ミュウ

流し目

Apr.5,2002

朝早くから、造園業の人が土木診断士と建築士を連れて来てくれた。診断するべき事は診断するとして、先ずは早速フェンスにどっかりと乗って石垣を押し崩そうとしている木を切ってくれた。こうした事態は、長年の間年寄りだけに庭を任せておいたツケと言わねばなるまい。しかし舅が生きていたならば、息子がケチをつけようものなら「出て行け!!」である。それとも自分がもう死んだので、こういう形で出て行かせようとしているのだろうか?

この家は今をさかのぼる事40年前、舅一人がいたくお気に召して買った中古の家である。当時は、6畳と3畳の和室に、台所と居間が付いただけの小さな家だった。そこへ夫婦と3人の子供達(子供と言っても一番下のこうちゃんでも中学生である)、そして姑の実母の合計6人が越して来たのだ。ご近所では、あんな小さい家で6人もがどうやって寝ているのだろう・・・と言っていたそうだ。何しろ駅から遠くてバスの便も今よりずっと少なく、バス停からの道は舗装しておらず、アナボコだらけのひどい道だったと言う。狭いとか遠いと娘たちが晩ご飯の時にグチを言ったら、突然激怒した父親(舅の事である)がTVを投げた思い出を昨日義姉から聞いた。

もっと広くて新築の家が世田谷に候補としてあったのに、その小さな中古住宅を一目見て気に入ってしまったのだと言うが、どこの何がそんなに気に入ったのか、家族は誰も理解していない。そして年月は過ぎ、建て増しが続いた。もともと2階など無かった事は昨日も書いたが、2階を乗っけるように作られた家では無かったのだ。しかし3部屋も乗せた。1階に何の補強もせずに。まんべんなく全体にバランス良く乗せたのではなくて、玄関から見えない裏の崖のギリギリに建つ部分にだけ乗せた。そして乗せた方向には、どんどん傾いて行った。私は見ていた訳ではないが、床を転がる玉がそう語っている。

姑は諦めたはずなのに、朝から現場に張り付いたまま色々と口を挟んでいる。こうちゃんが予め、「母が色んな事を言うと思いますが、もう高齢で判断は出来なくなっていますので、意志決定は私がします。」と言っておいたのだが、それを知ってかシ知らずか、少なくとも嫁になど口を挟ませないぞ・・・という勢いで、朝から私には敵意むき出しである。ははは・・・元気なのは結構だ。舅が逝った途端、今度は姑の介護に追われてはかなわない。

今日は『身代わり不動尊』とやらに姑とそのお友達を義姉が連れて行ってくれる事になっているので、さっさと支度すれば良いものを、庭を見張っているものだからお迎えが来た時にまだ着替えてもいない。義姉が「ナントカさんが待っているのに、着替えもまだだったの?」と優しく言ったら、「そんな事言ったって、朝からずっと忙しかったんだものしょうがないでしょ!」といきなりヒステリックに叫んだ。おやおや、舅が乗り移ったのか?いや、元々こういうキツイ無神経な人だったよな・・・と心の中で笑ってしまう。もはや何を見聞きしても私は驚かない。

思い起こせば、普通のサラリーマンの夫婦としては信じられないような出来事がいっぱいあった。こうちゃんの会社社長の殺人事件あり、「呆け」どころか精神に異常をきたした舅との9年間は凄まじい闘いであったし、失業もあった。姑も何かと言えば、可愛いはずの(自分ではそう言っていたが)息子の面目を潰すような無神経で傲慢な人であった。世間知らずの苦労知らずだけに、それで当り前だと思っているのだろうが、かなり非常識な事が多い。しかし、それもこの9年間で全て見尽くした感がある。今更、大抵の事では驚かないさ。家が崩壊するのはかなり困るけど。

とりあえずではあるものの、診断してくれた土木の専門家は、水抜きをきちんとする事と、庭木の撤去、庭をコンクリートで厚く固める事、そして石垣の補修と補強で、家の崩壊は防げるだろうと言ってくれている。明日また詳しい話を聞いて、どの程度の工事になるのかが決まるだろう。全国各地からこっちに避難していらっしゃいとお声を掛けて頂き、感謝に堪えません。阿蘇の23畳の部屋も、岐阜の一戸建ても、高知の田畑付きの家も、千葉や茨城の戸建ても、そして山手の明美邸も大変に魅力的だったけれど、猫たちに環境を変えずに暮らさせてやれる一縷の望みがあるのであれば、是非そうしたいと思っている。日吉なんか、道も狭くて山で、ちっとも暮らし易くはないのだけれど・・・。

さて、地味でしつこい話題はさておき、凄い朗報がひとつ。白血病キャリアのロイ君が、東京のぴーさんのお家に行く事になった。保護主の加納さんが、明日新幹線で連れて来てくれるので、新横浜で私達夫婦がピックアップさせて頂く事にした。会った事こそないものの、ぴーさんもいわば「保護仲間」だ。安心してお任せ出来ると思う。

もちろん保護主の加納さんは当サイトの子供というか店子というか、つまり私は親である。未だ見ぬ子供が新横浜で猫連れで降りると言っているのに、見過ごす事は出来ない。ジェイの時には行けなかったので、今度こそ搬送はさせて頂かないと・・・。

詳細は今夜の『NARA天』のアップをお待ち下さい。そして明日の晩は、私が写真付でご報告出来ると思うので、それもご期待あれ。加納さんはぴーさん宅に1泊するので、ぴーさんのPCで日記を更新しない限りは、ここで速報をお届けしよう。但し戻ってからなので、凄く遅い時間だとは思うけど。

ロイと会える。ロイとジェイ(現在は「タロウ」)は、私にとっても特別な思いのある子だから、感慨ひとしおだ。しかし「特別な思い」のある子が、随分といっぱいになって来たなあ・・・。
ジャムの独り言

ジャムはねえ、このお家の子供なんだから、このお家からはどこへも行かないよ。いまだにドアの向こうには何があるのか知らないんだよ。ミュウやジーコは、時々ドアの向こうのどこかに連れて行って貰って抱っこされて戻って来るけど、ジャムはドアを歩いて出た事はなんだ。ここが世界の全てなんだ。

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