丑三つ時に新聞紙トイレを作り直し終え、「おやすみ」を言ってぶーちゃん部屋を去る。新聞紙を裂いている間、ずーっと高い声で「お〜い」と呼び続けて待ちかねていたカワムラさんの部屋へ移動する。
おもちゃでカワムラ部屋の猫たちと遊んでいたら、最初は控え目にしていたガラが次第に調子が出て来て、おもちゃ独り占め。猫釣りタイプの糸の先の玉をくわえて、う〜う〜唸りながら、どこかへ運び去ろうとする。そうは問屋が卸さない。みんなで遊ぶんだよ・・・と言う私と綱引き状態だ。何と噛む力の強い事。
遊び終えてみんなで寛ぐ。部屋の真ん中で私がゴロリとすると、全員が周りを囲んでくれる。手の届くところに全員が居る幸せ。ガラだってこちらの姿勢が低いと安心するのか、手を伸ばしても逃げない。手を目一杯伸ばして撫でていると、その手をおもちゃにして遊ぼうとする。私の指を抱き抱え、猫キックもする。針のように細い爪が食い込んで痛い。しかし爪切りをする程には、まだ接近させてくれないのだ。
カワムラは私の腕の付け根に頭を乗せて、あっと言う間に眠ってしまった。困った、動けない。一頃と比べたら、格段に寝息が静かになったカワムラ。「ぷぷー」とか「くぷー」とか言いながら、他の猫の追随を許さないとばかりに私に密着して眠る。あのね、カワムラさん。床の上で私は眠れないのよ。こうちゃんが2階のゴミをまとめて下りて来た気配で目覚めたカワムラ・・・「ごめんね、またね」と言って入れ替わりに私は2階へと戻る。
4部屋を行ったり来たりしながら、出来るだけどの子にも公平に声を掛け、撫でまわし、抱ける子は抱き、与えると共に与えられている。多分、与えられているものの方が多いだろう。出会いときっかけは様々だったけれど、どの子も愛しい我が子だ。仔猫で出会った子もいれば、大人でやって来た子たちも多い。今ではどの子もすっかり家族として、私達や家に馴染んでいる。
カワムラだって、私が知らないだけで、小さな可愛い仔猫の時があったのだ。出会った時に既にジジイ然としていたけれど、本当の歳すら解からない。どんな人が飼っていたのだろう。去勢までされていた。しかし可愛がられていた事は解かる。飼い主が捨てたのではないと思いたい。それではカワムラが可哀想だから。
しかし今となっては、彼は私を少なくとも自分の部屋では最優先で独占する権利を自覚しているようだし、実際彼の部屋では彼が最古参。2階の6匹とは隔絶されている別世界なものだから、カワムラはかつてのミュウと同じで一人っ子の状態を2ヶ月も味わえたのだ。汚い顔をしたエロ爺・・・などと言ってはいるが、後から後から入れた子たちを大切に可愛がって育ててくれた功績を別にしても、愛しさは格別だ。
それは他の子より可愛いという意味ではなくて、自分の手で保護して家に入れられる幸せは格別という意味だ。迷わず手を出せた自分を当たり前に好きでいられるし、自分のしているエサやりや避妊に対して自分が与えるご褒美みたいなものだもの。そしてゴマとカワムラさんが私のステージの節目となっている事は確かだ。