グロリア -GLORIA-

ジーナ・ローランズをご存知だろうか?私はこの映画を観るまでは知らなかった。美人ではないし、オバサンである。しかしハードボイルド作品の中で、これほどカッコいいヒロインにはお目にかかった事がない。リメイク版『グロリア』のシャロン・ストーンなど、顔を洗って出直して来いと言いたい。

物語は、組織の秘密をFBIに売った父親のお陰で組織に一家皆殺しにされた幼い男の子を、同じアパートに住むグロリアが救った事から始まる。というとリュック・ベッソン監督の『レオン』と共通するものがある。勿論『グロリア』の方が、製作は遙かに先だ。監督のジョン・カサベテスは、実はこの作品を『子連れ狼』に触発されて作ったという話を聞いた事がある。そして自分の妻であるジーナ・ローランズに、こんな素敵な役を贈ったという訳だ。

ジーナ・ローランズ演ずるヒロインの名は”グロリア・スウェンソン”。どうやら本名ではなく、彼女が”グロリア・スワンソン”(往年の女優だ)にあやかって付けたらしい。独身で大の子供嫌い、しかも彼女は少年の命をも狙う組織のボスの元情婦であった。その彼女が、やがて少年の為にボスと対決する事になる。

グロリアは逃避行のさなかにも、ウンガロの衣裳をとっかえひっかえ着替えているが、それはちゃんとスーツケースに着替えを詰め込んで持ち歩いていたのだ。ハイヒールで大股にカッカッと走り、手元も見ずにタバコに火をつける。躊躇せずピストルの引き金をひく。愛想笑いなどしない。まことに格好が良い。ジーナ・ローランズの魅力に触れるだけでも、必見の作品だ。つい私は、HPのプロフィールでもこの映画を好きなもののひとつに挙げてしまった位だ。

監督のジョン・カサベテスは俳優としてはかなりクセの強い脇役が多かった。記憶に残るところでは、『パニック・イン・スタジアム』でスワットの隊長を演っていたっけ。濃い顔のコワモテだったけど、少し前に亡くなってしまった。もっと色々な作品を観たかったと思う。

監督 ジョン・カサベテス
1980年
アメリカ映画
ベネチア映画祭グランプリ・主演女優賞作品


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