デブトラ

旅立ち

Mar. 13, 2004

2004年3月13日 土曜日

SOSで里親さんの決まったデブトラとチビぷうちゃんの、いよいよ旅立ちの日が来た。近畿から頼もしい猫飼い仲間が、里親さんとしてご夫婦でお迎えに来てくれる事になっている。実際に会うのは初めてだけど、お互いのパーソナリティも充分に解かるような密なやりとりを続けて来た間柄だし、猫飼いとしての経験は私より勝るとも劣らない。ハンディキャップのある猫を託すには、これ以上望めないと思うような方だ。

アインの2時間ごとの強制給餌があるので、こうちゃんとは交代で寝た。午前2時までではこうちゃんが、4時からは私が代わった。お天気も良さそうだし、暖かい朝だった。アインも嫌がらずに給餌を受け付けている。この状態であれば、数時間のお留守番であれば出来るだろう。

里親さんの到着は11時半の新幹線なので、10時40分に家を出た。多少の渋滞はあったが、20分前に新横浜駅に着いてしまった。私達夫婦は待ち合わせが下手だ。駅の周辺をウロウロと歩いて時間を潰す。そして待望の時間となり、里親さんと無事対面。我々よりも歳の若い、しかし大人の世代のご夫婦である。どちらも笑顔が素敵だ。

病院に着いたら、まだ午前中の診療時間内であった。1時にまた来ます・・・と言って、向かいの居酒屋でお昼の定食を食べる事にした。里親さんご夫妻は、煮魚定食と刺身定食、私達夫婦は牡蠣フライ定食。サラダも漬け物もたっぷり、味噌汁の具は白子、ご飯は炊きたて、コーヒーもサービスして貰い、そして安い。文句なし。

コーヒーを飲んでいる時、和田さん登場。昨日手術した野良猫のお迎えで、病院にこれもご夫妻で来ていたのだ。美人の奥さんと若くて優しい旦那・・・二人で協力して捕獲・避妊している姿はとても美しいと思う。

さて、病院に戻ってみたら、待合室がさっきより混んでいた。椅子に座って茶トラのおとなしそうな猫を抱いている人がいると思ったら、なんとデブトラの保護主がデブトラを抱いていたのだった。いくらおとなしい猫とは言え、待合室でキャリーに入れずにいるのは私としてはちょっとどうか・・・とも思うが、お別れをしているのだろう、保護主は泣いていた。

デブトラを託した保護ボランティアグループのメンバーらしい人も一緒だった。よくよく話をしてみると、そのメンバーの女性はうちに来た事があるらしい。一昨年のマルコの引き取りの際、我が家に大勢来たボランティアさんたちの中の一人だったのだ。すっかり顔も忘れていて失礼致しました。

デブトラの保護の経緯を改めて聞いてみると、この子は団地の敷地内でエサやりしていた猫だったらしい。それが頭から熱湯を掛けられた事で、顔の傷が出来たようだ。そして昨年の秋に、交通事故か何かで股関節と足を骨折。与えられた少ない情報からSOSの記事に私が書いた内容とは少し違っていたが、いずれにしても虐待されていた事は確かだ。

しかし、避妊せずにエサやりしていた事も解かった。デブトラも、怪我で入院するまでは未去勢で、時々姿をくらましていたと言うではないか。そして挙げ句の果てにはエイズキャリアとなってしまっているのだから・・・。

しかもデブトラに貧血が続いているのは、エイズの発症も考えられなくないと言われ、辛い気持ちをジョークで誤魔化す私・・・。気のない相手に言っても詮無い事とは思いつつ、エサやりと避妊はワンセットなんですよ・・・とお決まりの言葉を言う。どこまで解かってくれただろうか。

デブトラの引き攣れたような目の縁は、マツモト先生が形成手術であそこまで綺麗にしてくれたものだと初めて知った。骨折して砕けた足の手術後の状態は、レントゲン写真を見ながら丁寧に説明してくれた。里親さんはマツモト先生の説明を聞きながらメモをとり、今後どうケアをしてあげるべきかと真剣な眼差しだ。流石看護婦さん(おっと、バラしてしまった)である。

ご持参下さっていたキャリーの一つにデブトラを入れ、次はチビぷうの番だ。こちらはもう元気一杯で、誰彼となく突進して来ては甘える。左の前足が無い以外、どこも悪いところはない。元気一杯。そして可愛い。

新しいお母さんの手に包まれると、いかにも嬉しそうにねっとりと甘えてスリスリしていたのが印象的だった。

里親さんのご主人も、猫を見る目がとても優しい。一緒にご飯を食べるのは、心を通わせるにはとても大切な事だと思っている。今日このお二人の食事風景を見ていると、とても仲の良い素敵なご夫婦だと感じたし、ご主人の「不必要に他人に神経を遣わせない」効果抜群の笑顔と態度には、私達はとても感謝した。気を遣う相手もいるのさ、時々はね・・・。

そういう意味では、和田さんご夫婦も素晴らしい。ついご主人の優しい笑顔に甘えて、里親さんたちを新横浜まで送って貰うようお願いしてしまったが、気持ち良く引き受けて下さった。普段であれば甘えは自分に許さないのだが、今日は既にキャリーに入れたデブトラたちをその後もあまり長く待たせては可哀想だと思ったので、咄嗟に思いついてお願いしてしまったのだ。

そう、私にはまだやる事が残っていたのだ。それは、やはりSOSで里親さんと一時預かりを募集しているキンタロウの転院も、今日の1時という約束でマツモト先生にお願いしてあったのだ。

キンタロウの保護主のやなぎさわさんは、いかにも心の温かい優しい表情の女の子だった。化粧っ気もなく、ほっぺたなんか艶々でピンクだ。電話やメールで受けた印象通りの、控え目で落ち着いた感じの良いお嬢さんだった。

キンタロウは耳の中の状態がとても悪く、内部で化膿しているようだ。頭が真っ直ぐにならないのは、もしかしたら耳のせいではないかという疑いが出てきた。平衡感覚がおかしい。

先ずは耳の治療から始め、次いで眼球の摘出をする事になるだろう。マツモト先生に全ての判断をお願いし、私が後はフォローする事にした。

キンタロウの今後の治療費・入院費に関しては、《猫の手倶楽部》に寄付して戴ける予定の、黒猫屋さんや越後屋さんの売り上げと、今後呼びかけるカンパのお願いで賄う予定だ。先ずは治療方針を決め、少しでも状態が改善される事を優先し、後の事はそれから考えよう。

今日の昼間だけで随分とたくさんの人に会い、たくさんの事をした。夜には電話機を置く暇なし。和田さんと里親さんにお礼の電話を入れ、チビぷうの保護主さんに報告の電話をし、ムツコからの電話ではよこちん家のまやちゃんの手術が無事済んで面会して来てくれた報告を聞き、小野さんからも電話を戴き、締めくくりはミヨコにここ数日の報告の電話をした。

デブトラは里親さんのお宅で鏡台の下で香箱を組んでくつろいでいると言うし、チビぷうは予想以上に元気一杯で、デブトラのご飯まで食べてしまったそうだ。出足は順調だと思う。どうか幸せにして貰ってね。

アインにチューブダイエットを与えたら、こうちゃんは少し横になると言う。今夜は私が起きていよう。明け方に交代する予定だ。遣り残している事がたくさんあるので、今夜は少しずつ片付けたい。

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