殺しのドレス-DRESSED TO KILL-

ヒチコックからの連想で、この作品を選ぶ。ヒチコック、それも「サイコ」の影響が強い作品。

監督ブライアン・デ・パルマは、近年では「スネーク・アイズ」や「ミッション・インポシブル」などの話題作が目白押しだが、この作品の当時はまだ日本ではあまり名を知られていなかったように思う。「キャリー」の監督という程度であったはずだ。

ある日ニットデザイナーの叔父と一緒に渋谷でオールナイトで観た。ストーリーも面白いし、上手い演出だと思った。



かなりの歳だろうに、アンジー・ディキンソンが露出過多で出演している。往年の「リオ・ブラボー」での下着姿といい、この女優は身体に自信があったようだ。

しかしすぐに殺されてしまう。シャワーを浴びるシーンや、ナイフで何度も刺されるシーンは、どうしても「サイコ」を思い浮かべてしまう。



演出が上手いと言ったのは、何よりそのテンポの計算である。冒頭はやたらとゆっくりと時間が流れる。美術館でのシーンなど、正直言って退屈してしまった。しかし、それは計算されたテンポであったのだ。アダージョからプレストへ。見事な緩急の使い分けである。



これもサスペンスものゆえストーリーには触れずにおくが、マイケル・ケインは相変わらず巧い。何が怖いって、幽霊や悪魔より生きた精神異常者が一番怖い。これは「サスペリア2」でも感じた事だ。昨今の恐るべき事件の数々も、人間の中に潜む狂気がコントロール出来ないが故の犯罪だ。人間が一番怖い。そして罪深い。

デ・パルマの奥さんが出演していて、それが母親を殺した犯人を捜す少年に協力する役柄のナンシー・アレン。はすっぱな感じの女優なのだが、大変洒落ている。鮮やかな青のフェイク・ファーの着こなしなど、金髪の白人女性ならでは。安っぽいけどオシャレだ。

日本で例えるなら、飯島愛か飯島直子といったところか。教養はないが(失礼)わるい娘じゃないという感じ。

2重のドンデン返しが用意されていて、グイグイと一気に観させる力を持つ演出である。

今更、デ・パルマを誉めたって、知ってる人は「何を今頃」と笑うだろうが、ヒチコックの亜流で終わらない独自のねちっこさを持った良い監督である事は確かだろう。

この後、「スカーフェイス」でのアル・パチーノや「アンタッチャブル」でのロバート・デ・ニーロ、「スネーク・アイズ」でのニコラス・ケイジなど、イタリア系の俳優を癖の強い役柄で使って成功している(させている?)。

また「ボディ・ダブル」で使ったサウンドトラックは、フランキー・ゴウズ・トゥー・ハリウッドの「リラックス」であるところなど、私には堪らないのだ。

監督 ブライアン・デ・パルマ
1980年
アメリカ映画


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