ミュウ

先ずは生還

Oct. 2,2003

午後1時55分
ミュウは病院で処置をして貰って、まだ病院にいる。連れて帰りたかったけれど、腎不全の場合の点滴と違って、流しっ放しという訳には行かないし、刻々と容態を診ながら処置を変えなくてはいけないと言うので、心ならずも置いて来た。本当は離れていたくない。私が傍に居れば、ミュウは落ち着くのだ。不安にさせたくない。

朝一番で病院に連れて行った時には、動悸は激しいけれど昨夜よりは落ち着いているように見えた。ご飯も自発的に少し食べた程だ。このままそっとしておく方が良いのか・・・物凄く悩んだけれど、兎に角急激に炎症が起きているのであれば、対処する価値がある

レントゲンと血液検査の後で、ストレスの為か興奮したせいか、再び大きな発作が起きて危篤になった。先生が待合室に出て来て、わざわざ「かなり危ない状態です。」と言った。いつかは訪れるであろう「その日」は今日だったのか?そんな事は受け入れられない。そんなのは嫌だ。

せめて傍に居させて欲しいと願い出るが、今酸素吸入をして処置している間は待っていて下さいと言われる。待つのが辛い。後から来た患者さんには全て「急患が入っているので・・・。」と奥さん先生が断っていたのを聞いていると、ますます重篤な状態なのだと感じて辛かった。(もちろん急患ではない患者を断っていたので、誤解のなきよう・・・。)

胸水を300ccほど抜いたと言って見せてくれた。黄色く濁った水だった。レントゲン写真を見ると、肺が1/6程に小さくなっている。周りを囲む隙間は全て水が溜まっていたのだ。それで圧迫されて、肺が小さくなっている状態なのだ。幾ら呼吸しても、肺に空気が入って行かないで苦しいのだろう。

抗生剤と消炎剤、気管拡張剤、利尿剤を注射し、現在は静脈に点滴をしている。今後をどうするか、先生とも良く相談しなければならない。手の施しようがないのであれば、家に連れ帰って付ききりで静かに看取りたい。しかし、対処療法であれ、苦しみを軽減出来て落ち着かせてやれるのであれば、先生にお任せしてみようと決心した。今後、点滴に薬を入れるか、その都度注射に通うか、そこが問題だ。静脈の確保は続けて、それで日中を病院で観察して貰い、夜に迎えに行って家で過ごさせるか・・・。

病院で待つ間、だらしないとは思うが泣き続けだった。泣くと目が腫れるし疲れるから嫌なのだが、意思の力だけでは止められない。こうちゃんが私の頭を自分の胸に引き寄せて、抱き抱えていてくれた。こんな時にも、きっと気丈にしていられる人もいるのだろうと思う。どちらが良いという問題ではない。私がミュウの為に泣ける事は、少なくともミュウの場合には、それで私のミュウを愛する気持ちが伝わっていると信じているから、ありのままで良いと思っている。

午後の休診時間になってしまうので、あとは先生たちにお願いし、一旦帰宅してテトにご飯をと薬をあげた。ジーコとアインにも食べさせないと胃酸が高くなるし、他の子たちにも目を配らないといけない。仕事はやっぱり休んで良かった。せめて胸水を抜き、必要な薬が入れられたのだから。昨夜カトウ先生は、私のプレドニンを飲ませろと言ったけれど(本当は「プレドニゾロン」と言ったのだが、生憎私のは量の多い「・・ニン」の方なんだ)、口から薬を飲む子だったら苦労はしない。飲ませようとして口を開けさせただけで、興奮して発作が出るのだから。

私がへこたれで投薬出来ないと思っている人もいるけれど、カワムラにもルス・リマにも、アインやジーコ、ペリー、ジャム、マルコには飲ませられるんだよ、ちゃんと。私は確かにへこたれだが、必要な薬を飲ませる為の知識とテクニックだけだったら充分持っているし、私の精神の問題だけであれば克己して飲ませる事は、現実に出来ているのだ。ゴマ、イオ、そしてミュウには、錠剤やカプセルのような固形物を口に入れるのがダメなだけなんだ。

午後11時35分
診療時間の終わる頃、ミュウを迎えに行った。それまでの間、電話が鳴る度に怖かった。信じているつもりでも、いつ悪い内容の電話がきてもおかしくない状態だから。今後に備えて、午後は寝るつもりだったが、捕獲器を発送したり、掲示板の禁止事項を書き換えたりしていたら、ついに寝そびれた。いいや、もう。きちんと食べているし、今日は浮腫みも少ないので楽だ。但し喘息が酷いけど。

5時20分頃、アライさんから電話が入った。「川口さん、良い知らせですよ。」と声が弾んでいた。「今、ぶーちゃんが目の前にいて、ご飯をいっぱい食べてます。」

病院に行くと、一組の患者が検査結果が出るのを待っていた。小さなキャリーの中には、白黒猫らしい頭が見える。話し掛けてみると、先住猫がいるので、この保護猫の検査に来たと言う。なので何が出ても大丈夫ですよ・・・・と話していると、「川口さんですか?」と訊かれる。先日のご相談者の方であった。カリシらしき風邪と、エイズがある事が判ったようだが、頑張って元気に幸せにしてくれそうだ。励まして行きたい。

ミュウは、夜のレントゲン写真では、朝と比べると肺が5倍位に大きくなっていた。しかし前胸部の水は抜けきれていないし、その部分の肺は石灰化している。この水が溜まる原因の特定は難しそうだが、抜いた水の検査もしたところ、悪いものは出ていないと言われた。腫瘍などがある場合は、その組織が落ちて出てくるものだけれど、そういうものはなく、リンパ液とマクロファージなどだけだったようだ。

もしかしたら他の保護猫から風邪のウィルスを貰ったのが、この季節の変わり目で出てきたのかも知れないし、私が持ち帰ったものかも知れなければ、色んな人が出入りしていたのでそういう人達からも持ち込まれる可能性は高い。もちろん無菌状態でなど生活出来ないし、強い免疫力を持たせたいとも思う。しかしこの年寄り猫たちのいる2階へは、もうあまり色んな人を呼び入れないようにしようと思う。慢性的な気管支炎が肺炎を起こしただけかも知れないとも言われたので、兎に角危険な因子はひとつずつ除去していきたい。ミュウが生きていてくれるならば、どんな事だってする。こうちゃんとだって離婚しても良い。嘘だけど。

スクリーニングの結果も、白血球も異常な程には多くなく、腎機能、肝機能、コレステロールともに正常。アンモニア値やナトリウム、カリウムの値が朝には多かったけれど、点滴の結果、夕方の検査では正常に戻っていた。ひとつだけ血糖値が高かったので、今後の食事はw/dを奨められる。何と、w/dの缶詰を、先日とししげさんのご好意で送って貰ったばかりなのだ。素晴らしいタイミングに驚く。帰宅するなり、早速食べさせた。自力でテーブルの上まで上がり(うちでは、テーブルに上がって戴く為の階段を付けている。踏み台だが、その為に購入したのだ。)、しっかりと食べてくれた。食べればもう安心という病気ではないのが辛いところだが、食べられないよりはずっとマシだ。

静脈を確保したまま、テーピングをして貰い、明日の朝また連れて行く事になる。当分は私と共に出掛けて、私と共に帰宅するという繰り返しにして貰う。夜だけでも、傍にしたい。個室があって共に入院させて貰えるのであれば、喜んで入院させるが、そんな動物病院はあるまい。それに他の子たちの事を思うと、私がこの家から戦力外となるのもきつい。

現在、アメ汰の引き取りの為に用意していたケージを、こうちゃんが組み立てている。アメ汰は引き取らずに里子に行けたから、お蔵入りしていたのだ。アメ汰と同じ柄のミュウに、有り難く使う事にした。もちろん、ずっとケージ飼いする訳ではないが、安静を保たせる為にはケージが必要だろう。部屋がますます狭くなった。閉じ込めはしない。自由にさせようと思う。暴れん坊のジャムを閉じ込める作戦も考えたが、まあ成りゆきを見ながら、フレキシブルに対処して行こう。安静が必要な子では、段差が上れないとは思うので、ミュウには使わず終いかも知れないが、何かをミュウのためにしていない事には落ち着かないのだ、二人とも。

ミヨコに電話して経過を知らせておいた。ミヨコは家族だから。アインの時と同様、ミュウは命掛けで私を自分に引き戻したのかも知れないな・・・と言う。ごめんね、ミュウ。もっと一緒にいる時間を増やす努力をするからね。

そしてアインも、涙目が酷くなってきている。これはやはり、一層の用心をして守らないとダメだな。明日は遅刻してミュウを病院に入れてから出勤。当分はそれしかないだろう。首になっても良い。

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