ペリー

暗い床の上で

Sep. 16, 2004

2004年9月16日 木曜日

毎日、野良猫の相談が寄せられるものにせっせと返信しているのだが、ご相談者の心情として典型的で、且つよく表現されているものを、返信と共にひとつご紹介したいと思う。

相談者→川口

お忙しい所を、申し訳ありません。どうすれば良いのか、迷いましたので、出来るだけ良い形を探すべく、メールを出させて頂く事に致しました。

一匹、二匹でなく、大勢居る場合は、どのように考えれば良いのでしょうか?

先日、青梅の食べ物屋さんに行きましたところ、店先にたくさんの猫が居て、それが所謂、無責任な餌やリの結果のようなのです。店のまえに一群、窓側に一群、ほとんどが今年の生まれで、中にはきれいなコも居ました。

小さいのは目がしょぼしょぼで、窓のしたのトタン屋根の上でおしっこをして、その横で死んだように寝ていたりで、可愛いというより目を背けたくなるようでした。

店の中は大型の空気清浄機がつけてあるので、外のにおいはわからないようになっていましたが、窓ぎわはかなり強烈でした。

食事をすませて帰る時には、おじさんが、ねこだったら、いつでも捕まるから持って帰って、というような事を言っていました。増えて困っていると言うのが本音では無いかと思いました。餌は牛乳を与えている所を見ましたし、一緒にいった者は、刺身のような物をやっていたと申しております。悪い人でも無く、ただ、猫に対しての認識が違う、というのでしょうか。

本当はつれて帰ってきたかったのですが、その日に帰る家にも高齢の猫がおり、何か病気でもあれば責任問題なので、当日は諦めました。二匹ぐらいは家でも面倒見る覚悟はついておりますが、如何せん、あの群れの事を思うと、どうすればいいのか、思うだけで途方にくれます。

また、我が家は荒川区なので、いつでも行けて細かく面倒を見られる訳でも無く、この私でも出来る事は何なんだろうかと。取りあえずは、自分のところの分だけ連れて帰るだけで良いのか、あの、うじゃうじゃいる猫の事は目を瞑るのかとも、迷っています。

皆さんのやっていらしゃるように、里親さがしをする所まで根性があるのかないのか。

まる投げ、お断りと言われるのを覚悟で、やはり聞いて頂きたい、どなたかやれる方にでも知って頂きたい。

怒られるのを覚悟で、メールを送りたい。怒られるくらい、あの猫達がもっと良い環境に行かれるのであれば、構わない。まず避妊手術をしないと、永遠にこの連鎖は続く訳ですよね。かといって、今、思っている事は、ただのおせっかいかもしれません。

とにかく、お忙しいのは判っているのですが、今までもやって来られた経験上から、どう考えていけば良いのか、一言ヒントを頂きたくメールさせて頂きました。

また、そういう訳で、そういった拾った猫の健康診断を親切に、適切な検査をしてくれるお医者の情報があれば、有り難く、知りたいですし、たとえ無い場合、お医者にどのような、検査をお願いすれのが一番良いでしょうか?我が家に連れて帰る方は、近所でも良いかと思いますが、捕獲した所に近くで短時間でやって頂いた方がいいのでしょうか?

色々な考えかたがあって、出来ない事もたくさんあると思いますが、やれるか、やれないか、やるとしたら、どうゆう風にするのが、猫の為に一番良いか、お教え頂けると、嬉しいのですが。

勝手ばかり申して申し訳ないのですが、よろしくお願い致します。 なにか、ご不明な点や疑問な点等ありましたら、ご指摘下さいませ。どうぞ、よろしく、お願い致します。  
川口→相談者

地域猫として避妊とエサやり、糞掃除や個体管理などを行うには、やはり核になって動く人が必要です。最初は近隣からの協力が得にくくても、続けているうちに理解者や手伝ってくれる人が現れるものですが、そこに至るまでの期間がどれ位なのかは、保証出来ません。

しかし避妊を続けて行けば、その事に関する広報活動は必ず必要となって来ますので、地域へのチラシ配布や直接の説明・説得などした方が良いだろうと思います。

たとえ週に一度でも通い難い場所の野良猫のお世話は、よほどの根性がないと無理です。

例えばこれまでにも、旅行した先の観光地で見かけた悲惨な状態の野良猫をどうにかしたい・・・という相談がありましたが、残念ですがどうにも出来ません。

愛護団体によっては、ニュース性があれば被災地などに出掛けて、取り残された動物を救出しているところもありますが、全国津々浦々どこにでも存在する野良猫を何とかして欲しいと頼んで動いてくれる団体はないと思った方が良いでしょう。比較的よく動く小さな愛護グループは、既に必要に迫られてグループ化して手一杯の事をしているはずです。

お聞きした件は、地元に可哀想な野良猫を何とかしたいと思う人が現れて、自分が中核となって(あるいは最初は一人ででも)動く覚悟がないと解決はしないと思います。しかし実情を見てしまった以上、それを何とかしてやりたいと思う優しいお気持ちは本当によく解かります。

貴女の済んでいる近所にも、必ずたくさんいますよ。エサも十分に貰えていない野良猫、虐待に遭っている野良猫、置き去りにされた元飼い猫、外飼いされていても避妊されておらず、仔猫が生まれれば見捨てられるかわざわざ離れたところに捨てに行く人たち、そして生まれれば愛護センターに飼い主の手で連れ込まれて殺されている仔猫たちが、知らないだけでたくさんいるのです。

私も同様です。私は2箇所のエサやりをしていますが、両方一度に回ろうとすると、夜中に車を走らせないと片道2時間以上もかかってしまいます。

しかしそんな私に、どこそこにこんな悲惨な野良猫がたくさんいます・・・と知らせてくれる人たちもたくさんいます。しかし仮に寝食も忘れ、家の猫たちもほったらかしにして、仕事もせず、そういった猫たちの事を知ると全て捕獲に行っていたら、私はあっと言う間に破滅するでしょう。

私だから出来るという事はひとつもありません。私も皆さんと同じく家庭を持ち、仕事を持ち(今は失業中ですがいずれ復帰します)、病気の猫を抱え、寝る時間もほとんどとれない、しかも難病持ちの中年女です。全国からのご相談は、日に何十件もあります。出来る限り真摯にお返事しているつもりですが、どんどん溜まっていく一方です。これ以上手を広げる事は、全てを放棄するのと結果的には同じ事になります。

つまり、私もたくさんの猫を見捨てている・・・という事です。

自分に出来る事から始める、そして自分のキャパを広げる努力は続ける、その結果が我が家では18匹の飼育と、野良猫20匹程度のエサやりまでに至りました。しかしこれ以上は不可能だと解かっています。今でも夫婦共に死にそうな位ですから。

貴女に捕獲器をお貸しする事も出来ますが、何ヶ月かかけて毎週1匹ずつ、ボランティア獣医(それはお教えします)にコツコツと運ぶ事が出来ますか?キャリーバッグ程度の大きさの捕獲器ですから、もちろん電車やバスで運べます。一度に多くの捕獲をする場合は、捕獲器の台数も集められますし、その時には搬送のボランティアも求めますし、場合によっては資金も支援します。しかし核になって動くのは、あくまでも貴女であるという事です。その程度の支援ですら、ただの個人である私にとっては、実際にはかなりの努力が必要です。

今までのどこの捕獲プロジェクトも、捕獲が生まれて初めてというご相談者が核になって行われました。それ以外のやり方は、私ではご相談に預かれないのです。

もしそれがご無理であれば、見捨てるしかありません。しかしそこから1匹でも連れ出してご自分で飼うという事であれば、野良では生きていけないようなハンディのある子、病気の子、これから生まれる仔猫などが望ましいでしょう。

抱ける子でも、いざキャリーに入れようとすると暴れて入らないケースが多いので、捕獲器は必要かと思います。

保護なさったら、その足で病院です。そして仔猫であれば検便とノミ駆除、駆虫にワクチンを済ませて貰い、ご自宅に連れ帰ったらケージで隔離。3週間後に2度目のワクチン、その後1週間程度経過すれば部屋に開放しても安心でしょう。

大人猫であれば、ご心配であれば血液検査。但しエイズと白血病だけ検査しても、伝染病というのは山ほどありますから、ネガティブな意味ではあまり意味ないと思います。今後のケアの方針を決める為には、検査もプラスかと思いますが。

高齢の猫にはワクチンを接種していますか?高齢というのが何歳なのか書いていないので解かりませんでしたが、もしどうしてもストレスになるようであれば、たとえ野良猫だろうがペットショップの猫だろうが同居は無理です。でも、10歳を過ぎてからの猫嫌いのアインに、ゴマやジャム、マルコを毎年立て続けに同居させた経験から言えば、どんな子でも同居はさせられます。それが出来ないのは、私も含め飼い主の根性が足りない場合が殆どです。

5年前、我が家には純血種の高齢の猫が3匹いて、最初は野良猫を同居させるなど考えられませんでしたが、きちんとケアしていけば問題ない事を身を以って知りました。その後は「猫雑記」でもご存知の通りです。

但し、その地域の猫を1匹でも引き取ると、その子の出身の地域のほかの野良猫が気になって仕方ないのも人情です。それも充分に実感しています。

捕獲した野良猫たちの避妊にかかる費用、協力獣医の候補などは、メールでご連絡致します。その上で、今後の方針を考えてみて下さい。

もしもその地域の野良猫たちを見捨てたとしても、もっと近くのご自分の足元で野良猫と関わって下さる方が、私は建設的だと考えます。その地域に手を出せなかった事は、いつまでも貴女の心の中に悔いを残すでしょう。

もう一度言いますが、日本全国、全ての市町村の路地裏や公園、庭先や駐車場に、悲惨な野良猫はたくさんいます。全ての猫を救う事は不可能ですが、たとえ小さな事からでも行動し始めて戴ければ嬉しいです。

私にも、自分では何も出来ないからせめて支援金だけでも・・・と思って、団体に賛助会員としてお金だけ送っていた時代もある。エサやりだけしていた時代もあるし、やがて誰に教えられるともなく避妊の必要を感じて行った。

不幸なものを見ていたくないという気持ちが、自分自身に行動を促したに過ぎない。私は普通のサラリーマンで主婦だったし、普通以下の知力・体力・経済力しかなかったと思う。そして性格的にも決して強くはないし、迷いも多い弱い人間だ。

その私にでも出来た事は、多分誰にでも出来る事なのだと思っている。やるかやらないかの違いだけなのだ。私も弱かったから迷う気持ちは解かるし、そして決断するためには協力したい。それ故に、おこがましくも受けている相談なのだが、残念ながら全てに返信出来る時間がない。

もしも「避妊」とか「捕獲」というキイワードで検索して、掲示板に辿り付いたとしても、どうか本サイトを見て戴きたい。私の考えは全て書いているから。これまでに同様の相談をして、一人でたくさんの野良猫の避妊を実行に移した人たちは数え切れない。その人たちが、今ではアドバイザーとなってくれてもいる。私の周囲だけで見れば、数年前とは段違いに広がっているのだ。

人を「育てる」など、神様でもあるまいしおこがましい・・・と罵詈雑言を投げつけた「仕事をしていない無収入の愛護活動家」がいたけれど、人は人や社会が育てるものなんだよ。僻み根性で屁理屈言うのはみっともないし、健康な若いモンが働かないで自分の活動にまで支援金を募るのは恥ずかしいと思いなさい。

イオ

明るい窓辺で

Sep. 16, 2004

昨夜から煮込んでいた豚肉のスープが、ことのほか美味しく出来た。生活クラブ生協で毎週、塊の豚肉(部位はその時その時で色々)をとっているのだが、これがスーパーで買う豚肉と比べるとずっと美味しい。鈴木さんが言っていた通りだった。厚めにスライスしてポークソテー(肉にからめるソースは大抵、リンゴの擂りおろしと醤油、酒を混ぜる)にしたり、大き目のブツ切りを柔らかく煮込んでデミグラスソースのシチューにしたりしていたのだが、昨夜はトマト味のスープに仕立てた。

たっぷりの厚さ(3センチ位)にスライスし、先ずは両面ソテーしてからスープストックで煮込む。ストックが無ければ、スープキューブ(固形スープ)を入れたお湯でも良い。どうせ朝まで起きているのだからと、焦らずにトロ火で3時間は煮込んだだろうか。それから炒めた玉葱とセロリ、缶詰のザク切りトマトをたっぷり加えてまた1時間程煮込む。最後に乱切りにした人参とじゃが芋を加え、それが柔らかくなったら塩コショウで味を調えておしまい。そのまま数時間放置しておくとじゃが芋や人参に味がしみる。食べる寸前に温める。

ポトフをミネストローネ味にして、豚肉の塊がたっぷり入ったものと想像して欲しい。スプーンで肉の塊が繊維に沿ってほどけ、玉葱とセロリの溶けたほんの僅かな軽いとろみ、崩れる直前のじゃが芋、柔らかく甘い人参、そして肉と野菜のエキスが渾然一体となった深みのあるトマト味のスープは、トマトの酸味が殆ど消えていて胃にも優しい味だった。寸胴鍋にたっぷり作ったけれど、朝・昼・晩と二人で食べたら、もう殆ど残っていない。また作ろう。飽きるまで繰り返し作る馬鹿だからな。

アインが調子良くない。激しく吐き、顔色が黒っぽい。傍にいて、毒消しのお茶とキドナをゆっくりと飲ませるしかない。そしてジャムの「遊ぼうよ!」攻撃から守ってやらないと。

前日の「猫雑記」へ 翌日の「猫雑記」へ


月別INDEXへ戻る

「猫雑記」INDEXへ戻る

inserted by FC2 system