2017年 CAT'S EYES & CAT'S HANDS 
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2017年8月6日 日曜日



蒸し暑い。

台風が近づいて来ているせいだろうか。



それでも暑さは西の方がずっと激しいみたいだ。

関西でも九州でも、体温以上の暑さが続いているらしい。

横浜程度で「暑い」などとホザいては恥かしい。



しかしこの気候で庭は藪蚊天国、いや、地獄だな。

ペロ
ペロ    地獄なんて大袈裟だよね
Aug. 6 ,  2017

ペロ
ペロ    ホントの地獄なんて知らないくせに
Aug. 6 ,  2017


言ってくれるじゃん、ペロ君。

そうよ、ママなんかただの甘ちゃんで、本当の地獄なんて知らない。

ただ幸運にも災害で家を失う事も無く、戦争で爆弾に晒される事も無く、好きなモノを食べてのうのうと生きているんだよね。

でも、だからこそ、何か出来る事をしようとして来た訳さ。

ペロ君を家に迎えたのだって、そのひとつだよ。



な~んてね、恩に着せているんじゃないからね。

幸せを貰ったのはママたちであって、君達のお陰で良い人生になったよ。

有り難う。



そんなペロ君が、あの晩、怯えていたね。

ペリーが突然おかしくなったあの晩。



何が起きたのだろう。

今もって解らない。

ペリーが死に掛け、ペロが怯えてソファの裏に隠れてしまった。

その事実だけが残った。



みんなが無事な今日のこの時が、永遠に続いてくれる事を夢に見ている。

叶わない夢。

それでも願わずにいらりょうか。


今日は8月6日、1945年の今日、広島に原爆が投下された。





終戦記念日も近いし、この時期、戦争に関する番組が増える。

今まで知られていなかった戦時中・戦後には秘められていた事実が、最近になってようやく語られるようになって、私達がそのほんの一部分を知る事がある。

昨夜も、こんな番組を偶然観た。

【ETV特集 「告白~満蒙開拓団の女たち~」】



それは、こういう内容だ。



8月9日は長崎に原爆が落とされた日であると同時に、旧ソビエトが日ソ不可侵条約を破って満州、38度線以北の朝鮮、南サハリン、千島列島に侵攻した日でもあった。

ソビエト軍が「満州」に侵攻したとき、入植していた満蒙開拓団の日本人を守ってくれるはずの「無敵100万人」関東軍はいなかった。

主要な部隊のほとんどが、東南アジアや太平洋戦線に送り込まれていたからだ。



その事を知らなかった日本人入植者たちは、大混乱に陥った。そこへソビエト軍が無差別攻撃をした。

必死で逃げる日本人入植者たちの敵はソビエト軍だけではなかった。日本人入植者に土地を強奪され、小作人として日本人に殴られながら畑を耕していた中国人から報復されたのだ。

秩序が崩壊した状況下、集団自決をする日本人開拓団が相次ぐ。沖縄戦の集団自決が「満州」でも再現されたのだ。

 
 
そんな中、岐阜県出身の黒川開拓団650人は奇跡的にほぼ全員が帰国を果たした。

しかし、黒川開拓団の生存者たちはなぜ帰国できたのか、一切語らずに生きてきた。



70以上年が経ち、90歳代になった黒川開拓団の生存者たちが語り始めた。ソビエト軍に若い未婚の女性を「差し出した」ことによって生存できたと言うのだ。
 
侵攻してきたソビエト軍に、黒川開拓団は保護を懇願した。

ソビエト軍は保護をする条件として、「若くて美しい女を抱かせろ」と言ったのだ。

生き延びる為、このとんでもない条件を飲まざるをなかった開拓団。

未婚の15人の女性を差し出し、女性たちはソビエト軍基地に設けられた「接待所」で昼夜を問わず、ソビエト軍将兵を「接待」させられた。

そこはレイプ収容所に他ならなかった。



帰国の途上では、中国国内で起きていた内戦の影響で橋を落とされた川が渡れず、渡し船に乗せて貰う為には、再び少女たちを船頭たちに差し出した。

少女たちは、みんなの命を助ける為に自分が頑張るのだと自覚していたと言う。



引揚者の女性たちは、この開拓団の少女たちに限らず、妊娠と性病が蔓延していたという。

そして帰国して故郷に戻っても、今度は自国の人達からの差別に遭う。



帰国できた黒川開拓団ではあったけれど、70年間、この事実に関しては沈黙し通した。

人生の終わりを目前にした生存者たちは、女性を犠牲にする事によって生存・帰国できた事実を語り始めた。



顔を出して、淡々と語る老女もいた。

勿論、少しも恥じる必要はない。

けれど、当時はどれ程、故郷で辛い思いをした事だろう。





ショックだった。

私達夫婦は、しばらくこの事を話し合った。



私達だったらどうしただろう。

集団自決しただろうか。

いや、集団自決せずに生き延びるという事は、650人開拓団の総意で決めた事なのだ。



私が「接待」を強要される未婚の娘だったとしたら?

私達に娘がいて、差し出さなければならない親の立場だったとしたら?

或いは私がソビエト軍の兵士の立場だったとしたら?

もし私が・・・と考え始めると、幾らでも可能性は考えられた。



私がもしヒトラーだったとしたら?

私が収容所に送られたユダヤ人だったなら?

私が、保護を必要とする民間人を守る事も出来なかった関東軍の司令官だったなら?

私がA級戦犯だったら?

或いは私が戦犯を裁く判事の一人だったとしたら?



その可能性が無かったとは絶対に言えないのだ。



戦争が終わってから生まれた私達ではあるけれど、私達はかつて日本が犯した過ちを決して忘れてはならない。

仮にやむを得ない理由や経緯があったにせよ、日本は他国に侵略した事だけは事実なのだ。

私達は簡単に加害者にもなり得るのだという事、私たちの日本や家族を守る為に尊い命を落とした兵隊さんたちがいた事、そして日本人も他国の民間人をたくさん殺戮して来た史実を。






この番組で語られた辛い悲劇は、もっと多くの日本人が知るべき過去の歴史の一部だ。

これはほんの一例であって、同様の悲劇は山ほどあるのだ。



繰り返して言うが、日本人だけが被害者ではない。

日本人が加害者になった事例は歴史も山ほどあるのだ。

そしてレイプや被爆の被害者たちを差別するのは、同胞であるはずの私達なのだという事も忘れてはならない。



いや、私は決して人を差別などしないと言いたい。

だけど差別をする心というのは、ひとつ間違えば自分が差別される側になりかねないという事を無意識のうちに感じ取っていて、そこに陥る事を避ける為にこそ、差別する側に回るのだ。

これは苛めの仕組みと同じ狡さ、弱さに起因している、残念ながら人の心が自然と向かってしまう在り方なのだ。

日本人だけじゃない、どこの国にも、この差別と苛め、スケープゴートを必要とする人間の心の弱さは存在している。



その人の心の弱さ・狡さが、いつの時代だろうと差別や苛めを生む。

自分が加害者にもなり得るのだという事を、決して忘れてはいけない。

その自覚のない者の心の中からは、差別はなくせない。





8月10日に再放映されるようだ。

まだご覧になっていない方は、是非お見逃しなく。

Eテレ 2017年8月10日(木) 午前0時(60分)から


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著者:深谷かほる




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