《CAT'S EYES & CAT'S HANDS》
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)

1. FIPについての基礎知識

【ウイルス】
ネコ伝染性腹膜炎は、コロナウイルス(註1)の感染症で、このコロナウイルスは、人や犬ではただ急性の下痢を起こす位で何でもないウイルスです。しかしネコのコロナウイルスは問題の少ない消化器タイプと、問題の多い腹膜炎タイプとあり、診断も症状も複雑になっています。
註1  コロナウイルス自体は弱いもので、ほとんどの動物に存在しています。しかし他のウイルスに感染したり、激しいストレスなどによって猫の免疫力低下すると、体内でコロナウイルスが突然変異を起こし『猫伝染性腹膜炎ウイルス』 に変化するといわれています。

【症状】
慢性の全身性の血管炎を起こし、それを中心に全身に様々な病変を起こします。目立つ症状としては腹水や胸水で、このように水が溜まるのをウエットタイプといいます。水が溜まらずに、発熱や前眼房炎、脳病変だけを起こすのをドライタイプといい、症状が軽ければ見逃してしまいます。

つまり病気とは言えない位の軽いFIPがたくさんあります。しかしハッキリと診断され症状が出たものについては、予後は良いものではありません。

慢性疾患で発熱や腹水を繰り返しますが、症状の少ない時は食欲は落ちずに痩せが目立つのが特徴です。

診断は、血液の中の抗体測定で確認しますが、抗体は症状がある時には高く、いつも一定ではありません。現在使われている抗体測定方法は、ネコ腸炎コロナウイルスが影響していて、診断はその点を考慮しなければなりません。

【予防】
猫が集団で生活している場所には必ずといってよいほど腸コロナウイルスは蔓延しています。したがって多くの猫が腸コロナウイルスに感染するのですが、それだけでは発病しないのです。感染しても90%以上の猫はウイルスを自分の力で殺してしまい、いつの間にか感染は終わってしまうのです。

それではなぜ一部の猫が発病するのかというと、これが猫の体内でのウイルスの突然変異なのです。多分ストレスや他のウイルス感染、その他のファクターが一緒になって突然変異が起こり、その上ウイルスに対する激しいアレルギー反応が起こって発病するのだと考えられています。したがって、いかに突然変異を起こさせないか、いかに免疫系のバランスの崩れであるアレルギー反応を起こさせないか、これが今後の予防の課題です。
【治療と対策】
発病した猫の治療は本当に有効な方法がまだ見つかっていないので、症状を和らげる対症療法が主体となります。というのも猫の体内のウイルス自体を殺す薬はないし、またどのようにして発病するのか不明な点が多いからです。したがって病気の進行を遅らせ、猫の不快感をある程度改善する効果は期待できますが、完治の為の治療ではないことを理解しなければなりません。

獣医師は全身状態を評価した上で治療が可能かどうか判断します。現在ではインターフェロンによる治療も試みられています。現在行われているFIP抗体検査は、本当にFIPウイルスに感染しているかどうかを検査するものではありません。単にコロナウイルスと接触があったかどうかがわかるだけのものです。高い値がずっと続いているのはもちろんよいことではありませんが、健康状態はよく、抗体が下がって行く傾向がある場合には、コロナウイルスの感染が終結に向かっているとも考えることが可能です。
2. FIPのネコを飼っている人達の体験とメッセージ

  case 1:FIPのさくらちゃんのケース

  case 2:FIPのもも&にゃあこちゃんのケース NEW!


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