今日は朝が辛かった。起きようとしても、瞼がくっついてしまっていたのだ。

眠くて仕方ない事を「瞼がくっつく」と言うが、そういう事ではない。本当に物理的に瞼がくっついていたのだ。ヘルペスウィルスにやられて目が塞がった野良猫の気持ちが少し解った。

しかし私の場合は水で瞼を洗い、目薬を点したら瞼だけは直ぐに開いた。しかし目の曇りがなかなかとれない。目やには出ていない。そういう炎症とは違うのだ。



始動して直ぐの目や手足の不調は、どうやら愛車にも伝染するらしい。それも寒い時期に起きるところまで似ている。ハンチングとまではいかないのだが、家を出て直ぐに急勾配の坂をローギアで下りるのに、最近エンジンブレーキが利かない。暖気運転してエンジンが温まってからでないと、そういう現象が起き易いのだろうか？



ラボに着くと、みーちゃんだけが出て来てご飯を食べた。ぶーちゃんがいない。

実は今日、ミュウでもゆったり入れる大きさのトラベルキャリーを持参していた。そう、ぶーちゃんを迎える為だ。さんざん迷ったけれど、みーちゃんがここで穏やかに過ごせる為にも、そしてエイズキャリアと判っているぶーちゃんに少しでも良い環境を与えてやる為に、うちの子にする決心をした。

こうちゃん、またしても私の我儘を受け入れてくれて有り難う。ズボラで「何匹でも連れて来て良いよ」と言う男ではない。我が家のキャパシティをきちんと考えた上で、１匹増える事のリスクとのバランスをきちんと計り、そしてまた少し余分に努力すれば済む事だと判断してくれたのだ。

へっへっへ、男の器の大きさが判るね。私は幸せだなあ・・・。



しかし当のぶーちゃんがいない。１時間おきに外の様子を見ていたのだが、昼を過ぎても鳴き声も気配もない。次第に心配になってきた。どこかのキチガイに虐待されたのだろうか？車に轢かれてしまったのか？それとも猫獲りにやられたのか？

パーテーションの向こうのアライさんには「オデコが心配そう」だと言われる。



しかし、ようやく３時頃になって出て来た。直ぐに抱き上げて頬擦りしてしまう。鼻の奥がツーンとした。

猫の事となると、どうしてこうも過保護で心配性なのかと自分でも滑稽になる。あと数時間、待っていてくれるだろうか？その時点でキャリーに入れてしまっては可哀想だ。就業時刻までの間、何度も研究室を抜け出して様子を見てしまった。



５時過ぎて外に出ると、ぶーちゃんは鳴きながら近づいて来た。抱き上げて、キャリーに押し込める。あまり抵抗せず、無事に身柄確保出来た。良かった。これで今日からはうちの子だ。

帰り道、心細げに鳴き続けるぶーちゃんに「もう直ぐだよ」「うちに帰ろうね（初めての家に帰ろうと言われても、ぶーちゃんも困るだろうが）」と言い続け、「あ〜う〜」と鳴けば「あ〜う〜」と応えて、１時間ちょっとでやっとこさっと家に辿りつく。

クラクションを鳴らして、こうちゃんを呼びつける。「病院に行こう！」



マツモト先生には、先日去勢し全身スクリーニングして貰ったあの子です、うちの子にしますので！と宣言し、７種のワクチンを打って貰う。駐車の時にも騒がなければ、おとなしく爪も切らせたし、何ていい子なんでしょ、うちのぶーちゃんてば。さあ、今度こそ家に帰ろうね。



数日前まではペリー＆イオ部屋だった玄関脇の洋間を、ぶーちゃんの為に準備しておいた。隠れ場所としてだけのケージ、布張りの長椅子、電気カーペットにボアの猫ハウス、新品のトイレ、そして新品の熊ちゃん柄の毛布。ぶーちゃんは戸惑っていたけれど、蒸しタオルで身体を拭いてやると、ゴロゴロと喉を鳴らして、私の脇に顔を埋めてじっとしていた。何て可愛いのだろう。

ナチュバラの缶詰とドライ、そしてお水を置いて、しばらくそっとしておく事にした。

ガラス戸の向こうで、カワムラの鼻息が聞こえる。「ゴゲッ」「ンガッ」・・・本当にいい奴なんだよな、カワムラって。新入りに優しいからね。でも当分は隔離だよ。

今日良く見て貰ったら、シラミの卵の抜け殻があったし、腸内にはどんな細菌がいるか判らないからね。一通り全てのプロセスを経て、これで安心というところまで行かなければ、誰とも一緒には出来ない。何たって、ぶーちゃんもエイズキャリアだし、ルス･リマもキャリアなのだから。どちらのストレスを大きくする事も避けたいし、どちらにも余計な黴菌やウィルスと接触させたくない。



これで晴れてぶーちゃんは川口ぶーちゃんとなった。

奇しくも、今日はミュウの四十九日である。実は忘れていたのだ。昨日、今日とお花が届き、掲示板への書き込みで気づいたのだ。ミュウがぶーちゃんを我が家に導いてくれたのだと思う。

ぶーちゃん、ミュウがこの家の王様なんだよ。解かるかな？解かんないだろうなあ。



これでミュウを含めて１３匹。ミュウとぶーちゃんだけが、贅沢にも個室待遇だ。久し振りでミュウの写真をフォルダから拾い出すのに、こんなにも辛い思いをするとは・・・。

みーちゃん　　私の車の上　　Nov. 27, 2003

さて、ぶーちゃんの部屋に行ってやろうかな。