アイン

発作の後

Sep.21,2001

夕食の後、アインがまた発作を起こした。今度の発作はかなりひどくて、息が早くて浅いなどというものではなく、腹と胸にピストンが2つ入っているかのように激しく上下動して見えた。安静時に突然起るのだ。寝ていたベッドから降りたら、もう歩けなかった。ヨタヨタと2〜3歩進んでへたり込み、そこで伸びてしまった。私はみょーこ姉ちゃんと電話中だったのだが急いで切り、しばらくアインの胸に手を当てながら声をかけ続ける。アインはよほど苦しかったのだろう、その場でウンコを漏らしてしまった。それを見た時、今回はもう駄目かと思った。

みょーこ姉ちゃんに教えて貰って、時間外で自宅に戻って居た加藤先生に電話する。先生は、兎に角往診してくれる事になった。病院までは連れて来られるかと尋かれたので、それは無理だと答える。何でもない時ですら、車に乗せたら途端にストレスで下痢が始まるような子だもの。先生を待っている間、息が苦しいのか、何度か場所を変えながらじっと耐えている様子。なかなかポンプの激しい動きが治まらない。前回の発作とは比べモノにならない程、見るからに苦しそうだ。舌も出て、ヨダレも垂れていた。鼻に横筋が入り、ただでさえ短い鼻梁を一層短くして荒い息をしていた。死なないで、頑張って生きて、と繰り返し言い続ける。ママがついているよ、安心して、がんばって、アインちゃん、大丈夫だよ・・・・・

先生は、心電図の機械や注射、そしてニトロなどを持って来てくれた。ちょうど発作が始まってから1時間ほど経っていた。強い発作は大部鎮まってきていたものの、かなり呼吸も心拍数も多い。心電図をなかなかおとなしく撮らせないのだが、やっと結果が出せた限りでは、心房の心筋症であろうという事だった。色々と説明を受け、今後の対処の方法を検討する事にした。強い発作の起きた時にどうするか・・・ニトロは舌下錠なので、犬のメス場合は膣に入れると言うが、猫の場合はどこで粘膜に吸収させたら良いのか・・・血管拡張の為に利尿剤を筋肉注射するか・・・いくつかの可能性とその影響(利尿剤を使うと電解質のバランスも狂うが、発作が繰り返されると確実に命を縮めるだろうとも言う。)も説明してくれたのだが、慎重に考えたいので先生もまだ結論を出せずにお帰りになった。

今は普段の呼吸に戻って、ぐったりと寝ている。先生が来るまでは、こうちゃんが手を身体スレスレにかざして、出るかどうか判らない「気」を送り込んでいた。いや、アインを思う気持ちは、「気」も出していたと信じよう。こうちゃん自身は「今、凄いパワーが出ていると思う」と言っておった。きっとその「気」で、ここまで回復したのだろう。先生も、決して正常ではないけれど、随分動けるようになっているね・・・と胸をなで下ろしていた。しかし私は胸が痛む。比喩的表現ではないぞ、ホッとしたら心臓が痛い。ニトロが必要なのは私だと言って先生に笑われる。

色々と書きたい事か゛あったはずなのだが、アインの事だけで頭がいっぱい。ジーコとジャムは末っ子(?)同士で、先生の往診バッグや心電図のコード類で遊ぼうとしたり、ジャムは案の定、心電図のプリント用紙がスルスルと出てくるとじゃれついてメチャクチャにしようとしたし、全部阻まれると怒りにまかせてバッグにパンチしていた。

ゴマは、アインが苦しんでうずくまっている時には心配そうに傍に来てウロウロしていた。そして先生が居る間じゅう、じーっと何か考えているかのような顔でおとなしくしていたのだが、先生もそれを感じるらしく「目の表情が他の子達と違うよね」と言ってくれた。家に来た誰もがゴマに驚くのは、そこの点だ。賢い優しいゴマ。しかしジャムは「こいつは何も考えていなさそうだな」と笑われる。ジャムとジーコは、やっぱり屈託がないのだ。

アインがそう長くは生きられないだろう事は、ちゃんと覚悟しておかなくちゃ駄目だよ・・・とは言われる。覚悟はしているつもりだが、そんなのはつもりだけであって、誰よりもその時にはだらしなく自分を見失いかねない。今日も泣き疲れた。猫の為には幾らでも泣ける。死なれるのは嫌だ。永久に生きて欲しい。バカだと思われるだろうが、自分の命より大切なのだ。

アイン3.4`。利尿剤の分量を割り出す為に、先生は体重計まで持参して来てくれた。あの体重計は、是非うちにも買おうと思う。みょーこ姉ちゃん地の珠子ちゃんは、日に10回も体重を量っているらしい。先日行った時も、ベッド代わりにしていたな、そう言えば。


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