さよならサンちゃん
(加藤先生ご夫妻と)

Jul.15,2001

昨夜も舅の徘徊の後で、やっと寝たのが3時半。疲れ果てていたばすなのだが、おかしな夢を見て5時に目が醒める。氷水を1杯飲んで洗濯をしてからまた少し横になるが、今日はサンちゃんの旅立ちだと思うと緊張して眠れない。しかし昨日のようにフラフラしても困るので、横になって身体を休める事にした。お腹が空いて堪らず、起きあがるや否や食事の支度をしてしまった。育ち盛りだからな。

予定の時刻、さりりんさんに頂いたお酒を1本と月光仮面に頂いたキャリーを持って出発。既に朝から旱々照りだ。サンちゃんのいる病院は、車で10分もかからない。先生は道に出て待っていてくれた。ペットの美容室を病院の隣で営んでいる先生の奥様も来てくれていた。お二人とサンちゃんのお別れの撮影をする。奥様はいつもにこやかなのだが、先生のあんな嬉しそうな表情は8年もつき合っていて初めて見た気がする。

いざサンちゃんをキャリーに入れて、車で羽田に向う。サンちゃんは凄い甘ったれだ。車が初めてなのかも知れないし、我が儘な家猫たちはいずれも車に乗せると怖がって鳴くものだが、サンちゃんはその中でも筆頭かと思う位に甘ったれ鳴きをして暴れた。通常はガマンさせるのだが、目が見えないと余計に不安だろうと思って、仕方なくキャリーから出して抱っこして行く事にした。まあ凄い甘え方・・・頭突きはするわスリスリとキスするわ肩には登ってしまうわ、見えない目で窓の外を眺めているかのようにキョロキョロするわ、車の中は探検したがるわ、しっかりと押さえて抱いているのはなかなかに骨が折れた。

やはりどの猫もそうだが、サンちゃんも停車していると少し落ち着く。道が意外と混んでいて、信号待ちが時々あるのが却って救いだった。一番怖がったのが、羽田空港エリアに入ってからの長いトンネルだった。道中ずーっと「サンちゃん」と呼びかけていた。それだけでは芸がないので、色々と説明してあげた。「サンちゃん!サンちゃんは広島の子になるんだよ。いいねえ。広島は牡蠣が美味しいよ。サンちゃんが羨ましいよ。広島には安芸の宮島があってね、鹿がいっぱいいるんだよ。サンちゃんは鹿を知らないだろうね。瀬戸内の魚は美味しいそうだよ。いいねえ、サンちゃんは。羨ましいねえ。」こうちゃんは運転しながら笑っている。失礼しちゃうよ、こっちは真剣なのに。「ほうら、サンちゃん、もう羽田に着くよ。羽田はヒコーキがいっぱいあるよ。羽田沖には日航機が墜落したんだよ。だけど今日はJASだから大丈夫だよ。良かったねぇ。(猫に言って聞かせている冗談なのだから、日航関係の人はマジで怒らないでください)」

サンちゃんは「サンちゃん!」と言うたびに鳴いて答える。とても細い顎だ。口の端を私の口元に擦り付けて、しきりに匂い付けしていた。頭突きの力も強い。尻尾は見事な縞で、ちえさんの『蛇穴』に載せて頂いた写真よりもずっと長かった。歯も綺麗だし、口臭のない健康な若猫だった。保護したエサやりの方は、サンちゃんの誕生日も知っていた。平成12年5月10日、本名はサンシロウだそうだ。先生がその人には連絡してくれて、とても喜んでくれていたそうだ。これからも可哀想な子を保護してあげて欲しいから、その人にとってもサンちゃんは希望の星だと思う。

カウンターでいざ預けてしまうと、何だか悲しくなってきた。ギリギリまでは傍にいさせてくれたが、「サンちゃん」と呼びかけるとちゃんと鳴いて返事する。今日は珍しく他の動物客もいた。デブのビーグルで、キャンキャンとうるさい。吠えるたびに私が露骨に眉をしかめるので、飼い主と思しきオジサンが「こら、静かにしろ!」と叱っていた。サンちゃんは結構元気にキャリーをガリガリやっていたので、「サンちゃん、良い子にしていないとワンコに食われちゃうよ!」と脅してやる。ワンコにも飼い主にも、そしてサンちゃんにも失礼だと言って本気で怒らないでよね。うちではいつもそう言って、うちの猫どもにも叱っているのだ。何の効き目もありゃしないけど。

帰り道も混んでいた。スーパーに寄って、食べるものを仕入れて帰る。駐車場を出ようとしたら、隣に下手っぴいが何度も切り返して停めていたのだが、「バック駐車禁止」とある場所の、しかも小型車専用の場所に普通車が入ったので、こうちゃんに怒られていた。バカタレ。決まり事は守れ。

さて、昨日の朝は捕獲出来なかったチロちゃんだが、昨夜無事捕獲器に入ったとの連絡があり、朝一番でれいさん・ゲンちゃんご夫婦が病院に連れて行ってくれた。良かった!お二人はチロちゃんベイビーズを最初のワクチンにも連れて行き、夕方には我が家にケージも取りに来て、本当に大移動の日曜日だ。お疲れさま。

我が家も何だか気が抜けてくたくた。ジャムがクンクンと私を嗅ぎまわり、知らない匂いが付いていると言わんばかりに興奮しているので、全部脱いで洗濯。さっさと洗わないと、今度は洗濯籠にミュウが飛び込んでクンクンしていた。お前達はまったく・・・ワンコに食わせちゃうぞ!

ちえさんの家にも、新しい仔猫のリリンちぉんが到着したとメールが入った。バル君・メル君の反応はどうだろう?あとで日記を見に行かなくちゃ。ちえさんも乾杯の用意をしてくれているみたい。さあ、これから夜8時の乾杯に備えて、肴の用意でもしよう。福岡のおニャアニャンはワインで、甲府のみゆきさんも大阪のあけみさんも、埼玉の裕美ちゃんも、アメリカの猫ばあばも、獣医の加藤先生も、そして勿論この乾杯プランの仕掛け人・さりりんさんも準備してくれているはずだ。顔を合わせて飲みたいけれど、今はこれでガマン。

お約束の乾杯!サンちゃん、おめでとう。幸せになるんだよ。

お酒は大変美味しい生酒でした。味わいの濃い、香りの男っぽい、それでいて舌に滑らかな美味い酒です。ごちそうさま、さりりんさん。肴はとりあえずあり合わせで、大根とホタテのサラダでした。


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