く先にはもっと楽しい生活がある、もう寂しくないよ、今度のママとは毎日同じ部屋で眠れるんだよ、飛行機は怖いだろうけど車や電車で行くよりずっと早いんだから楽だよ・・・と何度も自分に言い聞かせてきた事をもう一度だけ繰り返して、この堂々巡りも今日でおしまいだと思うと実はホッとした。もう悩んでも仕方ないというところまで来ないと駄目だ。理解と愛情という点で申し分ない里親さんと出会えたリンランは、本当は物凄く強運な猫たちなのだ。あっという間にこんな良い里親さんが決まったのに、悲しんでいたら失礼だ。あとは全てお任せしよう。ひとしきり泣けば落ち着く。しかし泣くと疲れるな。

戻り道は、休日は空いている産業道路から鶴見に向かう。ラボの脇も通り過ぎて、鶴見でエサやりをし、幾つか所用を済ませて昼過ぎに帰宅した。途中、携帯に「今、受け取って車に乗せました。震えているけど、鳴いてはいないよ。」とおニャアニャンから電話連絡が入った。先ずは無事で安心した。

家の玄関を入ると、直ぐ脇がリンリンランランの部屋だ。もうリンランはいない。そう思ったら、また涙が込み上げてきた。でも泣かない。もう先に進んでいるのだ。泣いてどうする。リンランも、そろそろ里親さんの家に着く頃かも知れない。

2階に上がると、ダイニングの壁は鏡になっている。自分の顔を見ると、やけに赤い。陽に当たり過ぎて、どうやら紅斑が出たようだ。きちんとファンデーションを塗らないといけないのに、つい億劫で休日はスッピンで過ごしてしまう。氷で頚動脈を冷やしながら脱力感でボーッとしていたら、携帯が鳴った。おニャアニャンからだ。

2匹は、早くも探索を始めているらしい。うちに連れて来られたときは、何日もフード付き猫ベッドの奥から出て来なかったのに、凄い積極性だ。これだったら大丈夫。専用掲示板でも落ち着いてきた様子を知らせてくれているし、おニャアニャンが早速今日の報告と写真をメールしてくれたので、それも合わせてご覧戴きたいと思う。皆さん、応援有り難うございました。そしてユカさん、おニャアニャンとおトウニャン、本当に有り難う。

さて、今日はリンランの他にもトッティや茶助・朱里・黄衣ちゃん3匹、そしてロス子ちゃんが里子に行ったという、珍しい里子ラッシュの日だ。ロス子ちゃんは掲載を協力させていただいていただけだが、あとは代理募集や仲介していた子ばかりなので、感慨もひとしおだ。みんな幸せにね。私は明日から、また仕事で頑張るよ。

リンリン&ランラン in 福岡
到着!まだ恐々・・・。
リンリン 
冷蔵庫の陰に落ち着く
ランラン
探索を開始
「なかなか快適だわね・・・
ナチュバラも用意してくれたのね。
ふむふむ・・・。」
リンリンも釣られて探索開始
新品のチョーカー似合う?
最初の保護主、大崎さん(《猫手屋》デザイナー)の手作りです。
昨日届けてくれました。
リンリンはこんな所にまで!

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