アイン 強制給餌され上手 Jun. 21, 2004

2004年6月21日　月曜日
朝から不快指数が高かった。大型の台風が来ている。また心が穏やかではなくなる。急速に人懐こくなってきたトムは、雨が降り始めてからもアライさんや私の気配で茂みから出て来る。腹を見せて転がる。優しいアライさんの足を噛む（私はペリーで慣れているので、巧妙に噛まれないようにかわすのだ）。もはや野良とは思えない程に、ご飯よりも先ず甘えたがる。

みーちゃんを家に入れられて、もう全て安心などという事はあり得ないのだ。ミヨコとメールを交わしたが、偶然・・・いや、エサやりとしては当然のように同じ気持ちであるから同じ言葉が交わされた。『無限地獄』である。

しかしラボの野良猫たちはまだマシなのだ。雨宿りしようと思えば、貨物線の高架下には広々とした関係者以外立ち入り禁止エリアがあるし、無人の建物もあれば植込みの茂みも深い。１匹あたりのテリトリーが大変に広い。悲惨なのは鶴見の駅裏の野良猫たちだ。あそこの猫たちは、一体どこで雨をしのいでいるのだろう・・・と１０年近く思って探しているが、ＪＲ貨物の敷地内には入れないし、軒下というものがない。雨の度、寒い冬の間中、心は穏やかでない。

そういう気持ちを日々抱えながら、限りある力しか持てない自分が出来る精一杯の事は、どうしたって手を抜けなくなる。エサにケチケチしたくない、当然避妊をする、個体識別どころか個体の健康管理に努める、そしていつも心に想う・・・それは自分の気持ちをなだめる為の努力なのだと日々繰り返し知る事になる。

しかし失敗の繰り返しの挙げ句、みーちゃんを遂に保護出来た事は、思いがけず多くの人達に喜んで貰えた。念ずれば通ず・・・であると色んな人に言われた。みんなにも、自分の行動でそれを実感して貰えると嬉しい。

もしかしたら一生、鶴見のハナクソのように保護出来ず終いかも知れない・・・という諦めが、心の中でうっすらと芽生え初めていた事は否めない。

自慢する訳ではないが（いや、自慢だな）、私もこうちゃんも捕獲はかなり数をこなしており、かなり達人の域に達していると思う。それでも２度も捕獲されてリリースされた後の（賢い）三毛猫は、そうそう捕まるものではない事を痛感していた。何度も失敗しては、ますます警戒させるだけだとも解かっていた。それだけに、腹を括っているはずの私ですら、やや腰が引けていたかも知れない。しかし最後はあっけなかった。諦めてしまったら、望みは叶わなかった。

時を同じくして初めて捕獲した人、初めて乳飲み子を保護してしまった人、初めてエサやりに手を染めた人が次々と現れているのが嬉しい。みんな最初は「初めて」だ。その時どう対処するかで、人の真価は問われる。逃げ出さず、堂々と向き合って欲しい。誰でも正直「困った」と感じるのは仕方ないが、それを克己してみせるのが大人としてカッコいいのだ。いや、ドロにまみれてカッコ悪くても良いし、カッコ良くある事は決して目的ではないが、カッコいいに越した事はない。みんな、猫が好きだと言いたければ、カッコいい猫好きになろうな。

仕事は全然はかどらない。低気圧のせいではない。昨年とは段取りが大きく狂ってきているのだ。昨年の今頃には、既に製本が出来上がっていた年次報告書は、まだ所長のチェックが済んでいない。私の苦労はまだこれから始まるのだ。一体どうなるのだろうと考えると不安だ。７月にはシンポジウムがあり、その準備も始まるというのに・・・。

アインとジーコの２時間おきの強制給餌が始まって、もう４ヶ月だ。こうちゃんも私も、出来るだけ交替で相手が寝られるように心を砕いてはいるものの、それでも寝不足が続いてしまう。１７匹もいると、ご飯だけでなく１８個のトイレ掃除、流涙症の子たちの目を清浄綿で拭いてからの点眼、プロポリスやタンポポ茶などのサプリメントを与え、爪を切り、ブラッシングし、撫でたり抱っこしたり、オモチャで遊ばせたり、シッコされれば洗濯し、家中毛だらけになるので掃除も日に何度もする。

仕事と家事とエサやりとこの一連のケアだけで、もう何も出来ないししたくもない。特別なイベントなんか、ほんのたまの事でないと、もうとても身体がもたない。お祖母ちゃんの葬式にだって帰れないのだから、大抵の不義理は許して下さい。メールの返事もあまり書けないし（と言っても、日に２０通程度は返信する努力をしている）、忘れている事がたくさんあると思うけれど、故意ではないので許して欲しい。日記なんか長々書いている暇はあるのかって？あたしゃ速いんだよ、文章書くのは。それにこれは、定期的に溜まった澱を吐き出す作業だ。やらずにはいられない。