母猫「苑子(そのこ)」

May. 28, 2004

2004年5月28日 金曜日

また飼育放棄だ。今回は少し前からミヨコが縁もゆかりもない相手からある日突然相談された問題で、避妊の為の捕獲を夜中に出掛けて行っては手伝ってやったり、精神不安定な相手から深夜にかかってくる電話には具体的なアドバイスをしながら励ましていたのを知っていたのだが、保護主の女性はいざ自宅に保護したものの、短期間で責任放棄するに至ったようだ。

保護主は地主の末娘で、40代のパラサイト・シングルである。姉も同様にパラサイトだそうだが、その姉と両親が猫嫌いで、彼女はとても逆らえないらしい。仕事もしていない姉妹だが、養って貰っている親に逆らえないのは自業自得としても、目糞である姉が鼻糞である妹を支配する事はなかろう。姉は病気の犬の介護に生き甲斐を見出しているらしいが、妹は敷地内の野良猫にエサやりをしていたようだ。

その野良猫たちに避妊していなかった結果、どこにでもある問題が起きた。近隣からの苦情に対応出来るような才覚のある妹ではなく(姉だろうが親だろうが同様だろうが)、問題は大きくなるばかりで遂に薬殺される寸前まで来た。人馴れしている猫たちだけに、誰にでも捕まえられる。周辺は、土地成り金の地主が多い。つまりつい数年までは農家だった家が多いのだ。地図で調べたら同じ姓のデカい家が多く、このお嬢様の家は体育館バリの大きさであった。

様々な提案やアドバイス虚しく、業を煮やしたミヨコは自分が引き取ると言ってしまった。本猫を見てしまっているだけに、突き放せなかった気持ちは解かる。その気持ちをきちんと自分の中で責任を持つ為に、ミヨコは里親募集など考えていなかった。自分が出来ない事を人に頼むのは大嫌いな女だもの。地主の寄生虫中年娘とは大違いなのだ。

しかし自分で飼うつもりであるならば、自分が出来ない事を人に押し付けるのとは違うではないか。私は怒りに燃え、里親募集を決心させる為と、その猫たちをうちで預かる決死の覚悟で家を出た。最悪の場合は、ミヨコをふん縛ってでも母子猫を拉致して来ようと思っていた。そして約束の時間丁度に、ミヨコのマンション前に着いた。

今回の捕獲の手伝いと保護にまつわる問題を丁寧にサポートしてくれていた薫ちゃんは、今日はミヨコの手伝いでお山のエサやりの当番の曜日だ。間もなく二人がお山から下りて来るだろうと思っていたら、ミヨコの張りのある声が聞こえてきた。街灯に浮かんだシルエットは3つだ。何だよ、寄生虫娘も一緒かよ。正直言って厭な気分がした。会ったらとてもニコニコなんて出来ないぞ。それどころか、言っておきたい事は山ほどある。

しかし結果から言えば、言いたい事の半分も言えなかった。何を言っても言うだけ虚しいのと、相手はしたたかでずるく、尚且つ弱者を装っている。このお嬢様と会ったのは今夜が初めてだったが、一目見ただけでも「変な人」だと解かった。そして自己弁護に終始し、自分が出来ない事の理由を述べるのには饒舌だった。聞いていてウンザリしてきたので、「そんな事はもう聞きたくありません。今後、具体的に出来る事は何なのかを考えて下さい」と言ってやった。

人に丸投げしておいて、ノーリスクというのでは虫が良過ぎる。しかし家には置けない、ミヨコのエサ場に放してもいいよと言って貰っても、条件として提示した週に一度のエサやりも出来ない、身体も病弱だし気力も精神的なキャパもないと言ってのける。このヤロー、ミヨコも私も不治の病で国の難病指定だぞ。お前の病気は、身体の病気じゃないだろうが。

顔色も汚くて、これが大人の女か・・・という位に異常に痩せていた。おそらく拒食症だろう。しかし保護猫たちの飼育を放棄し、こちらに一方的に迷惑を掛ける人間の精神状態までフォローしてやる必要はない。しかも私は、現在安静を言い渡されている身の上なのだ。これ以上関わると、安静とは言い難い心臓の状態になるだろう。既に顔は引き攣り、心臓の鼓動が大きく速くなっていた。まだまだ鍛錬が足りないせいか、怒りが身体のコンディションを支配してしまう。

私はミヨコにまくし立てた。私達が預かって連れ帰る。里親募集も私の名前で2匹ともする・・・と。しかしミヨコも譲らず。「オメーにこれ以上、無理をさせたくないんだよ!」と言えば「オメーにだけは迷惑掛けたくないんだよ!」と答える応酬で、埒が開かない。人に迷惑を掛ける位だったら死んだ方がマシだと思っているミヨコだから、どうせ一筋縄では行かないだろうとは思っていたけれど、置いて行ってくれなければあと30本残っているビールを全部飲んじまうぞと子供のような事まで言い出す始末だ。

しかしうちだって3階建てケージも新たに購入した事だし、絶対に連れて帰ろうと思っていた。力持ちの薫ちゃんと私がミヨコを羽交い絞めにして、その間にこうちゃんが2匹を誘拐する計画はどうだろう。「聞き入れてくれなければキスするぞ」とミヨコ。「そんな事したら、ここでウンコするぞ」と私。「ウンコなんか出ないくせに・・・」とこうちゃん。うるさいな、自分が大グソするからと言って威張るんじゃないぞ。

兎に角、どちらが預かるにしても、お嬢様には早くお引き取り願いたい。身内だけで話したい事もあるのだ。私はお腹が張って来てしまっていた。ストレスを感じる相手と長時間過ごすと、必ずお腹が張ってくる。

しかしお嬢様はなかなか帰ろうとしない。何度も私が「そろそろお開きにしましょう、浜さんをそろそろ休ませないと・・・」と言ってようやく席を立っても、猫を落ち着かせたケージの所に行ったきり、いつまでも泣いている。泣く位だったら手放すなよ。頑張らない人間に、泣く資格なんかないよ・・・と言いたいが、病人を苛めても冥利が悪い。早く帰って欲しかった。もう夜中なんだ、アインたちの給餌に帰らなくちゃいけないのだ。

やっと帰る事になったが、途中まで送って行った薫ちゃんが全然戻って来ない。やっと戻ったが、別れ際にもさんざん泣かれたらしい。いつまで泣くなよ、放り出しておいて。最後まで鬱陶しい女だな。しかもアンタの次元では最良の結果を得たじゃないか。泣きたいのはこっちだよ。熱は上がるし、息は苦しいし、足の付け根のしこりは大きくなるし。

結局は、お前に負担を掛けたら眠れないよ・・・と泣きつくのでミヨコの家に2匹を置いては来たけれど、日曜の晩にはうちで引き取るつもりだ。ミヨコの方が、私よりずっと具合が悪いはずなのだ。あいつが死んだらとても困る。

薫ちゃんには、ちょっとうちに寄って貰った。渡したいものがあり、話したい事もあった。うちの猫たちをタム以外は全て見て貰えたし、女好きのカワムラさんは寝そべって甘えて腹を撫でで貰っていたし、久し振りで色々と話せたのは良かった。成長したね、薫ちゃん。私が死んだら、王家の谷に散骨してね、テッちゃんと協力し合って。その話をすると、ミヨコが「ワシが撒いてやるよ」とほざくが、「何言ってんだ、オメーなんかとっくに死んだ後なんだよ」と言い返す。どちらもあまり長生きはしないだろけど、猫たちを全て見送ってからにしような。

昼間は昼間で、酷く怒らせてくれた人間がいた。まだその件は明らかには出来ないけれど、いずれは公表する必要があるかも知れない。私にも責任がある事だから。
仔猫「青面獣楊子」

May. 28, 2004

地主のパラサイトお嬢様はとても夜更しらしいが、朝はいつまでも寝ていられるそうだ。いいご身分だよ、アンタの飼育放棄した猫たちの里親募集の記事を私が書いて掲載処理している間にも、ぐうぐう寝ているんだろうな。ちくしょう、体調悪いのに徹夜だよ。

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