《CAT'S EYES & CAT'S HANDS》猫雑記
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ゴマ

新女王

Mar. 14, 2005
2005年3月14日 月曜日

新しいが来た。

夜明け前の外は氷点下の寒さだったが、陽が上り、眩い光に満ちた朝になった。

今回の(厭な表現だが)臨終に際しても、ゴマは心配してアインに駆け寄った。

ゴマにどれだけの想いがあったのかは解からないけれど、こうちゃんがそれをアインの身体のほんの少し手前で制止した。こうちゃんは私とアインとの最期のときを、傍らでゴマと見守ってくれた。

私が勤め人であった頃は、殆どこうちゃんがジーコとアインの強制給餌をしてくれていたのだ。命を削る覚悟で、寝ずの介護を続けた。手を掛けたものがどれだけいとおしいものになるかは、私も充分知っている。「辛いな」こうちゃんも泣いていた。

ここまで濃密な付き合い方さえしなければ、失う苦しみは幾分マシなのかも知れないとも思う。でも私にはこういう飼い方しか出来ないのだから仕方ない。我が家の猫たちは、私達飼い主よりも全てに於いて文字通り格上で、彼らの気持ちは彼らのデメリットとなる場合を除いて全て優先されなければならない。「いけない」と肝に銘じなくても、そうしてしまうのだからこの奴隷飼い主は困ったものだ。

50に近い娘がこんな事をほざいていたら、実父は嘆くだろうが構わない。私が父に迷惑を掛けていない限りは、親子とて魂は別々のもので孤独なものだと教えたのは他ならぬ父である。父もそれを実践して生きたのだから、娘は娘で独自の価値観を強固に貫いても「天晴れ」と笑いながら死んで欲しい。(母の為にはまだ生きていて欲しいのだが、同時に母の負担は大きいのも事実だ)

アインはとっくに天に召されていたはずの子だった。生きているのが不思議な事だったのに、この1年は異常なまでに元気だった。ふと思う。ミュウがアインを生かしていたのかな。残して死んだ大事な息子のジーコと私の為を思って。

母親として、そして私の娘として立派に役目を果たし、今までの分の帳尻を合わせるかのように一度に激しい苦しみを伴なって息絶えたアイン。この後の私達の負担を無くすかのようにして、突然一気に逝ってしまったアイン。たとえ誰が何と言おうと、あの子はミュウとはまた別の神様になったと信じている。カトリックの信者の私が、イエス・キリスト以外を「神様」などと平気で言う事の矛盾。でもこれが自然な想いなのだから、私的には少しもおかしな事ではないのだが・・・。

私は流転する全てを厳然と受け止めるしかない小さな虚しい存在だが、せめて生き長らえよう。ミュウとジーコとアインが与えてくれた余命だと思うから。

アインがいなくなって一番変化したのは、ゴマの態度かも知れない。

私が寝ると、誰かが毛布をガリガリやっている。見るとゴマが「入れて」と言う顔をしている。毛布なんか軽いのだから勝手に潜り込めば良いのだが、必ず「入ってもいいでしょ?」と聞いてからでないと入らないのがゴマの慎ましさだ。



2階に置いている5個のトイレでは、誰がどこにするかがほぼ決まっていて、ウンチとオシッコ玉の位置で誰がしたと判断出来た。

とりわけゴマとアインは「自分の場所」に執着していたのだ。

ミュウは流石に「大王」と呼ばれるだけの事はあると唸らせる大らかさで、どこのトイレでも自由にしていたけれど、アインはこのトイレの右側奥にオシッコ、ゴマはこっちのトイレの手前真ん中に・・・という具合に、パターンが決まっていた。



それがこの2日間、まるでアインが見えない身体でトイレを使っているかの如く、アインの「場所」にウンチもオシッコもあるのだ。

しかしそれはアインの亡霊の仕業ではなかった。ゴマが、アインの魂を乗り移らせたかのようにして、アインの「場所」を占め始めた。

ベッドの寝場所も、アインがいつも寝ていた場所だ。



しかし元々、ゴマのオシッコはアインの寝場所にする事から端を発したのだ。この2匹は喧嘩にこそならないものの、きっと永遠のライバルだったのだ。5年以上ずっとベンチを暖めていたゴマが、ようやく自分で納得出来る主役の座を得た。

私達はこれまでも、ゴマにもジャムにもきっちり時間を割いてみっちり付き合って来た。幾ら介護でつききりとは言え、老猫たちは殆ど寝ていたから、その間は膝を独占していたにも拘わらず、自分が第一位であるという自覚を持てずに耐えていたのだろう。

今、この部屋の支配者はゴマだ。ジャムとマルコは図体ばかり大きくて、まるで我が儘な悪ガキのままだ。ゴマはその深遠な瞳で、この5年間を具に観察して来た。自分の時代が自然に訪れるまで、じっと雌伏して来た。私達は認めざるを得ない。ゴマが新しい「生きた」女王である事を。我が家で一番小柄なゴマ。そのゴマの時代がやって来た。

午前中は、早くもご相談の電話あり。

でも気分は落ち着いているし、身体も頭も重くない。昼近くにアベさんが来て、三人で月曜日恒例の1000円のランチ握り寿司を食べに出掛けた。

ランチタイムの寿司屋は、有閑マダムがカウンターを独占していた。見習い職人をからかっては轟くような大声で笑うご婦人たち。ランチビールを飲んでいる母娘。1000円のランチセットではなくて、お好みで握らせていた。トロやウニなんか食べている。ハゲたご亭主はきっと会社の近くの蕎麦屋でたぬきうどんか、400円位の仕出し弁当でも食べているに違いない。ウニ1貫420円・・・亭主ぶっ飛ぶ主婦の昼飯。

夕方、もう一人来客あり。しみじみと話し合う内容あり、想いは複雑。きっと誰も悪くない。勇気がないだけなのだ。しかし自分の弱さと対峙する勇気がない事は、果たして本当に悪くないのだろうか?他人の事までは私には解からないし関知したくないけれど、私は勇気を持ちたいと思う。

アインへのお心遣いのお花が増えて来た。魚眼レンズでもない限り、ワンショットでは収まりきれない。同じ方たちからこんなに短期間で再び贈って戴いてしまい、心から申し訳なく有り難く感じる。せめて前回同様ひとつひとつ丁寧にケアして、少しでも長持ちさせたい。

現在20個、しかしジーコにはまだ10個も及ばないのだ。おとなしいフリをして、隠れた実力者だったのか、ジーコ。油断出来ないな。いや、警戒もしないが。

祭壇風景
Mar. 14, 2005
3人家族水入らず
Mar. 14, 2005

祭壇左舷 祭壇右舷
注:今日現在だけでなく、後から戴いたものも追加しています。


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