カワムラさん

Nov. 3, 2002
よりこと仲良く
(STiの下で)

撮影:イナガキ氏

結局、イナガキ氏とは夜明けのコーヒーを飲んでから別れた。

なんちゃって、少しもヤバイ話ではないぞ。マイ・ダーリンこうちゃんと3人で一緒に夜明かししたのだ。

そもそも鶴見からカワムラさんを連れて帰ったのが午前3時だ。それから少し話をして、「猫雑記」の更新の続きをしてからPCの状態も見て戴き、すっかり明るくなってお隣のご主人が外に出て来る頃、イナガキさんはSTiのエンジン音を響かせて八王子へと帰って行った。サラとティッピが待っているスイートホームへと・・・。



さて、カワムラさんだ。

昨夜は食べていないので、このままではますます弱ってしまうだろう。カワムラさんの部屋と勝手に決めさせて貰った1階の和室を覗くと、椅子の上で香箱を作っていた。私を見ると下りて来て鳴く。撫でてやると胸によじ登ってきて頭を私の顔に擦り付ける。



1畳のホットカーペットを置いてあげたのだが、その上でお腹を見せて甘える。こんなにも甘えん坊だったのか・・・。最初にエサ場で見かけた夏の頃は、人や猫の気配がある限りはご飯も食べない位に怯えていたけれど、去勢済みのオスだけに自分のテリトリーでもない場所に捨てられて萎縮しきっていたのかも知れない。

去勢までして可愛がっていた猫を、何故捨てる!?



エサ場でも栄養価の高いフードをあげていたつもりだったが、身体を触って見ると皮がたるみ、骨がゴツゴツとしている。最初に見かけた時よりも顔が細くなったように見えるのは、歯が抜け落ちてしまったせいか。

左下の犬歯は完全になくなっていて、そこからベロが出てしまう。赤黒い目やにが始終出ている。先ずは食べる事だ。

今日からはプレミアムフードをたっぷり与える事にした。もちろん、少ししか食べないハナクソにもそうしてみたいと思う。お金は掛かるが仕方ない。



カワムラさんのフードには、お薬もプロポリスも混ぜる。朝見た時には、昨夜与えた分を少し食べてあっただけだったが、昼前にはそこに「プリセプト」の缶詰をたっぷり1缶分足してやった。

鳴いたり尻尾を立ててビリビリさせて撫でてくれとせがむので、暫く抱っこしていたら少し気が済んだのか、猛烈な勢いでご飯を食べ始めた。鼻が詰っているので、食べるときにもガフガフとうるさい。休む事なく2/3程を一気に食べてくれた。薬の入っている部分も集中的に食べていたので、ちょっと安心。



お湯で絞ったタオルで身体を拭いてやってみた。逆毛をたてるように何度も拭くと、ノミの糞があったのか白いタオルに赤い点々が幾つか付いた。

毛を掻き分けてもノミは見当たらないけれど、落ち着いたらノミ駆除はしてやろう。

茶白の白い部分は、マルコと違って薄汚れて灰色になっている。手足には、いつもバイクの下にいたものだから、オイルでも漏れていたのか、黒い油汚れが付いていた。

肉球を見ると、意外やすべすべと柔らかい。あそこで殆ど移動せず、じーっとうずくまってここ数ヶ月生活していたのが解る。もっと早く、どうして決心してやらなかったのだろう?

いつもこういう忸怩たる思いをするのだ。

判断のタイミングというのは、常に大変に難しい。全ての野良猫を家に連れて帰る事は勿論、全ての野良猫に里親探しをする事も不可能だ。

それが嫌という程解っているから心を鬼にして外で世話をしている訳だが、ハナクソといいよりこといい、余計なお世話だがみょーこの世話をしている麻呂だ寛太だ、見るもの聞くもの全て連れて帰りたいのも本心だ。

それを食い止めているのは、曲がりなりにも私の理性であり、情けない事にキャパシティの少なさでもある。

2階の6畳2間のスペースでは6匹と二人でも狭い。家財道具一切(冷蔵庫・洗濯機・キッチンの流し台セット・食器棚・レンジ台・ダイニングセット・食料保管用の棚、ダブルベッド・PCデスク、本棚・・・そして猫トイレが4つ)・・・ここでは誰かがダイニングチェアに座っていたら、立って貰わないと通れない程狭いのだ。

充分なスペースが確保出来ないという事は、猫同士のストレスに直結する。ここは狭過ぎる。



だからこそ、これでもう増やさないようにと涙を呑んで「ここまで」という線引きをしていたのだったが、昨日は「置いて行かないで」とカワムラさんは言っていたと思う。

一日迷っていたら、どういう結果になったとしても後悔をすると思う。やる気にさえなれば、どうとでもなるのだ。今まだって全てそうだったのだから。

するかしないかの差だけだ。物理的条件の差ではないと、いつも里親さんを探す人達に対しても言って来たじゃないか。私がやって見せる。やれば出来ると。



なんちゃって、今回の勝算はあったのだ。階下の和室は使っていない。舅が生きていたら決して使わせては貰えなかった階下のスペースだったが(しかも一日中見張られていて何一ついじれない、持ち込めない、そして猫は大嫌いという、私にとっては最低最悪の人間だった)、もはや少しは勝手にさせて貰う。

そうでもしないと、現在引き受けているリスクは実はとても大きいのだから、とてもじゃないけどやってらんないよ。



ケージで飼うつもりはない。

但し、落ち着いて隠れられる場所を作ってあげたいが為に、ケージを組み立てておいた。回りはタオルケットで覆い、中にはマットを敷く。

午後覗いた時には、そのケージの中でぐっすり眠っていた。少し落ち着いたようだね、カワムラさん。しかしまだトイレは使わない。



夜、みょーにまとめ買いをお願いしてあった野良猫用の美味しい缶詰を取りに行き、しばし共に過ごす。

今朝も寒かったけれど、今夜も寒い。みょーこの保護した勘太は去勢手術をしてもらった後も、足の怪我が治るまでは加藤先生のところに入院中だ。

この勘太という黒猫もスリスリのベタベタの甘ったれ猫で、つい最近捨てられた猫だと思う。カワムラさんと違ってまだ若いようだ。多分1歳半位だろうというのが、加藤先生の見解だ。

この子の行く末も、考えると厳しいものがある。しかし今はそれをくよくよするよりも、見てしまったものは何とかして行くしかないのだ。後の事は、慎重に考えて精一杯努力しよう。



みょーことも話したが、私たちは「愛護」をしている訳ではない。

「活動」と呼べるような、きちんと線引きされた基本理念がある訳でもない。かなりセンチメンタルな「情」とに突き動かされて、日々エサを運び続けているのだと思う。

捨てられて飢えて死んでいく猫を見たくないし、そして避妊もされずにいた猫が仔猫を産んで、その仔猫が飢えと寒さで病気になり死んでいく姿も見たくない。

しかし「情」だけではなく「責任感」は人一倍ある。だから捕獲して避妊もする。たとえ多くの身勝手で無責任な人達の尻拭いを続けているにも拘らず、こうしてエサやりをする事が猫に対して「情」を抱いてしまう人間のエゴだと言われても、それは甘んじて受けよう。

しかし何もしない人からの批判までは受けるいわれはない。

忙しくてどうしようもないので、匿名の質問メールなどは一切送らないで欲しい。人にアドバイスや協力を求める以上はきちんと名乗って戴きたい。今後一切、匿名のメールには返信しない事にしようと心に強く思う。たとえ猫の命がかかっていてもだ。



家に戻り、最初にカワムラさんのご飯の用意をする。

カワムラさんはまだ同じ恰好で同じ場所に寝ていた。ぐっすり眠っていて、私が襖を開けて入って行っても目覚めない。死んでいるのかと不安に思ったが、ブヒブヒと小さく寝息をたてている。その寝息の小ささを聞いただけでも、明らかに具合が良くなっていると思う。

今はしっかり食べて、しっかりと休養する事だ。久し振りに安心してゆっくり眠れたのではないだろうか。



見るとトイレを使ってあった。ウンチとオシッコが、一塊になっていたところを見ると、殆ど同じ時に一気にしたのだろう。それを片付けていたら目を覚まして、「あぅ〜ん」とか細い声で鳴きながらこちらに来た。

ご飯よりも抱っこが良いらしい。撫でて、抱いて、目やにをとってあげて、そしてケージやホットカーペットの配置を変えてやる。ケージの中で眠るのが安心ならば、いっそケージの床部分をはずして、屋根付きのサークルという感じでホットカーペットの上に置いてやろうと思ったのだ。これならば、ますます暖かいだろう。



まだまだ一緒に居たいけれど、明日の朝、また来てあげるからね・・・と心を残して2階に上がる。一応着ているものは全て着替え、手は薬用石鹸で念入りに洗ってから2階の猫たちとは接触する事にしている。洗濯物の数が半端ではなくなってきたが、去年からワクチンを打てなくなっているアインの為にも、それ位の用心はしてあげたい。



あとは名前だが、ずっと「カワムラさん」と呼び続けてきたので、やっぱり「カワムラさん」にしておこうかな。

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