2018年2月21日 水曜日 |
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昨日はあまりにも暖かくて春が来たかのようだったのに、今日はまた真冬の寒さが戻りつつあるようだ。
メラちゃん、貴女の弟たちは(ビルもプティも)先に先に逝ってしまったけど、貴女にはラブラブなチャイがいて良かったね。
いつまでも続きますように、二人(猫カップルですが)の幸せな日々が。
さて、今日から6月に始まった我が家の地獄について書く。
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2015年のメラ ふん、大袈裟なんだから
Feb. 21 , 2017
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大袈裟じゃありません、メラちゃん。
貴女たちも同じ思いをすれば解りますって。
いや、猫たちには決してそんな地獄のような思いはさせない。
清潔、安全、安心、快適、そういうものを与えられてこそ、家猫として拘束する価値がある。
それが私たち夫婦が、試行錯誤しながら進化させて来た猫との暮らし方なんだ。
ともあれ、続きを行きますかね。
昨年の6月中旬、私は還暦を迎えた。
それだけでも結構なショックだった。
でも仕方ない、誰もが平等に歳をとるのだから。
私にも若い頃があったのだ。
還暦とは何の関係もないのだけれど、その直後、ある朝突然、不思議な虫刺されを発見した。
左の肩口から少し下がった胸元に、ポツリと。
それは激しい痒みを伴っていて、咄嗟に「梅雨時だしダニが増えたのかな?」と思った。
1年おきくらいに、梅雨時に1か所くらいダニに刺される。
喘息もあるからマメに拭き掃除をし、掃除機はかなり念入りに掛けている。
そして寝具は枕を含めて全て、衣服は下着からコートに至るまで、そして埃や花粉の付着し易いカーテンも、猫のベッドや毛布、マットも、いずれも実に頻繁に洗濯している。
余りにも頻繁に洗うから、生地が傷むのが早いとなると困る。
だから気軽に捨てられない物は出来るだけ手洗いして、長く愛用する。
水仕事にはこだわりがあるんだ、私。
つまり選択と掃除には手抜きをしないでいるからこそ、ダニには数年に1度刺されるか刺されないか程度で済んでいるのだろう。
藪蚊にはガンガン刺されるけどね。
問題はむしろダニの死骸や糞による喘息の方であって、刺されて痒いという事ではなかったんだ。
しかし昨年はまったく違っていた。
初日に発見したのは一か所だったものの、更に翌日目覚めると、反対側の肩口付近に何か所も刺され痕があった。
最初、チャドクガにやられたのかと思った位、
集中してたくさんの刺され痕が存在していた。
手の平くらいの面積に30か所くらいかな。
それは物凄い痒さで、掻きむしらずにいられない。
痒さと掻く事との因果関係も良く知っているので、出来るだけ掻かずに、「キンカン」を繰り返し塗ってしのごうとした。
だけど全く効果なし。
以前使って虫刺されの痒み止めに一番効果があったのは、やはりステロイド入りのメンソールタイプのジェルだったから、ドラッグストアで探して大量に買い込んだ。
しかしこれも効果が感じられない。
ネズミがゾロゾロと海岸の崖から飛び降りて自殺したのは、もしかしたらダニなどの虫刺されによる痒さのせいではないかと思った。
私も崖があれば飛び降りたくなるほど耐え難く痒い。
刺され痕は日々どんどん増えていき、肩や胸、首、腕、腹、足・・・と、殆ど全身にわたって刺され、刺されないのは左手の甲と顔くらいのものだった。
眠れないほどの激しい痒み。
あまりの痒さとその刺され痕の多さに、ここでふと「疥癬」を疑った。
野良猫を保護した事のある方はご存知の方も多いだろうけど、疥癬は大変にタチが悪く、激しく痒いもののようだ。
うちの亡きカイルも、保護した時には全身が脱毛する程に疥癬に冒されていた。
あまりの痒さに食欲も失せ、痩せ細る野良猫やタヌキが多いのだ。
実は何を隠そう、うちの夫は20代の頃に疥癬を経験している。
インドネシアに出張した際に、ホテルの寝具で感染したらしい。
最初に受診した皮膚科では疥癬と診断がつかずに、入浴禁止のタンパク制限などを言い渡されて、すっかり悪化してしまった。
それから大学病院の皮膚科でようやく疥癬と診断されて、治療がなされた。
劇的に効果があり、完治して早や40年。
おそらく当時まだ研究途上だった疥癬治療薬を試験的に使ったのかも知れないと思う。
その際に、医師からの勧めもあり、硫黄の入浴剤も使ったそうで、これは民間療法としてかなり広く知られる疥癬への対処でもある。
さっそく硫黄入浴剤を探し、買い込む。
この時、当時はまだ売られていた「ムトウハップ」が、今では製造も販売もされていない事も知った。
何らかの悪用があって、販売中止となったらしいのだ。
シャワー派の私たち、ゆっくり湯に浸かる事など近年皆無だった。
湯に浸かると疲れが出てしまい、翌日起き上がれなくなってしまうのだ。
しかし藁をも掴む思いで、赤い透明な硫黄の液体を溶かして白濁した湯に、しっかり時間を計りながら浸かる毎日。
兎に角疲れるし、洗い流しても身体も浴室も硫黄臭いのがちょっと嫌だったけど、背に腹は代えられない。
世界中のどこにでも生息するダニが、硫黄のある火口にだけは棲息していないと聞いていた。
それが本当で、もし目に見えないヒゼンダニが私の皮下に潜んでいるのであれば、この硫黄を喰らえ、そしてお陀仏になってくれ・・・と祈る想いで硫黄の薬浴を続けた。
しかしそれでも刺され続けた。
マイクロスコープを買い、シーツや衣類をくまなく観察した。
セロテープを貼って剥がし、患部の皮膚から何か取れないものか、そこから何か発見されないかと、矢も楯もたまらずに調べる。
勿論、同じような事例がないかとネットで探しまわる。
家中の、そして寝具のあらゆる場所から「セロテープ方」で採取したテンプレートを観察し続けた。
ある獣医師のブログに、犬の疥癬をセロテープで剥がし取って検査し、飼い主に見せて納得させた事が書かれてあったので、セロテープも侮れないと思った。
効果的に採取出来るようにと、患部の皮膚を掻き剥がして、そこにセロテープを張って剥がしたりもした。
傷つけようが痛みなど感じなかったし、痛い方が痒いよりもまだマシだった。
しかし疥癬らしきものももダニらしきものも、日々の採取では1匹たりとて発見出来ないのだ。
そして刺され痕は順調に増え続け、全身が悪い病気のように、赤黒い瘢痕だらけになっていくばかりだった。
梅毒か、私、それとも天然痘か?
いや、虫刺されです。
ここでようやく皮膚科を受診する事にした。
この時点ではまだ疥癬を疑っていたし、疥癬だとすれば一気に投薬で解決すると信じていたのだ。
やれやれ、もっと早く受診すれば良かった・・・などと。
しかしそこからが本当の地獄だったというのに、医学は万能だと信じたかった私。
「医は仁術」と信じたかった(大袈裟)のだ。
結論から言えば、数か月の間に4軒も変わった皮膚科のどこでも疥癬とは診断されず、ステロイド軟膏と抗ヒスタミンの飲み薬を処方される繰り返しだったのだ。
この日々に、医者だろうが誰も助けてはくれないのだと悟った。
この虫刺され地獄からはね。
変な言い方だが、いっそ疥癬だったらどんなにか良かっただろう。
そう診断されたならば、イベルメクチンなどの薬の処方をして貰えるのだ。
それが画期的に効く事は、保護猫の疥癬治療で良く知っているし。
ところが、最初の3件の皮膚科などは、かなり強く訴えても皮膚の検査もしてくれない。
ちょっと手の指の股を見ては、これは疥癬とは違いますねえ・・・と言うだけだった。
そしてお決まりのステロイドの塗り薬・飲み薬の処方だ。
野良猫の為の疥癬治療薬を飲んでしまおうかと思い詰めた事すらあった。
勿論飲みませんでしたけどね。
この間、医者だけを頼っていた訳ではない。
当然だ。
様々な種類のダニの繁殖の可能性も考えた。
ダニ退治は高温加熱しか無いと言われているので、寝具や衣類を可能な限り熱湯浸けにしてから洗濯し、コインランドリーの大型高温乾燥機で熱を掛ける。
昔、妹にプレゼントされたダブルサイズの羽毛敷きパッドも、毎日のようにコインランドリーで洗ってから、その後120分も熱を掛けた。
お陰で毎日フカフカで気持ち良い。
しかし、それでも毎日刺され続ける。
もう発狂するか死んでしまいたかった。
何が刺しているんだ?
ランドリー通いの時間と、費用も毎日3000円ずつくらい掛かった。
心身も懐具合もズタズタだった。
もうコインランドリーには通いきれない、行くだけでは済まない、お目当ての機械が空いていなければ待つ時間もあるのだ。
それでも3か月は通ったよ。
最初は毎日、やがて週に2度ずつ。
同時に、自宅で熱湯浸し出来る大きさのものは毎日それをしてから洗濯していた。
でも限界だ、乾燥機を買おう。
今家にある乾燥機はとっくに壊れてしまっていて、物入になっていた。
そして買い替えの必要性を、この時まで感じた事はなかったのだ。
大型の衣類乾燥機を探したけれど、業務用の25キロ要旅游の乾燥機など、家からして工事しないと取り付けられない。
しかも工事も含めると100万円では足りない。
そこまでしたらコインランドリーを開業した方がいいね。
家庭用の衣類乾燥機は、現時点では一番大きくても容量6キロまでだ。
泣く泣く、コインランドリーの大型機械でないと乾燥させられないボリュームのある羽毛敷きパッドは廃棄した。
ごめんね、妹。
いいよね、四半世紀も愛用したんだもの。
届いた乾燥機は、普通のダブルの敷きパッドでも入れられる。
よしよし。
敷きパッドと毛布は、今でも毎日この機械で熱を掛けている。
そしてアイロンとスチーム掃除機も大活躍している。
いや、大活躍しているのは私たちかな。
アイロンを掛けられる材質のものは全て、アイロンの熱で見えざる敵を殺すつもりで掛け続けている。
綿のシーツは毎日洗い、高温でアイロン掛けをする。
古いアイロンは間もなく壊れ、2千円ほどの安いもの(ヤマダ電機オリジナルスチームアイロンだけど、なかなか良い製品だ)を2台買った。
何故2台か?
人間は二人いるのだから、二人で掛けなきゃ時間が勿体ない。
そして一人ではとても手が足りない。
シーツもタオルも、Tシャツもパンツもズボンも、兎に角、溶けない素材ならば何でもアイロンを掛けるのだから。
このあたりで既に、そこまで神経質にならなくても良いのに、そこまで気にするから余計に症状を悪くしているんじゃないの?などと感じた人もきっといると思う。
医者ですら、そういう無神経な事を言うやつはいたのだから。
あのね、そんな生易しい症状ではないのです。
証拠の刺され痕をお見せしたいけど、グロテスクなのと、お見せ出来ない部分も多いので諦めた。
うす黒い水玉模様の人間が出来上がったと思って頂いて結構です。
痒みは1つの刺され痕につき、2~3ヶ月もしつこく続く。
体質の違いにもよるかも知れないけれど、ステロイドも全然効かない。
つい掻き壊して何度もカサブタが取れるが、そのカサブタがとても深いところまで及んでいた。
ダニにもブヨ(ブト?)にも毛虫にも刺された経験があるけど、最悪の場合でもステロイド塗って抗ヒスタミン飲んだらケロッと治ってしまった。
こんなに酷い刺され方と痒さはいまだかつて経験が無い。
話は外れるが、この時期に色々と調べていた時に、フランス革命で捕らえられ獄死したルイ17世(マリーアントワネットの長男)が、看守たちの暴行にも、不潔な牢語句で掃除もされず、ベッドに棲む体中を刺す大量の虫にも耐えていた事を知った。
わずか10歳ほどの子供が、どれほど辛かったろうと、自分の痒さと寝不足の辛さも相まって涙したものだ。
最初の皮膚科の医者など、全くこちらの症状には関心が無いようで、ダニをゼロにする事なんか出来ませんよと言う。
誰がゼロにしたいと言ったよ。
出来るなら是非したいけど、出来ない事くらい知っとるわ。
このクソ医者ではダメだと思い、その日限りで行くのをやめて別の皮膚科に移った。
でも、2軒目3軒目の皮膚科では親身にはなってくれたものの、やっぱり検査もせずに、これは疥癬ではありませんねと言うばかり。
4軒目の、私の別の持病でお世話になっている総合病院の皮膚科も初めて受診したのだが、最初に担当してくれた女医さんは余り熱心ではなかった。
たかが虫刺されなのかな。
だから3軒目までの皮膚科の先生とほぼ同じ反応、診断、処方だけであったのだが、もうこれ以上は病院を変える元気もなかった。
そして、何度目かの受診日、たまたまその先生がいなくて、別の女医さんが対応してくれた。
最初から説明するのはウンザリしたけど、仕方ない。
しかし今までと違い、この先生は丁寧に皮膚を削り取り、直ぐに検査してくれた。
結果、疥癬の虫体も卵も発見されないと言う。
そもそも疥癬とはかなり違う状態だと、やはり同じ事を言うのだ。
がっくり。
私はもうどんな副作用があろうとかまわないので、イベルメクチン製剤を飲みたかったんだけど、疥癬でもないのにそれは処方出来ませんと言われる。
それはそうだろうと、冷静に考えたら解る。
でもそれ程に切羽詰まっているのだ、私は。
これ以上刺され続けたら死んだ方がマシですと訴える。
しかしやはり疥癬ではなかったようだ。
それは認めます。
そもそも疥癬を持ち込む為の、その感染源となるものとの接触も無いのだ。
ずっと家に居て殆ど誰とも会わない。
出掛けるのはスーパーと100円ショップくらいしかない。
そんな日々の出来事だったのだから。
そうしたら、この女医さんは今までの皮膚科医とは別の事を言い始めた。
先ずは動物病院で猫ちゃんたちの皮膚や毛を調べて貰い、それから消去法でひとつずつ原因をつぶして行こうと言う。
猫が原因だと思われたくないし、私の多頭飼育の経緯を理解して貰えるとはとても思えない。
いちいちこういう事を説明すると、長くなる上に虚しい事が多いので、猫については何も言わなかったんだ、他の皮膚科では。
でも、この女医さんはペットの有無を訊いて来た。
訊かれれば正直に答える。
なるほど、私が医師でも、行き詰ったらそれを疑うだろうな。
しかし・・・
猫がたくさんいると言えば、必ずノミを疑われるとは思っていた。
医師だけではない、猫飼いさんたちからだろうが、そう誤解される場合があるだろうから、いちいちこうして説明したくなくて黙っていたんだ。
でも、誰よりも神経質にノミや寄生虫には対処して来たはずだ、私たちは。
保護した際にノミ駆除、苦虫は徹底してやっているし、完全室内飼いは最低条件なので外には一歩も出さない。
しかし、それでもノミを持ち込んだ苦い経験があったので、今でも毎年、春から3度ほど、ノミがいなくてもフロントラインをしている。
健康診断時には、皮膚や毛の状態も電子顕微鏡で見て戴いている。
今回の虫刺されは、ノミではないと断言できる。
こうちゃんが過去にノミに刺された時というのは、足のスネが殆どだった。
庭の人工芝に落ちていたノミの卵が、歩き回る刺激によって孵化すると、足のスネあたりまで飛び上がれるらしいのだ。
しかし今回の姿なき虫による吸血は、私の胸から始まって、殆どが肩や胸に集中している。
それにノミの刺され痕では、ここまでは酷くならない。
確かに蚊に刺された時よりは酷いが、それでも何か月も続く痒みと汚い痕など残らなかった。
今回のエイリアンによる被害は、もの凄く醜くて深い刺され痕が何か月も消えずに存在しているのだ。
兎に角、最後の頼みの綱と決めた医者との信頼関係をより深く築く為にも、決して不潔な状況で猫を飼育したりしていない事を納得して頂く為にも、改めて猫の検査もして報告した。
しかし、猫たちはやっぱりシロだった。
いや、猫たちにノミや疥癬、シラミなんかいないのは当然だ。
保護した時に、ちゃんと必要充分なケアをしてから家に入れて、その後も観察とケアを欠かしていないんだもの。
むしろ私たち人間よりも猫たちが清潔で快適に暮らせるようにと、その為の努力の日々なんだから。
それに1階の猫部屋の猫たちも、2階で私と同部屋で暮らしているジャムもアンちゃんも全く痒がっていないのだ。
猫の疥癬やノミではあり得ないだろう。
猫だって痒いのは我慢しないよ。
さて、端から疥癬ではないだろうと言っていた女医さんは、次に「トコジラミ」ではないかと言い始めた。
トコジラミ?
初めて聞く虫の名だった。
先生は、分厚い虫の図鑑を見せてくれた。
ここからは、トコジラミについて頭が一杯の日々となる。
それはそれで長くなるので、また明日に改めて続ける。
しかしまあ唯一の救いは、猫たちには被害が無い事だろう。
こうちゃんの被害も私の1/10程度で、実に少ない。
どうなっているのだ。
ジャムも痒がったりむずがったりしないまま、10月にあっさり死んでしまった。
そうか、こんな騒動の中でジャムを失った事は、もしかしたら救いだったのかも知れないな・・・と今では思う。
何事も無く平穏であったなら、不幸が「ジャムの死」しかなかったならば、それはそれで辛過ぎるだろう。
他に気が狂いそうな問題があったからこそ、これでもまだ哀しみが紛れていたのだ。
では、明日は「トコジラミ」について知り得た事を書こう。
おぞましいよ~とっても。
お楽しみに。
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夜廻り猫 1,2巻
著者:深谷かほる |
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