ジャム
スクールボーイって
誰なのよ?
Mar. 12, 2011 |
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2011年3月12日 土曜日
明け方になってから、ようやくミュウちゃん部屋の片付けに着手した。
本棚の本や、その棚の上に飾ってあった置物が全て落ちていた。
ライティング・ビューローの上の物も全て・・・あろう事かデジカメまで落ちているではないか。
猫を除いたら、PCと車と並ぶ我が家の金食い「三種の神器」である。
壊れていたら怒るぞ。
しかしちょっと触った限りでは、壊れてはいないようだ。良かった。
ドイツ土産の木製のクリスマスの飾りもふっ飛んでいた。
同じくドイツ土産の大事な大事なオルゴール人形「スクールボーイ」が見当たらない。
どうやら動いてしまった本棚の裏に落ちたらしい。
本棚の手前には、可動式の文庫本ラック、その手前にはミュウたちの仏壇があり、動かそうとしてもそうそう動くものではない。
改めて今回の地震のエネルギーがどれだけ大きかったかを知る。
隙間を懐中電灯で照らしながら本棚の裏に落ちたものを箒で引き寄せ、その後は調理用のトングで拾う。
お手玉人形や木彫りのケニアのサイの小さな置物など、割れないものが次々と出て来る。
そしてやっと私の愛しい「スクールボーイ」が出て来た。
但し片足ずつ・・・。
「無残だ・・・」と、拾い上げたこうちゃんが言う。
私は言葉が出なかった。
そして部屋中探したのに 頭や胴体は遂に見つからなかった。
比較的頑丈な陶製の人形なのに、見事に割れてしまった。
もっと薄手の華奢な香水ビンやオイルランプのガラスの傘など、床に落ちていたのに割れていなかったのはどうしてだろう?
一体どこに隠れているのだ、私の可愛い「スクールボーイ」。
オルゴール本体は木製なので無事だったけれど、それだけ見ていると悲しくなるので捨てた。
これはドイツ出張土産で、もう25年も大事にして来たものだ。
同じブランドの「スクールボーイ」は世の中に幾つも存在しているけれど、私の「スクールボーイ」ほど綺麗に出来たものを見た事が無い。
全然違うのだ、今手に入る物と。
どうして壊れてしまったんだろう・・・と考えていたら、あれは前の夫との婚姻中に手に入れた物だという事を思い出した。
壊れてしまうべくして壊れてしまったのだ、あの結婚は。
「スクールボーイ」も同じ事なのか。
線香立てや遺影の額は、南北を向いている棚にあったせいか、ひとつも落ちていなかった。
但し、父の遺影だけがフレームから外れていて、セットし直さなければいけなかった。
まるで父が身体を張って守ってくれたかのようだ。
父は強い人だった。
精神的にも肉体的にも。
ある時、丑三つ時に2階の妹の寝室に窓から侵入者があった。
その侵入者は何もせず何も盗らずに出て行ったのだが、出て行ってから妹は悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞いて、同じく2階の2つ向うの寝室で寝ていた父が「ユキエが大変だ!」と言って飛び起きた。
飛び起きた時に、ベッドの足元にあった四角いファンヒーターの角に向う脛をぶつけて、かなりの怪我をしたらしい。
後に帰省した際、父の足の無我の痕を見て驚いた。
本人は夢中で痛みも感じなかったようだが、相当に深くえぐれた傷痕だった。
父がその侵入者と出くわさなくて良かった。
父は古武道の研究をしつつお弟子さんたちに教える武道家でもあり、空手の有段者と闘っても瞬時に投げ飛ばせるような実力者だった。
きっと娘を守ろうとして侵入者を投げ飛ばし、怪我をさせていた事だろう。父の持論から言えば、人に怪我をさせるよりは自分が怪我をした方が良いという事になる。
その持論通り父は夏なのに出しっ放しにしてあったヒーターの角にスネをぶつけてマヌケな怪我をした訳だが、娘を守ろうとする父親の気概や愛情を感じた一件であった。
他にも妹の交通事故の際、私の離婚の際、色々と陰で守ろうとしてくれていた事を後で母から聞いた。
しかし何事も無くても、遠く離れて暮らす私にいつも気を送ってくれていたのを知っている。
娘の私の痛みは、父の痛みでもあっただろう。
無鉄砲で何でも自分だけで決め、決めると直ぐに行動に移す娘は、親に心配ばかり掛けて来た。
言葉では当の私に何も言わなかったけれど、私の幸せを願い、私が傷つかないように、常にエネルギーを送ってくれていたのだと思う。
父は今も私を守ってくれているように感じる。
猫たちの写真の額は全て無事だったのに、父の額だけが分解されていたのを見て、改めてそれを感じた。
パパ、有り難う。
明日、パパの好きそうなお菓子を買ってお供えしてあげるね。
今日はゴミの収集日だったので、壊れた物や棚から落ちた要らない空き箱など諸々、45リットルのゴミ袋を8個も出した。
出して直ぐに、「スクールボーイ」が乗っていたオルゴール本体だけでも取っておこうか・・・なんて未練がわいたけれど、それも諦めて捨てた。
バカだな、私も。
いや、こんなものだよな、物への執着なんて。
だけどいい加減、身軽にならなくてはいけない。
こんな事でもない限り、気に入った物は捨てられないだろう。きっと良い機会だったのだ。
世の中、一寸先は闇・・・それを再認識した一日だった。
だけど私達の地震被害なんて全然大した事ではない。
本当に恐ろしい震災風景を、その後TVで次々と見る事になるのだった。
いまだかつて見た事も無い、日本が経験した事の無い本当の大災害の光景を。 |
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