マルコ

顔の割に悪党

Nov. 10, 2004

2004年11月10日 水曜日

実は新たに猫を家に入れようとして、ミヨコに怒られた。

きっかけは「お山」の猫が2匹死んだと知った事だ。そこで身体を張ってエサやりしている訳でもない私が悲しむのは、エサやりしている人に失礼だと思うが、馴染みのある猫だったので辛かった。去勢が終わって退院した日、リリースするのに同行した猫だった。人懐こくて通行人の足元をチョロチョロ付きまとい過ぎて、故意にではないにせよ蹴られてしまうような猫だった。惚けた味のある奴で、リリースした日からずっと気になっていた。

引きとろうかと思った事も何度かあったのに、後回しにして他の猫たちを家に入れ続けて来た。公道ではなく敷地内に乗り入れる車に轢かれて死んだらしい。血だるまで警備員に発見されて、ゴミとして片付けられてしまったと聞いた。こんな風に書く事を躊躇っていたけれど、漠然と思っていただけで引き取らなかった私が死なせたように思った。

同時期に、もう1匹が死んだ。こちらは死因は不明。これも人馴れした猫だった。私も何度か撫でて名前を呼んだ。誰かの手で横たわらせたような状態で発見されたと言う。この2匹の死を、この場や掲示板で書く事は、多分ミヨコは望まないだろうと思って控えていた。週に一度ずつエサやりに関わってくれている人たちと、毎日朝晩きっちりと通ってケアをしているミヨコの気持ちを思うと軽々しくこの件に触れてはいけないと自戒していたけれど、どうにも表現出来ない堪らない気持ちに圧倒された。

そこから発想が飛んだ。誰かを引き取らなければいけない。決してあの場所が危険だからという亊ではない。一時の感傷に耐えきれない私が弱いだけだ。しかし、その提案は一蹴された。この弱さを克己しない限り、家の猫は増え続けるのだ。もはや限界を少し超えている事は、お互いに解かっている。40匹も80匹も保護している人がいると聞くが、私達にはそういう飼い方は出来ないのも解かっている。

ミヨコの悲しみなど、私とは比べ物にならないだろう。どんな事があろうと365日、雨風に打たれ蚊に刺され、心無い人間に罵られ、通行人に挨拶と笑顔をふりまき、誰にも真似が出来ないような努力でエサやりを続けている人に、私が「悲しい」等とは安直には言えない。誰にも「お悔やみ」も言われたくはないだろうと理解する。愛しく思い大切に思っていなければ、あそこまでの事は出来ない。世話をした人間だけが、本当の悲しみを知っている。

しかしミヨコは言った。
「1週間に大事な大事なメンバーに逝かれ言葉もないのだが、やることは変わらない。泣いている時間はない」

その言葉はとても良く理解出来る。私もそうするだろうし、そうして来た。ミュウが死んで、何もしたくなかった。生きているのも嫌だった。だけどそんな甘えは自分に許していられない。生きている子たちと、生きている自分とに責任がある。その時点で関わっている事への責任もある。一人で感傷に浸っていられるような子供ではない。やるべき事は解かっているのだから、黙々とやるだけだ。解かっていてやれないのは、ただの弱さと甘えなのだから。

マロとアキラ。どちらも野良とは言え、なまじの家猫よりも幸せだったと思う。ミヨコとエサやり仲間たちの想いと実践は、あの子たちに行き届いていたのを知っているから。幾つもの死を乗り越えて、今のミヨコの強さがある。私なんか情けないガキだ。せめて、感傷に浸って立ち止まらないようにはしたい。それでは恥ずかし過ぎるから。

外の猫たちと関わる事は感傷で始まったとしても、感傷だけでは破綻する。この苦しさの中で踏み止まれる強さと厳しさ、冷静なバランス感覚がどうしても必要だ。私に欠けているのは、その厳しさなのだろうと思う。詳しくは書きたくないが、ミヨコにこんこんと説教された。

という事で、我が家に2匹迎える計画はあっけなく頓挫した。意地と勢いで増やせない事は決してないし、みーちゃん部屋に2匹入れる準備も始めたのだが、ミヨコの私への思いやり(のようなもの)で引き戻された。しかし何もしないで悲しんでいるのは嫌だ。何かをしないでは、この思いは行き場がなくなる。但し私にとっての「何か」には、「署名」とか「広報」等の机の前に座って出来る綺麗な作業は含まれない事も自覚している。

今はジーコとアインの介護に手を抜けないどころか、自分の身体もままならない状態で、決して大きな事は言えないのだが、自分にもう一つ課題を持たせないといけない。私はやるよ。
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マルコは可愛い顔をしている。タレ目で臆病、しかし実は結構なワルでもある。最近は、ご飯とトイレ、私達が部屋を出ている時だけケージで安心していたいらしいが、それ以外の時は出窓の猫ベッドかジーコ用の大型キャリーの個室の1つを占領している。時々、ジャムの様子を伺ってはケージに自発的に戻る。その時、焦ってドカドカと大騒ぎして戻るので、ジャムがどこで寝ていても律儀に駆けつける。「馬鹿だね、マルコは」と、毎回こうちゃんと笑う。

こうちゃんがケージの中のトイレを掃除してやっていると、ウンコし終えたマルコが上の段から頭を叩くらしい。こうちゃんは、マルコに舐められている。引き取ったばかりの頃、水の容器を捧げ持って飲ませてやったりしていたせいだ。すっかり奴隷だと認識されているのだ。私もこうちゃんに負けず劣らずヘコタレだが、一日中何か喋り続けているマルコには、なるべく威厳を持って接するようにしている。「う・る・さ・い・ぞ!マルコ」と。

ぶーちゃんは、男っぽい厳しい顔をしている。いつぞやも書いたが、ジョン・マルコビッチが少し入っているような顔にも見える。なのにどうして、あんなに情けない性格なのだろう。マルコよりずっと高い細い声で鳴き、カメラを向けるだけでもペシャンコになってヘコタレてしまう。保護した当時の方が、ずっと態度も凛々しく堂々としていた。どうもタムの真似をしているのか、あるいはタムに教えられているようだ。「アンタ、もっとオドオドしなさいよ」と。
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ここ数日、頭痛が酷い。寝不足と目の酷使のせいも勿論あるだろうが、便秘の頭痛ではないかと勝手に判断している。頭痛があると、只でさえ憂鬱な宿題が全然やれない。牛乳もヨーグルトも野菜も効き目なし。そろそろ便秘に効くミックスハーブティーの出番かな。

ぶーちゃん

顔は凛々しい

Nov. 10, 2004

ジーコ、酷い吐き気が襲う。明日は輸液をして貰おうね。

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