トム
綺麗にして貰った
Dec. 7, 2006 |
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2006年12月7日 木曜日
「トム」の捕獲成功。
捕獲と言うより、もはや身動き出来ない程に衰弱していたので、素手でケージに入れる事が出来たというのが正しい。臭い。何かが腐った臭いだ。
現場は遠い。毎日通うにはちょっと過ぎる。12月で道が混んでいるという事もあるが、昼間の渋滞していない時間帯でも、片道1時間半はたっぷり掛かる。また明日に持ち越さずに済んで助かった。
私達も疲れたけれど、トムも辛かっただろう。道中、悲痛な、しかし小さな声で鳴いていた。
「トム」と声を掛けると、くぐもったかすかな鼻声で返事をしてくれる。私を覚えてる?2年半ぶりだね。
時々咳き込み、「ゴボッ」と口の中の血膿が飛び散る。物凄い臭気が車の中に立ち込める。
断末魔のような鳴き方までするので、病院に到着するまでに死んでしまったら・・・と不安になる。いや、絶対に助けてやるから、頑張るんだよ、トム。
ずっと姿を見せない月日が続いていたと言うが、ここまで状態が悪くなっていたからこそ、救いを求めてあの場所に戻って来たんだろうか。
もしかしたら、私の面影を求めて・・・なんて考えたりする。おセンチだからな、歳に似合わず。
いや、歳をとればとるだけ、好きなものへのこだわりが強くなり、センチメンタリズムも強まる・・・と言えなくもない。
2年半ぶりのトムとの再会は、とても大きな意味を含んでいる。
今日初めてこの目で状態を見たけれど、両目は目脂で潰れ、口の中は潰瘍だらけで腐って膿を垂れ流している。目脂が顎の下まで垂れているという報告だったけれど、そうではない、口の中から膿が流れ出ているのだ。
見る「目」が違うと、見える「もの」も違うという事か。
下痢も酷いようだ。脱水に及んでは、もう10パーセントを切るような状態で、それはもう致命的に近いと言う。今日がもう峠だろうとも・・・。
それでも補液とインターフェロンなどの治療をお願いして、入院させて戴いた。「触らせる子でよかったですね」と奥さん先生にも言われる。
撫でてやるとゴロゴロ言っていた。可愛いトム。
先生は私が自宅でケアする主義である事を知っているので、「どうします?通院にしますか?」と訊いて下さる。しかしトムにとっては、家だろうが病院だろうがどちらも初めての場所なのだ。
だとしたら、「食べられるようになるまでだけでも入院して集中治療しましょう」と仰る先生のお言葉に甘え、今日は入院させて戴こう。
そもそも突然の出来事だっただけに、連れて帰ってケアしてやれる十分な場所を、今はまだ確保出来ていなかった。
どの部屋にも免疫不全のキャリアの子が多いだけに、いきなり感染力の強いカリシやヘルペスウィルス最盛期の子を持ち込む訳にはいかないだろう。
感染力が弱くて空気感染や多少の接触では感染しないエイズキャリアなんかじゃ隔離の必要は無いと思うけれど、カリシやヘルペスは侮れない。そのあたりを勘違いしている人がいまだに多いのには驚く。
私はカリシウィルスが怖い。口内炎を起こすのはカリシウィルスだと知られている。口内炎だけの為に死んで行く子がいるのだから・・・防げるものなら防いでやりたい。
ワクチンが引き金となって、元々身体の中に潜んでいたカリシが活動し始めて口内炎を起こすという説もある。かと言ってワクチンで防げる病気も多いだけに、ワクチンをやめる勇気は私にはない。
うちの子にはワクチンをしているけれど、それでもワクチンが打てない子もいるし、免疫不全の子たちが、どれだけワクチンで守られるかは解からない。いきなりトムを、ケージ越しとは言え、同じ部屋には出来ないだろう。
雑多な、そして幾分矛盾した思いが渦巻く。でも悩んでいても時間切れとなり、決断しなければならない局面は必ずやって来る。
いつだって、突然、決断を迫られるのだ。
でもその時に、いつもオタオタしてばかりでは進歩が無い。不測の事態が起きた時、しっかり決断出来る自分である為にこそ、日々の積み重ねがあるんじゃないか。しっかりしろ、自分。
色々と検討した結果、幾分広いけれど寒々しい玄関ではなくて、とりあえず風呂場を工夫して「集中ケア室」にしようという事にした。
どうせ人間はシャワーで済む事だ。
浴槽にガッチリと蓋をして、その上にケージとトイレと猫ベッドを並べよう。
空気感染するウィルス(カリシかヘルペスだろうという事だが)があったとしても(実際あるに決まっているのだが)、シャワーで湯気を立ててやれば、加湿器と同じ原理で下に落とせる。そして寒くないようにと、遠赤外線の電灯タイプのヒーターもある。
私達がシャワーを使う時は、湯船の方まで湯が掛からないようにそっと浴びれば良いさ。
それより何より、そういう心配をする必要になるという事は、食べられるまでになって退院出来るという事だ。今はただ、トムが生きてくれる事だけを信じていよう。
後の事は何とでもするさ。今までだってそうして来たし、これからもそうするというだけの事だ。
1匹増やす事がどれだけの負担を増やす事になるかは、自分たちが一番知っている。エサとトイレと雨風防ぐ場所だけ提供出来れば良いという訳にはいかないのだから。
うちは猫の数が多いから、うちの子にするのは不幸だなんて結果にはしたくない。他人の評価など無責任なものだから気にもならないけれど、猫たちの気持ちだけはいつでも大事にしたい。
そして猫たちの気持ちは保護者である私達が一番解かってやれるようでありたいし、日々刻々その努力を怠らないようでありたい。
それには常に自分の頭を働かせて考え、自分の感覚を研ぎ澄まし、真剣に猫たちや問題と対峙する勇気と強さが必要なのだとつくづく思う。
同時に、雑多な意見や情報に惑わされず、本当に親身になってアドバイスしてくれている人とそうでないものとをしっかり見極め、真摯に受け止める姿勢も残していたい。
兎に角、トムを保護出来た事で、ちょっと力が抜けた。
朝起きた時は、1時間半位しか寝ていない事もあり気持ちが悪かった。大丈夫だろうか、私達・・・もう立てないんじゃないだろうか・・・と不安になる位、具合が悪かった。
でも、次第にアドレナリンが放出されて来たのか、パリパリと元気が出て来る。そして矢鱈とおなかが空いた。
夜には、頼んであった飯茶碗が届き、早速ゴマのチェックがある。 |
ゴマ
飯茶碗チェック
Dec. 7, 2006 |
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古典的な柄が、適度に野暮ったく、適度に洗練されている感じで、やっと念願のものが手に入った。嬉しい。
これは試作品なので、この世にたった一つの茶碗になるかも知れないとの事。その経緯に関しては、またいずれたっぷりと報告したい。
今夜はこの茶碗で、ご馳走を戴くのだ。 |
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夜、猫家事の合間にもう一度トムに面会に病院に行って来た。本当はうちに引き取って来たいのだが、機械で調節しながら点滴をしているので、難しいだろうと言われている。
トムは別室に一人で隔離されている。ホットカーペットを入れて貰い、今夜からは暖かい場所で眠れるね。
少し速いスピードで輸液を流していると言う。これでどこまで脱水が改善されるかですね・・・と先生は言う。
顔を綺麗に拭いて貰って、目が開いていた。口は拭いても直ぐに汚れてしまうようだ。
「トム、必ず迎えに来るからね」「頑張ろうね」と二人で交互に声を掛けると、ちゃんと返事が出来た。
カメラを向けても嫌がらない。いい子だ。
綺麗にして貰ったとは言え、まだ小汚い顔をしているけれど、私の目にはとても可愛く映った。
ハイポも与えて貰える事になっている。血液検査の結果では、エイズキャリアであるというだけで、他には特段悪いものは見つからなかったと言う。但し脱水の状態は、決して予断を許せるレベルではないらしい。
でもきっと元気になる。せめて自力で美味しいものを食べられるまでにしてやりたい。
返す返す悔しい。脱水が起きる程、どうして悪化させてしまったのだろう。私の餌場には、いまだかつてこういう子はいない。栄養状態が良いと、風邪もひかないで済んでいるからか。
それとも、ここまで具合が悪くなると、もうエサ場に出て来なくなるからか。それに、最終的にはみんに家に入れてしまっているせいもあるかも知れない。
それでもトムは、ジニーを保護した時ほどには痩せていないように見える。頑張れ、トム。晴れて退院出来る日が来るまでは、毎日会いに行くからね。
ご馳走というのは、もうこちゃんがアカのお見舞いのお礼にと送ってくれた松阪牛である。勿体無くて食べられないように気分だが、食べなければもっと勿体無い。
すき焼き用かも知れないが、より肉の香りや味わいを鮮明に感じる為に、そして旨味を封じ込める為に、さっと炙って戴く事にした。大好きなポン酢醤油と大根おろしで食べる。
こんな肉はもう一生食べられないだろう。アカの恩返しだね・・・と冗談を言った途端に涙が溢れた。
年が明けたら、久し振りでもうこちゃんとも会いたい。懐かしの鶴見「カミン」の6階のレストランにでも行こうか。その時、泣かないようにしなくちゃと思う。アカはもうこちゃんの猫なんだから。
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アカからの松坂牛
Dec. 7, 2006 |
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覚え書きとして:
朝は肉まんとロールケーキの残り、ジャスミン茶。
昼は遅くなったのと疲れていたのでうどん。
夜はご飯を炊いて、アカの松坂牛をさっと焼いて大根おろしとポン酢醤油で。付け合わせはもやし炒めと、アルファルファとルッコラのサラダを胡麻ドレッシングで。
肉・・・とろけました。ご馳走様。アカともうこちゃん、有り難う。 |
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