アイン
頑張る
Mar. 11, 2005 |
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2005年3月11日 金曜日
日記など書かずにアインに寄り添って居たいと思ったけれど、どこかで息を抜かないと、あまりにも長い緊張に耐えられなくなってくる。
全ての事から目を背けてアインと私だけの世界に没頭するのは、それはそれで危険だ。
とは言っても、暫くは複雑な相談事にはとても応じられない。
相談者にとっては小さな一件の問題でも、それが積もり積もって膨大なものになる。どんな時でも出来るだけ受けて来たけれど、今はろくな返事が出来なくても大目に見て欲しい。
でも、なかなかそうはしてくれないのが大半なのだが。
私なんか、切っても血も出ないと思われているのだろう。或いは、私にだけはコンスタントである事を要求しているのだろうか。
こういう状況の時、口先だけの人たちが離れて行くのを何度も経験して来た。
ミュウの時もジーコの時も。
それどころか、こういう時を狙いすましたかのように、神経を逆撫でしてくれる人たちというのもいる。
どうしてなんだろう。
何故、そこまで試されなければならないのか。愛するものを失う瀬戸際まで、勝手な言い草で煩わせないで欲しい。
しかし前向きに考えれば、そういう事があるお陰で、そうでない人達の善意や誠実さが有り難く感じられる。そして私もそういう人間でありたいと改めて思い、人の情けに感謝する事が出来る。
断っておくが、これは恨み言ではない。私にも緊急事態があり、弱音を吐きたい時があっても、滅私奉公出来ない時があっても許して戴きたいという願いだ。
私は公僕ではない。保護活動家ですらない。ただの普通の猫好き・猫飼いが、求められた時だけ問題解決を目指して手伝って来ただけだ。
そこを勘違いして欲しくない。 |
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昨日は一日、アインに呼びかけ続けた。生きて、頑張って、もっと一緒に居よう、愛してる・・・と。
私の勝手な願いだとしても、失いたくないのだ。
ミュウとジーコにもお願いし、神に祈る。
危篤状態だとしても、一縷の望みに賭けて、水分だけは与え続けた。
コロイダルシルバーのハイポテンシャル液を1〜2滴ずつ必ず加えた。タヒボ茶とタンポポ茶を交互に飲ませていた。どちらも重篤な状態の生き物に即効性があるものではないが、どうせ飲ませるならば水よりも身体に良いものをと思った。
昨日は殆ど目を閉じる事なく、苦しそうに時々体勢を入れ替えて、触られる事も拒み、浅い速い息をして目は虚ろなままだったが、今日の午後、叫び声を上げたので撫でると、小さいけれどゴロゴロと言った。
一日半ぶりのゴロゴロだった。
既に強制給餌を受け付けなくなって一日経っていたが、思い切ってまた給餌してみる。
少し飲み込めた。水分を定期的に入れていたのに、2日間一度もオシッコもウンチも出ない。
先生に電話してその事を告げると、利尿剤を飲ませたのに出ないという事は、腎臓で尿を作れていないのだろうと言われる。
ペットシーツの上で漏らしても良いようにしてマッサージしても出ないし、どんなに具合が悪くともジーコとアインはトイレでしかしないので抱いてトイレに入れてやるのだが、前脚だけで這いずって出て来てしまう。
尿毒症が恐いのと、後ろ足が萎えているという事は「血栓症」が起きているという事だろうから、その対処を試みて貰う気持ちになった。
昨日はもう数時間のうちに逝ってしまうとしか思えない程容態が悪かったのだが、無理をしてでも病院に連れて行くだけの気持ちになれたのは、今日は一筋の光明が見えたからだ。
アインの「ゴロゴロ」を信じて賭けてみよう。
真っ暗な雨の中、病院に向かう。
アインは時々悲鳴のような鳴き声を上げたが、キャリーの中で力なくうずくまっているだけだ。それが元気な時の通院に比べて、ストレスになっていないかのように見えてしまうから、馬鹿で勝手なものだな、飼い主なんて。
雨のせいか、患者が少なくて助かった。とても順番待ちしていられる状態ではなかったから。
今回、改めてレントゲンや心電図、そして血液検査などしたくなかった。
苦しみを軽減させてやれる事が少しでもあれば、それだけを望んでいた。そしてマツモト先生も、何も言わなくともそれは解かって下さっていた。
心音を丁寧に聴いた後、後ろ足の脈を調べた。
やはり脈がない。血栓症の特徴の一つだ。但しまだあまり足に浮腫みが出ていないので、今からでも血栓を溶かす薬を入れてみる事になった。
血栓症は、心臓で作られた血栓が太い血管に流れて行き、両方の後ろ足に分岐しる手前で細くなっている血管の部分に詰まるらしい。
だから両足に麻痺が出る事が多いのだそうだが、左足は辛うじて動かせている。
予後は殆どの場合大変に悪く、足が腐り、それが全身に広がる。
その為に断脚する場合もあるそうだが、麻酔のリスクは大きい。麻酔をする事で血圧が下がり、また血栓が出来易くなるらしい。
もちろん高齢で腎不全末期のアインには、麻酔そのものの危険も大き過ぎる。
しかしそこまでの予後を心配するだけの余裕や生存の可能性が出て来たという事なのだ。
どのみち血栓症を起こした心筋症の猫は、ほぼ助からないと言われているようだ。
今後は、激痛がやって来て苦しみ、それで安楽死を選択する飼い主もいると言う。
私は・・・私はどうするのだろう。
全てはアインとの話し合い次第だ。私は生きて欲しいと訴える。そしてアインはどうしたいのか、ちゃんと聞いてやりたい。アインと心を通わせていたい。
ミュウもジーコも心筋症だと解かっていたし、症状が家族間で見られる事、あるいは両親の片方が疾患をもっているだけでも疾患を持つ子供が生まれる事から、遺伝性の疾患であるとも言われる心筋症。
メインクーンやアメリカンショートヘアーでは、常染色体の優性遺伝の特徴をもって遺伝する事が解かっているようだ。心筋症で検索したという方が私にご相談を寄せて来られる場合の殆どが、アメショーであったのも事実だ。
嘆いても仕方ない。
出来る限りのケアはして来た。しかし「そのとき」が近づいていると思っても、諦められない。
今はまだ失いたくない。奇跡が起きて欲しい。
脱水は激しくないが、兎に角補液する事になり、ステロイドと抗生剤を注射、そして血栓を溶かす薬を飲ませて貰う。これで明日の朝まで様子を見る事にした。
再度聴診器を当てると、「ああ、もうゴロゴロ言っちゃってます(だから心音は聞こえません)ね」と先生が笑う。アインが診察台の上で、少しでもリラックス出来ているのだと思うと嬉しい。
急いで帰宅し、こうちゃんがアインをベッドに寝かせている間に、私はミュウとジーコに線香をあげて祈る。
手を合わせていると、「にゃんにゃん」と言いながらゴマが来た。ダイニングのドアを開け放していたので、ゴマがかつての自分の子育て部屋にやって来たのだった。
「ほら、ゴマもお祈りしなさいね」と言って抱き上げ、抱いたまま居室に戻る。
一度の投薬で血栓が溶ける事はあまりないようだ。
明日の朝、もう一度投薬するか、あまり容態が悪ければみせて下さいと言われている。
頑張って生きて欲しい。
私の為に生きて・・・とだらしない事を言ってしまう。アインの力に賭けよう。 |
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