ミュウとマルコとジャム

Oct. 9,2003
朝と晩、2回ずつミュウの胸水を抜く毎日が続いた。でも、もう今日でそれは終わりたいと思う。無理矢理バンザイさせて胸を開いて押さえつけるレントゲンも、もう今日で最後にしたい。エコーも心電図も使って、心臓の様子を診て下さっていたけれど、日増しにミュウは容態が悪くなり、もはやご飯も水も受け付けない。動く事も殆どない。

午後8時にマツモト先生に電話して、明日からは治療をやめ、自宅で付ききりで様子を見たいと思うのですが・・・と言った。先生もそれが良いでしょう、と言って下さった。この1週間、家に連れ帰らせてくれていたのは、最後の時をパパとママの傍で迎えられるようにという意味であって、入院の必要がないという事ではないのだ。そして色々と治療して下さっていたのも、私の気が済むようにだったのだと思う。

何故、自宅に置く事を望むのか?それは、死に目に会えないのが辛いのではない。私たち飼い主の気持ちなど、この際どうでも良い。あれだけ私を求めていたミュウ。そのミュウが死ぬ時に、私が傍にいてやらないと可哀想だと思うだけだ。きっと心細いだろう。幸せな気持ちで逝かせてやりたい。

それに入院させたところで、もはや打つ手がないのだ。止血剤も抗生剤も効かず、水を抜いても肺の膨らみも極めて悪い。エアは抜け続けているし、心音は日増しにおかしくなっていると言う。心臓のせいで水が溜まる状態でもあるようだ。そして肺も殆ど機能を失いつつある。どちらかだけでも命とりなのに、どちらも駄目になっている。

一応、今日は肺の穴を塞ぐ為にと薬を入れたけれど、事故などで開いた穴ではないのが問題らしい。肺自体がもはや殆ど石灰化しており、不穏な大きな影も映っているので、肺そのものがボロボロである。穴も1箇所ではないかも知れないと言うし、自分の血で塞ごうとしてゼラチン化しても、再度水が溜まり始めると剥がれてしまうかも知れないという事だ。

明日の朝また連れて行こうと思っていたけれど、その後のミュウの容態を見ていると、もう負担のかかる事はやめようと思った。処置を続ければ確実に回復出来るのであれば、毎日何度でも連れて行く。しかし、もはや残された時間を穏やかに過ごさせたい。

夜も早いうちにラボに電話を入れ、ちょうど電話をとったウラヤマさんに明日休む事を伝えた。もうこの数日が、私たちに残された最後の時間となるだろう。

ずっと話し掛けている。「愛してるよ。」「大好きだよ。」「ママと一緒に生きていよう。」呼吸が苦しいので常に首を上げているのだが、もうずっと眠っていない。さぞかし消耗しているだろう。腕をそっと差し入れたら、しばらくはそれを枕にしてくれたけれど、直ぐに苦しくなるらしくて体勢を変えてしまう。鼻だけでは足りず、口を開けて息をしているが、小さな舌先が出たままだ。その舌は次第に白くなってきている。

意気地のない私は、ミュウに話し掛けては泣き(泣きたくはないけれど、泣ける時には泣いておかないと負荷がかかり過ぎてしまう)、こうちゃんに向かってミュウを失いたくないと叫び(別に大声で叫ぶ訳じゃないけど)、それでも奇跡を信じてミュウを励まし続け、ひたすら手を当てて気力を伝えているつもりになり、そして神様に祈り・・・。

昨日は偉そうな事を書いたが、本当はミュウの事しか考えられない。ミュウは私の命だもの。他の子たちには申し訳ないけれど、トイレとご飯の世話、そしてちょっとだけ抱いてあげる程度で、ミュウから長時間離れてはいられない。目を離した隙にもしミュウが死んでしまったらと思うと、何も手につかない。仕事に行っている間にも逝ってしまう可能性が高くなってきた。だから当然休む。昨日までは、まだまだ先の事だと思っていたから(いや、思いたかったから)、歯を食いしばってでも仕事に行こうと思っていたが、もはや覚悟しなければならないところにいるようだ。

興味のない他人からすれば「たかが猫」の事でこんな事が続いたら、いずれはクビだろうな・・・とは思うけれど(アテにならないならばそうしたくなる程、実は私は厚待遇だ)、それならばそれでもいい。ミュウは私の大切な伴侶なのだから。私の仕事なんか、幾らでも代わりが効く。私としても、また職を探せば済む。しかしミュウには代わりがない。

こうちゃんは交代で寝ようと言うが、この1週間殆ど寝ていないのに全然眠くない。ずっと起きていたい。今まで他人の為にばかり奔走し、更新と相談と嫌がらせにも似た働きかけの相手に毎日毎日時間を費やしていた分、そしてミュウにたくさん我慢させていた分、この数日で取り戻したい。馬鹿な事だとは思うが、本当は一緒に死にたい。こうちゃんと同じ位に愛している。ミュウは私の命だ。

何かおかしいと感じるのか、今夜はマルコもジャムもおとなしくしている。ミュウが最下段に、中段にはマルコ、最上段にはジャム。いずれも神妙な顔をしている。少し落ち着いたかと思って、こうちゃんに写真を撮って貰った。マルコは3本足ながら、懸垂と片足のキックでそこまで上れるのだ。中段から最上段へも移れる。凄いな、マルコ。そのマルコが、下にいるミュウを気遣うかのようにじっと見下ろしていた。

思えば、マルコもミュウに随分と相手をして貰った。顔にキックされようが、足の肉球に噛み付かれようが、ミュウは根気良く子供の相手をしてやっていた。ジャムの時も同様だ。ミュウの胸の下にすっぽり隠れてしまうほど小さかったジャムは、今やミュウの次に大きな猫となった。乱暴モノのジャムだが、今でもミュウにだけは敬意を払ってか、決して飛び掛かったりはしない。

その後、ミュウは苦しい状態のまま、力を振り絞っていつも私たちと一緒に寝ていたベッドへと自力で飛び乗った。今はこうちゃんが添い寝してくれている。ゴマが心配そうに寄り添い、ミュウの背中を舐めていた。偉いね、ゴマは。昨日までは、撫でるとゴロゴロ言ってくれていたものが(それまでは、目が合えばそれだけでゴロゴロが始まった)、今はもうゼイゼイという息遣い以外は聞こえない。

ミュウは誰よりも体力がある。心臓と肺を患っている以外は、腎臓も肝臓も正常だし、コレステロール値も血糖値も正常だったのだ。この歳の猫にしては、そしてあの肥満体にしては、素晴らしく健康優良児だ。そうあるべく育てたつもりだが、しかし肺炎は未然に防いでやれなかった。そして既に3年前、慢性の肺炎と診断された時も、薬を経口投与出来ない子だったので、抗生剤による治療は諦めてしまったのだ。私のせいだ。物凄く悔いている。

しかし、プロポリスで炎症を食い止めさせたいと願って続けて来た。効果はあったと信じているが、何かを契機に突然悪化した。多分それは、心臓の壁の肥大だろう。でもきっと乗り切ってくれると、まだ信じていたい。ミュウだって私をとても愛しているはずだから。

こんなに苦しそうなのに、今もとても可愛い顔をしているミュウ。こんなに可愛い猫は、世界中どこを探してもいるはずがないと思う(飼い主は誰でも、自分の猫をそう思うのだが)。

今年も多くの猫が亡くなり、私からも多くの飼い主を励まし労わってきた。今もミュウと同様に闘病中の子を抱えた飼い主がたくさんいる。ロイもほぼ同様の状態だ。みんな辛いだろうと思う。そして辛かっただろうと思う。そんな人たちと比べても、私は遥かに弱虫だ。夢ならば早く醒めて欲しい。こんな現実からは逃げ出したい。でもミュウはまだ苦しい息を続けているし、私も決してこの現実からは逃げ出せない。

長々と書いてしまったが、こうちゃんと交代しては7時間もかけて数行ずつ書いたものだ。ミュウに密着しているだけでは苦しくて、何かをしないではとてもいられない。こんなに苦しいのは生まれて初めてだ。

ミュウと暮らし始めて間もなく、前夫と別居して離婚した。築いては壊す繰り返しの人生に嫌気がさし、そして誰からも必要とされていないと勝手に思い込み、自分の存在意義が解からなくなってしまって、もう生きていたくなかった。疲れてしまったから死にたいと思った(何と言う甘ったれた事を!)。でも、私にはミュウがいた。私を信じきって、私を求めてくれていた。ミュウの為に生きる事にした。そして生きる目的は、やがて自分が行動する事で次々と見つけた。生きていて良かった。

私が今あるのは、ミュウのお陰なのだ。

今日のにゃんこ

ぼくの名前は、次郎!。生まれて3ヶ月ちょっと。体重も1.5kgを超えて、拾われた時の4倍以上大きくなったよ。

男の子で、お兄ちゃんが一郎って名前だったんだ!判りやすい名前でしょ。でも、僕としてはもうちょっとセンスのいい名前が良かったかな〜?

お母さんも、お兄ちゃんも、妹達もみんな、新しいお家に行って、楽しく幸せに暮らしてるんだけど、なんでか、僕だけがまだ決まってないんだーーー・・・誰か僕を、幸せにしてくれない??

僕の募集は、募集コーナー No.236-959で詳しく見てね。

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