《CAT'S EYES & CAT'S HANDS》猫雑記
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マルコ

相変わらず情けない

Feb. 2, 2005
2005年2月2日 水曜日

寒波到来で、各地で降雪があったようだ。南関東では雪は降らず、ただ寒いだけ。

数日間、水面下で調整していた事が確定的となる。あまり良いニュースではない。アンディが戻って来るのだ。

野村さんの気持ちも勿論だが、アンディの気持ちを思うとやりきりない。アンディは、今度こそ愛されて捨てられまいと、健気に努力していたのだ。里親さんも、その事は充分感じていらしたようだ。だからこそ、精一杯頑張るおつもりであったと思う。

しかしアンディという子は、とても不思議な猫である事は確かだろう。写真を見てお気づきの方はいるだろうか?何か「特別な」雰囲気を持つ猫であると感じる。それは奇しくも立証されたようだ。里親さんは、アンディの目が恐くなったと言っている。

それは「凶暴」だとか「妖しい」という意味の恐さではない。飼い主の心に直接訴えかける事の出来る、不思議なチカラのようなものなのだ。里親さんには申し訳ないが、飼い主の心が弱っていてネガティブな状態では、そのパワーには負けてしまうのだろうと思う。

ミュウもまた特別なチカラを感じさせる猫だった。だからこそ、私には失い難い自分自身の体の一部のような存在だった。

猫たちには本当に癒される。しかし癒される事は結果であり、それを目的として猫を飼ったら間違うだろう。心を持つ生き物を飼うという事は、飼い主に都合の良い事ばかりではないし、心を通わせる努力には尽きるところがない。

飼い主の都合ではコントロール出来ない(すべきではない)心を持つ猫をたくさん飼うという事は、正直に言えば苦労の連続だ。しかし、猫はちゃんと喜びや幸せ、そして癒しも与えてくれるのだ。努力のご褒美として。

特別な猫は、きっとどこにでもいる。受け止めてこそ飼い主の心も成長し、その「特別な猫」を享受出来るのだ。

アンディは再募集する事になった。野村さんと私とで、慎重にアンディの幸せを願って考え続けた結果だ。

どうかアンディがその健気な気持ちを裏切られる事なく、永遠の幸せを掴める為に、再度ご支援下さいますよう、改めてお願い申し上げます。

アンディの事に一応の結論を出した事で、久し振りで少し気持ちが落ち着いた。ジーコはいまだ予断を許さないが、きちんと観察とケアをしている。だから相変わらず寝られはしない。起きているついでに、PCは落として深夜のTVで映画「ロルカ、暗殺の丘」を二人で観た。

スペイン内線勃発直後に銃殺された、天才詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカ。ロルカは何故、内乱の中で殺されなければならなかったのか?ロルカの死を誰が望み、誰がロルカに向けて拳銃の引き金を引いたのか?

・・・というサスペンス仕立てではあるものの、シリアスで地味なドラマだった。ロルカを演ずるのは、アンディ・ガルシア。この作品では、私が名前を知る唯一の俳優だった。

少年のある日、ロルカの新作の戯曲「イェルマ」を観て心酔した主人公リカルド。彼は大人になってから詩人ロルカの死の謎を調べようと、内戦中に一家で亡命したプエルト・リコからスペイン・グラナダへと戻る。

内戦から18年が過ぎても、あの戦争の話題はまだタブー視されているフランコ政権下のスペイン、そしてロルカの名前すら口にするのが憚れていた当時のグラナダで、官憲の脅迫や暴力に屈する事なく、暗殺の真相に迫ろうとするリカルド。

リカルドでなくとも、ロルカの死はその後スペインにもたらされる「自由の抹殺」の象徴として世界中で捉えられ興味深いテーマなのだが、リカルドの真相を突き止めようとするモチベーションはもっと個人的なものであるらしい。そして真実を知る事は、あの内戦が持つ複雑な性格と、人々がいかに矛盾と弱さに満ちたものであるのかという事実を改めて彼に突き付けるのだ。

同性愛者であったとも言われるロルカは、リベラルでアナーキーな思想と作品とファシズム批判により、フランコ率いる反乱軍の「国民戦線」側に射殺されたと言われている。

スペイン市民戦争をご存知ない方の為にお断りしておくと、反乱軍と言ってもこの内戦に勝利するのはそのフランコの反乱軍である。

しかし事はそう単純ではない。無敵艦隊が敗れてから衰退の一途を辿って行ったスペインの、その後長きに渡る数多い権力抗争や政変の最終章として、この内戦を捉えるべきであろう。

いや、衰退はもっと昔から萌芽していたのだ。多分、その後のスペイン王国の栄華の始まりでもあるレコンキスタ(イスラムやユダヤを追い出した国土回復運動)が完了した1942年、スペインの衰退は既にスタートしていたのだ。

スペイン無敵艦隊が、専らスペイン船を襲っては金銀を強奪する「海賊」でありながら後にエリザベス1世にナイトの称号を与えられる事になる「フランシス・ドレイク」率いるイギリス艦隊に敗れ、スペインは次第に制海権を失い、新大陸からの金・銀が入って来なくなると、独自の産業を持たない王国は、当然の事として国力を失って行ったのだと言える。

レコンキスタ以前に700年もの間スペインを支配していたイスラムを排斥した(ユダヤも同時に排斥した)事で産業・商業力を失ったスペインには、新大陸からの強奪者としての地位がなければ何も自国の体力を維持出来るだけの産業がなかったのだ。

サー・フランシス・ドレイクもイギリス自体も強盗だったけれど、スペインだって強盗だったのだ。植民地支配など、所詮は強盗なのだ。自国の産業を育成する事をせずにいたら、強盗出来なくなると貧乏になるのは当然だ。

それでも王家は継承されていた。実質的な政治力は次第に王家から失われ、19世紀はまさに革命とクーデターの時代でもあった。

その最終章・・・フランコのクーデター以前のスペイン共和革命で共和国が成立した為、スペイン国王は王位を剥奪され国外に亡命した。この革命を成功させた共和国軍への軍事クーデターを起こしたのが、フランコ将軍であったという経緯だ。

こうしてフランコの蜂起により1936年に勃発した内戦は3年近くに及び、内戦終結後から1975年までの長い年月、スペインはフランコの政権下に置かれる事になる。元々はクーデターを起こした反乱軍であったのだ。勝てば官軍・・・まるで薩長のようだ。

1975年にフランコが没し、スペインは王政復古する事になるのだが、後継者として現スペイン国王ファン・カルロス1世(注1)を指名したのは、当のフランコであった。スペインというのは、変わった国だ。20世紀も半ばを過ぎてから王政復古した国など、果たして他にあるだろうか?

スペイン内戦は内戦当時から世界中のジャーナリストや知識人たちの強い関心事であり、ファシズムに対抗して民主主義を守ろうとする強い使命感から、人民戦線政府側への義勇兵として参加した外国人も多かった。

E・バーグマンとG・クーパー主演の名画「誰がために鐘は鳴る」は、まさにその人民戦線側の義勇兵としてゲリラ戦に身を投じたアメリカ人教授とスペイン娘の、束の間のロマンスを描いたE・ヘミングウェイ原作の映画だった。

また、ヘミングウェイ自身が義勇兵としてスペイン内戦に参加していた事はつとに有名であるし、他にも後にフランス文相となったアンドレ・マルローや「カタロニア讃歌」(注2)や「1984年」の著者ジョージ・オーウェルも参加している。

薀蓄のついでに言えば、ここでこうした各国の知識人が参加した義勇軍は「国際旅団」(注3)という。

スペイン市民戦争は複雑で良く解からないながらも、スペイン語とスペイン文学を専攻した者としては否応なしに勉強した。そしてロルカの作品はとても好きなので、どうしてもその時代背景として色濃く影を落としているスペイン市民戦争は、政治的な事にはまったく興味のない私ですら理解に努めようとして来たテーマでもあった。

以前にもここで書いた覚えがあるが、ロルカのロマンセ集は、今も直ぐ取り出せるところにある。本という物体もそうだが、詩そのものを頭から直ぐに取り出せる位、繰り返し愛唱した。

但し、卒論テーマはロルカのような現代文学ではなく、バロック詩人のゴンゴラを選んだのだが、それは尊敬する先生の研究テーマだったからに過ぎない。自力でゴンゴラの詩がバリバリ解読出来るようであれば、こんなところで「猫雑記」なんか暢気に書いてはいないだろう。

やっと本題に戻る。映画「ロルカ、暗殺の丘」である。今夜の放映は原語で字幕スーパーだったのだが、全ての台詞が英語で語られる。おまけにロルカの口から語られる詩までが英語では、全く雰囲気が伝わらない。

優れた音楽家でもあったロルカの詩は、彼の用いた言葉の響きでなくては、その感性は伝わらない。アメリカとスペインの合作だというのに、返す返すスペイン語で作られなかった事が惜しまれる。

それでも当事者たちの回想の中でのみ存在するロルカを演ずるアンディ・ガルシアは、いかにもロルカとはこんな人物であっただろうと納得させるものを持っていた。子供の頃に一家でマイアミに移住したとは言え、彼はキューバ人として生まれた。「ゴッドファーザー」のせいか長い間イタリア系かと思っていたけれど、スペイン系なのだ。

そりゃそうだよね、一作目でコルレオーネ家の長男ソニー役を演っていたのは、ジェームズ・カーンだ。ヤンキーぼくて、とてもイタリアンには見えない。嫌いな俳優ではないけれど、末っ子のマイケル役がA・パシーノだけに、長男は単純で馬鹿に見えてしまう。ま、そういう役なんだけど。

それにしても今日は、猫のアンディから俳優のアンディガルシアが繋がり、フェデリコ・ガルシア・ロルカと繋がっている。これは偶然。

ジャム

アタシも特別?

Feb. 2, 2005


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岩手より
里親募集!!










































































































注1:
このファン・カルロス1世は、1931年にローマへと亡命したアルフォンソ13世の孫にあたる。



注2:
今の時代は、こんな作品は読まれないのだろうか?私の学生時代には、これは必読のルポルタージュであったが。

注3:
その「国際旅団」の派遣母体は、コミンテルン(共産党情報局)であったという説が有力だ。
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