リマ
ねえ、お姉ちゃん
Dec. 12, 2007 |
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2007年12月12日 水曜日
私が初めて野良猫を保護したのは、死に掛けた仔猫だった。
出勤途中の駐車場の向かいにあった空き地で、土砂降りの雨の中、母猫と思しき猫が私をじっと見ていたかと思ったら、フイと立ち去った後に、目の開いていない仔猫がいた。
いや、開いていないと思ったのは、目やにで潰れていたのだが。
びしょ濡れになって動けなくなっていたのを、とりあえず会社にこっそり連れて行き、昼休みに病院に連れて行ったものの、数日後、亡くなってしまった。
保護する覚悟が無かった私は、その子に名前すら付けてやれないまま死なせてしまった。
だけど、ノミだらけの身体で、目は見えないのに必死に私の胸にしがみつき、肩口まで這い上がろうとしたときの、あの感触は忘れられない。
そしてあの子を助けられなかった自分への後悔も、その後ずっと付き纏った。今だったら、あの程度の状態の子は救えるかも知れないと思う。かなりの犠牲は払うだろうが。
多分、私の野良猫とのかかわりは、あの時に始まったのだ。
助けてやれなかった小さな命。それでも手に取って知ってしまった、必死で生きようとしていた小さな命の感覚。
あの時の悔いを引きずっていたからこそ、翌年、やはり雨の中でゴマが出産した直後の仔猫たちを発見した時には、後先の事など考えず(勿論考えたけれど、これは言葉の綾だ)、母子ともども連れ帰ってしまったのだろう。
それは私にとって、本当はとても勇気の要る行為だった。色んな意味で。
純血種の老猫3匹がいる環境、夫の両親の支配下で何一つ自由にならない同居生活、とりわけ猫嫌いな舅の存在・・・不安要素は幾つもあった。
でも、やる気次第でそんな障害は乗り越えられるものだという事も、その事をきっかけに知った。
勿論、満点の事が出来たとは思わない。ゴマの仔猫たちだって、今にして思えば全頭うちの子にする事だって出来たはず。しかしあの時には、様々な事情から里親募集するしかないと思ったのだ。
私にはキャパが無く、家の中では夫と猫3匹とで小さくなって暮らしていたのだ。ゴマを手元に残しただけでも、精一杯だったのだ、あの頃の私は。
ともあれ、逃げ出さずに済んだ経験は大きかった。手を汚しもしないで泣く資格なんか無いと思っていたので、どりあえず自分を卑怯者呼ばわりしないで済んだ事は有り難い。
また翌年にハナクソ母子6匹を捕獲・保護した時も、勿論不安と困惑はあったものの、私にはこの課題をやり遂げられるという、言い聞かせにも似た自信があった。
たくさんの人達の応援に支えられて、仔猫たちは無事に里子に出せた。
それを思い出したのは、今夜、TVの番組で「高所恐怖症の克服法」を見たからだ。
恐怖感はピークを超えると次第に下がって行き、大丈夫になるので、それを待って克服出来るという事だった。
高所恐怖症の人は、単なる高さよりも下に空間があるということをイメージさせる状況を怖がる場合が多いと言う。
その際、「駄目だ」と感じたところで逃げ出してしまうと、ますます恐怖症は悪化すると脳の専門化が言っていた。
「恐怖」は緊急事態に対する反応なので、エネルギーがそう長くは続かないという説明だったので、それとはちょっと違うかも知れないけれど、少なくとも共通した何かを思い出したのだ。
即ち、自分にとって苦手な・困った事態に遭遇した時、悪いイメージばかり持って悲観的になり、頭の中を「自分には出来ない」「駄目」というネガティブなイメージで一杯にしてしまうと、ますます克服出来ない自分の態勢を作り上げてしまう気がする。
何か困難な状況を乗り越えた経験は、次の別の困難にぶち当たった時、決して容易くさせてはくれないものの、「自分には今度もきっとやれる」という自信を持たせてくれるような気がするのだ。
いや、「自信」とまでは言えないかも知れない。それは「決意」とか「覚悟」とかに近い、成功のイメージに繋がるモノだ。
「前回も駄目だったから、今回もきっと駄目に違いない」そう思い込む事こそが、失敗の大きな要因になるという事を、少なくとも私自身は経験している。
そうした挫折感を私は何度も味わいたくないし、それでも何とか問題解決したい場合に、他人にその尻拭いをさせてしまうような後ろめたさを、私は感じたくないのだと思う。
後ろめたさは、やがてもっと悪い感情へと変わる。狡かった自分を意識下から消す為にも、他人を悪者にして済ませるようになる。
そういう狡賢い人間にだけはなりたくないと、この歳になってもつくづく思う。
7年半前のあのハナクソの捕獲後、最初に捕まえたハナクソの仔猫は、白黒の「福ちゃん」だった。一番おっとりしていて、一番先に里親さんが決まった。
その「福ちゃん」の写真が、今日、里親の大川さんから届いた。
このところ、たくさんお手紙やメールを戴いていた。他にも可愛い写真があるのだが、また別の機会にご披露しよう。
ずっとオフラインでのお付き合いだったので、メールでやり取り出来るようになった事がとても嬉しい。
ハナクソは遂に家猫にしてやる事が出来ないまま、私の手元には年々どんどん猫が増えて行ったのだ。今の私だったらハナクソをリリースせずに頑張れたのに・・・と大きな悔いが残る。
もう出来るだけ悔いが少なくて済むようでありたい。
5匹の仔猫たちは既に老境に入ってしまったけれど、私がハナクソに誓った「子供たちは必ず幸せにするからね」という約束だけは守れたと思う。
来年こそは、福ちゃんと大川さんに会いに行きたいと思っている。必ず・・・
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リマ
ちょっと起きてよ〜
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手ぇつないで〜
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