ジーコ

やさ男

May 20,2003
朝一番、「ドン!」と大きな音を立てて、ぶ厚い紙の束が私のデスクに置かれた。昨夜、所長は随分頑張ったのだろう。21の報告書に全て朱が入って置かれていた。

何故22ではないのか?Mr.Urayamaは、昨日の段階でまだカクモトチームの報告書の原稿修正が終わっていなかった。今朝、巨大な添付ファイル付でスタッフ全員にメールされていた(外部のプロバイダ経由で受信する客員研究員や、常に外部で受信するタケウチ先生は迷惑しただろう)のだが、それに所長のチェックを通ってから私のところに回って来るのだ。いかにも「オレは仕事したぜ!」というパフォーマンスだなと意地の悪い私は思ったが、当人はたまに仕事して疲れたのか、今日も昼から重役出勤であった。ま、それはさておき・・・。

「ドン!」で先ず威かしておいてから、最初に決めた書式のルールではなく、途中で一部ルールを変えているから・・・と、あっさり言う所長。もちろん私に異論があるはずはない。ボスの言う事は絶対なのだ。私はナメクジである。いや、ナメクジでしかないのだ。しかし論文中のカンマとピリオドを全て句読点と句点に変えるという程度の修正は、書いた本人に戻すのが筋ではなかろうかと思う。仮に相手が偉い教授だとしても。

しかし現実には、私が全文をずら〜っと舐めるように見て直すのだ。ナメクジだからな。編集機能を使って「置換」をすれば良いだろうにって?文中にひっきりなしに計算式が入って、そこではカンマじゃないと駄目なのさ。そういう文章だからこそ、カンマで統一して書いているのだろうけどね。それに、途中に他の修正も入るんだよ。だからチコチコと頭からせっせとやった方が早いんだ。嘘だと思ったらやってみな!

本当は正式文書の横書きの場合は、句読点はカンマ、句点はマルが正しいらしい。これは『国語の書き表わし方』(文部省編・昭和二十五年十二月五日発行)という資料に定義されている。しかし昭和25年のままのスタンダードか?しかし論文を書きなれている研究者は殆どカンマとピリオド・・・つまり「,.」を使っている。いずれにせよ今回は、本文中は「テン」と「マル」に統一するという決め事なのだからやるっきゃない。その決め事は、事前に通達してある。そして本文は、日本語も英語も明朝の10.5ポイントで統一と。そして階層の付け方も統一すべく、事前にフォーマットを送ってあるのだ。しかし・・・。

所長は確かに妥協がなく、細かい部分にまで目が行き届く。印刷にした場合、一定のルールに従っただけでは目に美しくない場合もあるのは確かだから、そこまでこだわった指示が出る訳だ。例えば行の頭に句読点がきていたら、これは明らかにおかしい。自分のウェブの日記ではこだわらないが、印刷されたものだとしたら、行頭に一文字取り残されるのも読み難いね。これは禁則処理や句読点のぶら下がり指定で対処出来る。

しかし禁則処理の為に文字間が行毎にマチマチだったりするのも、私には美しくなく見えるし意外と読み難い。何を禁則とするかによって、行頭に拗促音や音引きなどが取り残される場合は、私個人としては大変読み難い。左右を綺麗に揃える為に、「ぶら下げ」を許すのは句読点のみであるのが通常だろうし。

これは日本語の禁則との戦いだ。確かに「ぶら下げ」で版組みしてしまうと、行末処理のアルゴリズムが単一ではなくなるという不利益があるので、頭の中が理系の先生方は特に嫌うのかも知れないな。しかし内容を視覚から頭の中にきちんと読み込もうとすると、画一的な処理が成されている事だけが読み易さを生むのではないという気がしてくる。私は印刷業のプロではないし、現状ではどういう処理がスタンダードなのか良く知らないので、見当違いな事を言っていたらごめんなさい。あくまでも、山ほどこ難しい内容の論文を読みながら体裁を整えた個人の、ぼやきと言うか率直な感想だから。

それにしても、PCやワープロの普及によって素人がここまで考えて原稿を作らなければならなくなったのは、便利な反面、大変に面倒くさい。今回、そのままプリントアウトするのであれば兎も角、ハードカバーで印刷屋に印刷・製本して貰うのだから、早い段階からプロの校正マンと組版のお世話になって欲しかった。版下状態までに仕上げるのは、厳しいこだわりを持つボスの下では大変過ぎる。

しかしそれとは別の問題として、提出期限に役所に提出するという事が優先されないのは、ここもまた役所のようなモノだからだろうか?昨日「風土か資質か?」という部分で名前を出したジョージにも後で核心に触れた指摘をされ直したのだが、どこにどれだけの労力を割くか、何が最優先課題なのか、時間とコストパフォーマンスと結果とのバランスの中で考えられなけれればならないはずだろう。少なくとも、営利企業ではそうあるべきだ。税金で支払われる私の給料も、無駄があってはならないはずだ。そして何よりも、こんなにも疲れ切ってしまってどうする!?

ふと「私は暇だと思われているのかな?」「凄く簡単な作業だから軽いノリで言いつけるのかな?」と思ったが、今日も何度も確認をとりつつ作業を進めていたら、ボスは「簡単じゃないでしょう?」と言って眼鏡の奥の目が笑った。とても太刀打ち出来ないな、多分その辺りも解っていて、それで尚且つしている事なのだろうから。

頭痛にもマケズ、9時近くまで頑張ったが、やはり終わらない。所長は「カワグチさん、帰るけど。あまり無理をしないで。」と言ってラボを去って行った。無理せずに終わらせられる人がいたら、是非お会いしたい。

アイン

らしくないけど母親

帰宅したら10時。今夜こそ、完全に更新が出来ない。なのに続々と掲載依頼が届いている。ごめんなさい。寝ずにやりたい気持ちはあるけど、多分もうそんな事は出来ない。以前はしていたのにね。長年の無茶が祟ったのよ。これからは、4時間半〜5時間はきちんと寝る事にしたの。猫たちとこうちゃんの為には、長生きしたいのよん。

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