2003年10月10日(3)
皆さんから、続々とお花が届いた。有り難うございます。ミュウのお棺に入れてやる前に、一部をミュウの周りに飾ってみた。早速ジャムが来て、先ずはミュウとの別れを惜しむかのようにツーショットとなった。ますます穏やかな顔をしているミュウに、ちょっと神妙な表情のジャム。ジャムは一杯お世話になったね、ミュウに。


しかし、やはりそこは草食恐竜・ジャムの事・・・やっぱり花を食べ始めた。おまけにジャムの愛弟子・マルコも来て、葉っぱを引っこ抜いたり、花にパンチしたりしていた。するとゴマが、マルコを叱るように駆けて来たではないか。マルコはシュンとして、花の陰でお座りしてしまった。流石にゴマは礼節をわきまえている。子供に礼儀を教えるには、ゴマが一番だ。マルコも大人のはずだが、どうもマルコとジャム、ジーコは末っ子時代を味わっているので、いつまでもガキだ。


ミュウのお棺には、戴いたお花の一部と、私たちの写真を入れてやった。またここに戻って来るのだが、お窯には一人で入らなければならない。きっと不安だろうと思って、こうちゃんがミュウを抱いた写真と、私が珍しく笑っている写真の2枚を持たせた。一緒に行くよ。

午後3時にお迎えが来て、ミュウは一旦家から出掛けた。とても丁寧で感じの良い担当者で、立派なアメショーですね・・・優しいお顔ですね・・・と言ってくれる。嘘でも嬉しい。でも嘘ではないだろう。実際お棺に入れるかどうかという位に立派な体格で、その顔の優しさは誰もが認めてくれる。そして事実優しいのだもの、ミュウは。

送迎があるのだが、私たちは立ち会い葬で骨上げを希望したので、インプレッサで黒い車に付いていった。連休前の五十日とあって、道が大変混んでいた。火葬場は、神奈川区の羽沢町にあった。緑の多い田舎で、こじんまりとした虚飾を廃した感じの良い火葬場だと思った。

先ずは祭壇の前で、最後の写真を撮った。もうミュウを写す事は出来ない。とても残念だけど、これが本当の最後のショットとなった。


お窯に入れられ、身体にはずっとベッドで掛けてあげていた、工藤さんからのプレゼントのバスタオルを掛けてあげた。その上から、お花をもう一度飾り直す。写真を両手に抱かせる。何度も額と頬にキスをして「ミュウちゃん」と呼びかけた。ミュウの顔に私の鼻水が付いた。ミュウは頭のてっぺんにキスされるのが好きだった。「ミュウちゃん、チュッチュッは?」と言うと、自分から頭を差し出してキスさせた。今日はもう、私が強引に口を突き出してキスするしかない。

蓋が閉められ、点火されたのが判った瞬間が一番辛かった。ミュウが焼かれてしまう。でも仕方ない。今日中に火葬出来て良かった。たとえ冷やしていたとしても、次第に重力で下になっている部分には血が溜まってしまう(いわゆる「死斑」である)はずだ。真冬でも摂氏5度以下のところでないと、自家溶解は進むという。実は、時間の経過と共に、ミュウの鼻の色が変わってきている事に気付いていた。今日3回に分けてアップした「猫雑記」の写真を見れば、それが一目瞭然だ。こんなのはまだマシなのかも知れない。遺体はどんどん変化してしまうのだ。綺麗だったミュウを、綺麗なまま焼いてあげたい。

焼き場の外で、こうちゃんと抱き合って声を上げて泣いた。恥も外聞もない。身体は生ものなので、焼かないわけにはいかないが、魂は永遠に私と共にある・・・そう思っていても、あのミュウの姿を再びこの目で見る事は出来ない、あの柔らかい身体を抱き上げる事は出来ないのだと思うと、ただ悲しかった。

大抵、猫が火葬場に持ち込まれる場合、年老いているか闘病の末痩せてしまっているので、あんなに大きな猫は珍しいのだと聞かされた。焼き上がるまでの時間も、通常の1.5倍はかかると言う。4時10分に点火・・・ああ、偶然にもちょうど12時間後じゃないか、息を引き取ってから。

担当者の男性は、色んな話を聞いてくれた。どんな猫だったのか、どんな最後だったのか、そして他にどんな猫たちがいるのか、一人一人のプロフィールをいちいち頷いて聞いてくれた。その人も、自宅マンションで猫を2匹飼っていると言う。先代の猫の亡くなった時の事を、身振りを交えて直接話法で話してくれた。私は、直接話法で話す人が好きだ。物真似も入ると尚良い。この人のお陰で、泣いて待たずに済んだ。あっという間に、2時間余りが過ぎた。さぞや長い待ち時間だろうと覚悟していたのに、これには拍子抜けだった。有り難う、イイヅカさん。

焼きあがって少し冷まし、骨上げが始まったのは6時20分だった。大きな骨だけ2〜3本、私たちが拾い、あとは綺麗に整理してバットに並べてから、待合室に持って来てくれた。綺麗に部位毎に並べてくれていた。細かい骨がいっぱいある。手首から先の、細かい関節に分かれた指の骨もあれば、爪もちゃんと残っていた。意外と細いアバラの骨、そしてこれも珍しいと言われたのだが、尾てい骨と尻尾の付け根がしっかり繋がったまま焼きあがった。

これが骨盤、これが肩甲骨、これが腕の骨、これが喉仏、そしてこれが頭蓋骨・・・と丁寧に説明してくれてから、骨壷へと入れる順番を指図してくれる。こうちゃんと1つずつ、丁寧に入れていった。骨の密度が高いのか、それても上手に温度と時間の管理をして焼くと言っていたけれど、そのせいなのか、骨のひとつひとつが硬くて、骨と骨がぶつかった時に、堅い金属音のような、あるいはボーンチャイナのような音をたてた。

乱暴な業者や人間の火葬の場合は、そんな風には丁寧には焼けないのだと言う。時間も燃料もかかるからね。骨が灰になった部分というのは、全くなかった。素晴らしい焼き上がり。写真に撮りたい位だったが、変わり果てたミュウだと思うと辛くて撮れなかった。デスマスクを撮れたのは、ひとえにそれがあまりにも美しかったからだ。何でも記録するという趣味ではない。

小さな指の関節の骨と爪を、骨壷とは別にティッシュで包んで持たせて貰った。いつも持ち歩いていたい。肝心なのは魂であって、お骨や墓ではない・・・と言いながらも、あまりに綺麗でしっかりした可愛いお骨なので、お守りにしようと思う。こうちゃんと私の分、お揃いで取り分けておいた。

ちょっと不思議な出来事があった。今朝のお供えの水の減り具合に続いて、不思議な事の第2弾。火葬場の祭壇のローソクが燃えずに垂れたものが、不思議な形を作ったのだ。担当者も驚いていた。だって、普段は全然垂れずに全て燃えてしまっているのだから・・・と、別の使いかけのローソクを見せてくれた。あまり太いローソクではないので、燭台の受け皿から垂れる事はないのだと言う。それが凄い勢いでダラダラと垂れて、こんな形になった。竜の頭だ!

この下には、実は胴体が出来た。それも貰って来た。実は、こうちゃんの守り神は竜神だと言われていた。昨日、このシッコの出にくい私が、何度もトイレに駆け込んではオシッコが大量に出た。こうちゃんもだった。それで、竜神が降りて来ているのだと話していたところだった。そこにもってきて、このローソクの溶け方。偶然でしょ?と言われればそれまでだが、竜神さんが下りて来てくれていたと信じる方が有り難い。

全て詰め終えて袋に入れて胸に抱くと、これがミュウか・・・と信じられない程に軽かった。骨壷の重さだけしか感じない。ミュウちゃん、おうちに帰ろうね・・・毎日病院から帰る時に言っていたのと同じ言葉をかける。キャリーに入っていたミュウは、その黒い大きな瞳で私を見ていた。その瞳は、もう焼けてなくなってしまったのだ。でも、あの瞳の色を忘れない。口元の毛の柔らかさを、私の指と唇が覚えている。

7時10分頃火葬場を後にして、8時ちょっと前にマツモト先生の病院にご挨拶に立ち寄った。お骨を抱いて病院に行くのは躊躇われたが、患者さんがいない時を見計らってご挨拶させて戴き、先生にもお骨を見て戴きたいと思って・・・でもご迷惑ですよね、こんなもの見せられても・・・と言ってみた。すると先生は、いや是非、見せていただけるのであれば・・・と笑顔で答えてくれた。

先生にもお骨を誉めて戴き、お守りの爪や指のお骨も見せた。殆ど内臓は健康で、しかも死に至るまでに長く患わなかっただけに、お骨も立派で綺麗だった。流石ミュウ大王。お骨まで素晴らしい。そして親馬鹿は、お骨までを自慢するというこの性(さが)。

やっと家に戻って、先ずは骨壷を決めていた場所に飾る。

お水と花と線香を供え、手を合わせて語りかけた。帰って来たよ、ミュウちゃん。おうちだよ。もうずっと一緒だよ。長かったね、この1週間は。もう何も苦しくないね。今夜も一緒に寝ようね。愛してるよ。私のミュウ。

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