リオ・ブラボー -RIO BRAVO-

大好きな西部劇のひとつなのでいずれは書こうと思っていたが、思いがけずTVで再放映してくれたので、慌てて書いている。印象が新たなうちに。

ジョン・ウェインの西部劇と言えば「赤い河」や「リオ・グランデの砦」が好きなのだが、娯楽性の強い「リオ・ブラボー」も楽しい。

ジョン・ウェインのいつもの味が出ているのは当然として、競演のディーン・マーティンの歌声も聞ける。

トランペットとギターが哀愁を帯びたメロディーを奏でる「皆殺しの歌」も名曲だが、マーティンの為の主題歌「ライフルと愛馬」が素晴らしい。

当時は当然ヒットしたようだが、私は2歳だったからよく知らないのだ。ちなみに夫は9歳。

この人の声は、何万人に一人という声ではないだろうか。

「月の輝く夜に」でもエンディングでディーン・マーティンの歌が流れる。それだけで、何とも軽妙で洒落のめした雰囲気が出る。

「リオ・ブラボー」には歌手のリッキー・ネルソンも出ており唄いもするが、ディーン・マーティンと比べたら可哀想になる。アイドル歌手とエンターテイナーの差は歴然だ。

ディーン・マーティンがジェリィ・ルイスとコンビを解消して独り立ちした頃の作品であり、アル中の保安官助手という重要な役どころで演技派としての一面を見せている。

それまで手が震えて拳銃も使えない状態だったのが、「皆殺しの歌」の旋律を聴いているうちに、その震えが止まる。

これは、一旦グラスに注いだ酒を酒瓶に戻し、「一滴もこぼさなかった」と言う場面。


ストーリイはシンプルなもので、ジョン・ウェイン扮する保安官ジョン・T・チャンスと助手の3人(ジュード役にディーン・マーティン、コロラド役にリッキー・ネルソン、そしてとっつぁんはお馴染みウォルター・ブレナン)で、悪党一味をやっつけるというもの。

そこにチャンスを慕う酒場の女アンジー・ディキンソンがからみはするものの、たいそう男っぽい仕上がりになっている。いかにもハワード・ホークス作品らしく、ジョン・ウェインは豪放磊落なタイプの男を演じている。


ジョン・ウェインは共演者に花を持たせて一歩退いた演技をしつつ、その実ちゃんとカッコいいところをさらっている・・・という作品が多い。

この映画もそうだし、「リバティ・バランスを撃った男」でもジェームス・スチュアートが主役のようで、かっこよさは独り占めしていた。

この作品の時、ジョン・ウェインは52歳・・・渋みも大人の男の分別も感じられ、脂の乗った一番良い年代ではないだろうか。


最後の撃ち合いでダイナマイトが重要な武器となるが、ダイナマイトの存在も無理のないようちゃんと最初に伏線が張ってあったのに今夜初めて気付いた。

シナリオの上手さに改めて感心する。





無骨な保安官チャンスにも、プロポーズの言葉の代わりに「そんな格好で人前に出たら逮捕するぞ」と言わせている。

「何の罪で逮捕するつもり?」と女に聞かれると「未来の亭主以外に肌を見せた罪だ」と続く。

但し、この科白は吹き替えなので、原語でどう言っていたのかは解らない。字幕版で確かめたいものだ。

女の言う通り、間違っても「愛してる」などとは言わないタイプの男を、どの作品に於いてもジョン・ウェインは演じ続けた。



脚本のジュールス・ファースマンとリー・ブラケットは、「三つ数えろ」(1946年製作)でもハワード・ホークスと組んでいるし、ファースマンは古いところでは「モロッコ」(1930年製作)でも脚本を手がけている。他にも私の好きな作品の脚本が彼なので、よく聞いた名前なのだ。その作品とは・・・また別のページでご紹介します。

脚本 ジュールス・ファースマン
    リー・ブラケット
監督 ハワード・ホークス
製作 ハワード・ホークス
1959年
アメリカ映画


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