ジーコ

シンクへの道

Apr. 3,2003
朝から晴れた。桜も満開。

昨夜の戦闘は激しかった。イラクでの戦争の事ではない。和室での爆撃や白兵戦が物凄かったのだ。ルスが仕掛け、リマが誘い、どっちがワルかとは判断出来ないくらいに激しい。私を仔猫ミサイルの発射台にし、私を仔猫爆弾の投下目標地点にしてくれる。あまりの凄まじさに、カワムラさんはボーッと見ているだけ。私もひたすら布団を被って、眠るよう努力した。

やっと鎮まったと思ったら、突然叫び声を出すルス。びっくりして「どうしたの、ルス?こっちにおいで」と寝たまま声を出すと、サイドボードの上からルスが降って来た。いや、「降って来た」等という生易しいものではない。ピョンと飛び降りた程度の衝撃とスピードではないのだ。やっぱりミサイルだ。もちろん着地は私の体の上が良いらしい。受け身をとらないと、内臓破裂するかも知れない。つまり戦闘態勢で寝ないといけないという事か?

狭い6畳に閉じ込めていては、パワーが有り余っているのだろう。もう直ぐ、リビングも開放してあげるからね。暖房が一切必要なくなってからね。そして夏までには窓に格子を作って貰い、次の冬までには和室に猫ドアを作らなければ・・・。

朝は朝で、ルスとリマは、こうちゃんが階下に下りて来なくとも、2階のダイニングのドアを開けてトイレに出入りする気配だけでもう大騒ぎだ。あまりの騒々しさに目が覚める。この子たちには、2階の6匹やリンリンランらと違って置きエサをしていない。出せば3匹とも一気食いなのだ。特にナチュバラのドライだけにしてから、そういう事になった。同じナチュバラでも、缶詰の時にはダラダラと食べていたし残した。ドライは脇目もふらず、3匹とも物凄い勢いで食べる。

脇目もふらず・・・というのは嘘だな。それは単なる修辞法だ。カワムラは、自分の皿にまだ残っているのに、ルスの皿をチラチラと見て、隙あらば横取りしようとする。リマは棚の上で食べるのがお気に入りなので、横取りされる心配はない。ルスの方が2匹と比べると幾分ガツガツしていないので、途中でちょっと遊びに行ったりするのだが、こうちゃんが付きっ切りで見ていて、抱いて皿の前に戻す。「ほら、カワムラに食われちゃうぞ。」とかなんとか言っている。するとまたガツガツと食べる。そういうてころもアインと似ているね、ルスは。美人さんだしね。

そんな間中、私はまだ布団から出られない。寝ている間に強張った足首や膝を布団の中で解し、30分位はダラダラしないと起き上がれないのだ。それがある分、全ての家事と育児(猫の世話は「育児」と一言で表現してしまう事にした)を自分一人でしなければならないとしたら、4時半には起きなくてはならない羽目になる。ああ、ひたすらこうちゃんに感謝。

毎朝、飽きもせず焦がし目のチーズトーストを食べていたのだが、昨日は食パンを買って帰れず、仕方なく今朝はうどんだった。「うどん」「おでん」は、意外と朝食向きだ。かつては毎朝「鍋焼きうどん」という日々も続いた。「スープ掛けご飯」も続いた。しかし最近は、骨粗しょう症予防の為にもチーズトーストだ。嘘である。これは用意が楽なのだ。朝から包丁とまな板を使うのは面倒臭くなってきたのだ。夜のうちに色々(朝食やお弁当)と準備していた頃もあったが、精根尽き果てて「もう寝る!」と言う日々なので、いつしか朝の事は朝になったら考えよう・・・という性格になってしまった。もしかしたら血液型が変わったのかな?

ジーコはミュウの真似をしているうちに、もう何年も前からすっかりシンクに入って水道の蛇口からしか水を飲まなくなったのだが、最近はジーコがシンクに入るとジャムが突如としてシンクの縁に飛び乗る。ジーコやミュウはゴミ箱を足場として先ずはガスレンジ台に乗り、遠回りしてシンクへの道を辿る。しかしジャムは床からいきなりシンクの縁に飛び乗るのだ。あの巨体で、あの気合いで・・・。臆病なジーコは、それだけですくんでしまい、水を飲むのも忘れてさっさと逃げ出す。ジャムは別にジーコを襲いに来た訳ではない。水場が好きだし、いつも誰かの後を追う性質なのだ。しかし時々襲われているジーコは、ジャムの勢いだけで充分怖いらしい。可哀想なジーコ・・・そして可哀想なジャム。

夕方、カクモト先生からの電話をとった。いつも世界中を飛び回っている忙しい先生・・・今日はどこからだったのか、「今こちらは夕陽が綺麗だよ。それを見ながら電話しているのだけど、フルトさん居る?」と忙しい口調で優雅な事を仰る。きっとラボでPCに張り付いているだけの私に、ちょっとしたねぎらいの意味もあっての「夕陽」だったのだろうと思う。電話に出たら兎に角、丁寧に心から「お疲れ様です」と言う事にしている。職場の花でもなければ、研究の役にも立たないけれど、心を込めて全ての事にあたらないと、小手先の言葉や技術など通用しないと思うから。社会に出たばかりの頃の初心を忘れずに、これからも働いていこうと改めて思う。
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