週末はこうちゃんに運転を譲るので、月曜日に私が通勤の為に車に乗ると、シートが後ろ過ぎて足がアクセルペダルに届かない。大袈裟なのではなくて、本当に足を伸ばしきっても爪先しか届かないのだ。こうちゃんは長身で、しかも足が長い。足首が伸びたままではとても運転出来ないので、シートを思い切り前にスライドさせる。ちぇっ。

ぶーちゃんは念の為スクリーニング検査して貰ったのだが、その結果では腎臓も肝臓も悪くなく、但しエイズキャリアだった。そして予想していた好酸球は無かった。ノミかシラミの痒みの為に禿げているのだろうという事で、フロントラインで処置して貰い、引き続きフロントラインを週に一度位スプレーする事になった。

アライさんが、朝そっと私に小さな包みを手渡した。ぶーちゃんの手術代に遣って欲しいと言うのだ。私はアライさんの気持ちだけで充分だったけれど、感謝して受け取らせて戴いた。デスクに戻って包みを財布に仕舞ったら、すんでのところで涙が出そうになった。正直なところ、お金はどうでもいいのだ。まさか職場でこんな仲間が出来るとは期待していなかったので、それが信じられない程嬉しい。

アライさんは、私と一緒に世話をしている外猫だと考えてくれている。負担をさせてはとても申し訳ないのだが、自分にとっても可愛い猫たちだと思って貰える事が有り難いのだ。あそこに野良猫がいなかったら、アライさんとここまで心を通わせる事が出来ただろうか？猫にも感謝しないとね。

それにしても、ぶーちゃんが元気なのに入院させている余裕は病院にはないだろうから、今夜迎えに行ってリリースする事にした。リリースはいつだって物凄く辛い。私はへこたれ猫オタクなので、リリースする度にウエットな気持ちになる。笑わば笑え。ちっとも慣れないのだ、こういう事に。

外の猫たちにだけ寒い思いはさせないぞ・・・と、真冬に布団も掛けずに窓を開けて寝るミヨコを笑えない。私も猫の捕獲・避妊は結構ベテランの域に達していると思うが、それでもいつまで経っても情けないバカだ。家に連れ帰る事も真剣に考えたけれど、今はまだその時期ではないという結論を出した。ぶーちゃんはまだ充分元気だ。今まで通り、自由に暮らして行けるよう支援してやれば良い。理屈はそうだが、心の中は土砂降りだ。

もしぶーちゃんを家に入れたら、次の瞬間には「ぶーちゃんが入れられて、どうしてしーちゃんやみーちゃんは入れられないのだろう？」と悩むのだ。そして新顔のブスぶーちゃんも、いずれはそう思わせる対象となる。冷たいようでもどこかできちんと線引きをしていない限り、果てしなく家に増やしてしまい、それは即ち破滅への道なのだ。今の私のキャパは、家猫は１２匹で精一杯。飼い方に手を抜けない限り、この許容量は増やせないだろう。

スクリーニングと去勢、そしてフロントラインのボトルと抗生剤１週間分で、たったの２万２千円だ。去勢分の５千円（野良猫料金であって、家猫は別料金なので念の為）は、アライさんから戴いたお札を有り難く遣わせて戴いた。アシスタントの人に「可愛いでしょう？」と聞くと、ニコニコして「可愛い顔してますよね。」と言ってくれた。本当に可愛いよ、ぶーちゃんは。