ペリー

イオに舐められ

Jul.30,2003
昨日、別れた最初の夫の事を書いた。臆面もなく「天才に近い」とも書いたな。でも事実そうだったし、彼は私の持ち物ではないから「臆面」する必要もないだろう。出会ったばかりの高校時代から、理系の事で何か訊いて(訊いた範囲で)彼に答が出ない事はなかった。学校で習う事を遥かに凌駕した内容と水準で、彼の中には知識と思想が蓄積されていた。先輩から訊かれようが、教師から訊かれようが、理科系まるで駄目の私が訊こうが、シンプルで説得力のあるひとつの解答が出て来た。

授業など殆ど訊いていなかったようだし、ノートは高校3年間で全教科を通じて1冊しか持っていないような人だった。そのノートには自作の詩やクルマのイラストなどが描き散らされ、子供の落書き帳のようだった。興味の対象にある問題全ては、頭の中のみで速やかに回路が繋がっていたのだろう。それは、順序だてて計算して行かないと解決がつかない私には解からない回路で、私から見ると「中味を決して取り出される事の無いブラックボックス」のような人だった。

それは社会人となって、ある巨大組織の電算課に入ってからも同様だった。組織の中で、彼は特異な存在だった。結婚をした時、私たちは式も披露宴もしなかったのだが、彼の組織の周囲がパーティをしてくれた。その時会った彼の上司は、「どうしてこんな詰まらない男と結婚したんですか?」と真面目に私に訊いた。私は彼をとても面白い人間だと思っていたので、何故そんな事を訊かれるのかむしろ不思議だった。しかし、周囲が彼にとって如何に詰まらない人間たちであったのかを立証する問いであったとも言えるかも知れない。彼の面白さを理解し、あるいは引き出せるのは、同様に面白い人間にしか出来ない事だからだ。

ある朝、「今日、先輩が相談があると言うから、飲んで帰るよ。」と彼は言った。帰宅した彼に「何の相談だったの?」と訊くと、「仕事に向いていないような気がして、辞めるべきかどうどうか悩んでいるって内容さ。」と言う。「で、アンタは何て言ってあげたの?」と私。「辞めたければ辞めればいいんじゃないですか・・・だけだよ。」と彼。え?でも、先輩は穏やかで何でも解かっている尊敬する後輩のT代君に、きっと愚痴を聞いて欲しくて、励まして欲しくて相談したんじゃないの?!と思ったが、彼は「(自分の身の振り方を)人に相談なんかするヤツは駄目だよ。」と穏やかに笑って冷たく言った。

このエピソードで、彼の社会に対する姿勢は改めて良く解かった。あの言葉の裏には、多分「良い大人が自分の人生設計を人に描かせていいのか?」「他人の人生に責任なんか持てないよ。」という気持ちも多少は含まれていただろうし、それにも増して他人に無関心な人であったのも事実だ。元々他人の評価など全く意に介さない人だったし、親の言う事には逆らわない代わりに、言う通りにもしない少年だった。頑固なのではない・・・完全に無関心だったのだ。

身近に過ごした11年間、きちんと私を大切にしてくれ、何でも私に都合良いようにしてくれたが、その実、私は彼の世界に不可欠な存在ではなかった。そういう意味では、彼には誰も必要ではないのではないだろうか?とさえ思った。彼はナルシストですらなかった。計算と物理学と酒と煎餅だけを愛しているようだった。

しかし彼がある晩「好きな娘がいる」と言って私に離婚を迫った時、「相手の女の子は、私と比べてどこがいいの?」と訊いた若かった私の馬鹿な問いに、「付いていてあげたいんだよね。アンタは一人でも生きて行けるけど・・・。」と言った。私が一人で生きて行けるかどうかは別問題だが(そんな事があるはずがない)、なるほど、彼にも熱い血が通っていたんだ、私以外には「オス」なんだ・・・と素直に認めざるを得なかった。会った事の無いその女の子(今となっては、もうかなりのオバサンだろうが)に、私は全く嫉妬しなかった。彼の言うところの「アンタとは違う種類の女」で、彼をそこまでオスにさせる事が出来るのならば、それは彼にとって人間臭くて幸せだと思った。彼に対して恨みはなく、むしろ感謝していたしね。

彼の両親は50歳前後で亡くなっているので、彼も体質を受け継いで早死にしていなければ良いが。まだ存命だろうか?特に知りたい訳ではないのだが、彼がもし生きていて、どこかで出会う事があれば、「アンタもオバサンになったね。」と笑われるだろうね。そうだよ、豊かになったよ、身も心も。あの頃はアクセルにもブレーキにも「遊び」がなくて、さぞかし人を疲れさせただろうね。え?今もだろうって?いいえ、これでも充分いい加減になりました。遊びが少ないのは、車だけです。しかし車高はまだ高目で、イノウさんにこんなページで見比べてみろと言われているけどね。低くしたいよ、本当に。

イオ

睨みを利かす

Jul.30,2003

美食が続くと身体には良くないので、昨夜はせっせと野菜中心の料理を作った。夏の定番・茄子と胡瓜の塩揉み青唐辛子入り、そして小松菜と油揚げの煮浸し、もやしと茗荷の中華ドレッシング和え青唐辛子入り、クズ牛肉と白滝の佃煮(白滝が美味い)、そして大根と胡瓜の糠漬け、チーズ乗せ焼きトマト。これで玄米ご飯に切り替えられれば言う事ないのだが、まだ入手していないのだ。それにしても、青唐辛子が一年中出回ると嬉しいのに、青いものの命は儚い。青い柚子もほんの一時期だけだ。自然の原理として仕方ないのだが、青いうちの凄烈な香りは熟した時のそれとは比べ物にならない。女も一緒だって?・・・まあね。だけど果物は腐る寸前が美味いのよ。

汚い話だが(と断るのは上辺だけで、実はあまり汚いとは思っていない)、利尿剤を使うと尿意は来る。我慢出来ずに昨夜も起き出してトイレに行った。しかしチョロチョロ・・・と少量しか出ない。しかも時間がかかった。これじゃあ前立腺肥大のジジイだ。それでも出ると少しは違う。このまま「人工透析治療」になどなりたくない。何たって時間が勿体無いものね。ここまで放置して来た事はちょっと悔やまれるが、せめてここで踏み止まらなければ。

前日の「猫雑記」へ 翌日の「猫雑記」へ


月別INDEXへ戻る

「猫雑記」INDEXへ戻る

inserted by FC2 system